2021.11.11 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:魅惑のトルコ ~東洋と西洋が交わる街 イスタンブール編~

ロンドン駐在中にどうしても行ってみたかった国の一つがトルコ。日本からだと約12時間かかるが、ロンドンからイスタンブールは4時間弱で飛ぶことができる。LCCのフライトも多く、手軽に行くことができ、欧州でも人気の旅行先。このチャンスを逃す手はないと、週末を使って弾丸ツアーを計画し、まずは飛んでイスタンブール♪

イスタンブールはトルコの最大の都市であり、まさに東洋と西洋の接点となる歴史と文化の魅力あふれる街。旧市街は「イスタンブール歴史地区」として1985年に世界遺産登録されており、ボスポラス海峡を挟む欧州側に位置する。イスラム教とキリスト教の文化が融合した街には見どころが数えきれないほどたくさんあるが、その一部をご紹介したい。

トプカプ宮殿

栄華を極めたオスマン帝国を象徴する場所であり、ボスポラス海峡と金閣湾、マルマラ海を見下ろす丘に建ち、新市街やアジア側を一望できるビュースポットでもある。70万平米を超える巨大な敷地には4つの庭園と20を超える部屋、ハレム、4つの「キョシュク」と呼ばれる離れがあり、全部を見て回るには3時間は必要(写真1)。

【写真1】表敬の門

【写真1】表敬の門
(文中掲載の写真は、一部記載のあるものを除きすべて筆者撮影)

宝物館に納められた目もくらむ豪華な宝飾品の数々も圧巻。ダイヤやエメラルドが散りばめられた剣や黄金の玉座は、本当にこんなものが存在したのかと思うほどの贅を尽くした品々で、驚きを通り越してため息が出る。

宮殿の中はスルタンや皇太子が利用した図書館や食堂などが素晴らしい。イズミックタイルと呼ばれる発色の美しいタイルで装飾された部屋からは当時の華やかな宮廷生活が想像される(写真2、3、4)。

【写真2】宮殿図書館

【写真2】宮殿図書館

【写真3】アフメト3世の食堂

【写真3】アフメト3世の食堂

【写真4】青が美しいステンドグラスとタイル装飾

【写真4】青が美しいステンドグラスとタイル装飾

その中で一番印象に残ったのはハレム。スルタンと皇太子、4人の正妻、そして多い時には1,000人もいたと言われる女性達の居住空間で、スルタンの寵愛を受けた女性達に与えられた美しい装飾が施された部屋も並ぶ。ただ、女性たちは一度ハレムに入ると外に出ることは許されない囲われの身。美しい装飾とは対照的な格子のついた窓に彼女たちの悲しみを感じる空間でもあった(写真5)。

【写真5】ハレムの美しいタイル装飾と格子のついた窓

【写真5】ハレムの美しいタイル装飾と格子のついた窓

広々とした庭園も美しく、キョシュクや海を見下ろす東屋も見逃せない。華やかな装飾は刺激が強すぎ、ずっと見ていると少し疲れるので、庭園をゆっくり散歩しながら次の建物に移動していくのがいいかも。

スルタンアフメット・ジャーミィ

通称ブルーモスク。オスマン帝国の14代皇帝アフメット1世によって7年の歳月をかけ建設され、直径27.5mの大ドームと4つの副ドーム、30の小ドームからなり、世界で唯一の6本のミナーレ(尖塔)を持つ美しいモスク(写真6)。

【写真6】ブルーモスク

【写真6】ブルーモスク

大理石とタイルの外観は厳格な雰囲気と重厚感だが、中に足を踏み入れた瞬間、鮮やかで繊細なドームの装飾の美しさに圧倒される。天井まで描かれた緻密な模様とブルーを基調にした美しいタイルに目を奪われ、ずっと見上げて首が痛くなってしまうほど(写真7、8)。

【写真7】ブルーモスク内部

【写真7】ブルーモスク内部

【写真8】天井のモザイク

【写真8】天井のモザイク

大小のドームを組み合わせることで、モスクのどこにいても、天井が青い空のように頭上に広がる設計となっており、美しいモザイク天井に包まれる感覚になる。

ここは現在も1日5回、信者が祈りをささげる場所でもあり、お祈りの時間には入場が禁止され、女性はヒジャブと呼ばれる布で髪を覆うことが求められる。ヒジャブは入り口で貸してくれるが、せっかくなのでお気に入りのスカーフなどを持参し、異国情緒に浸るのはいかが?

アヤソフィア

これまで何度も宗教や施政者によって用途が変更され、改築が行われてきた建物。現在のアヤソフィアは537年キリスト教国家であるビザンチン帝国の大聖堂として建設されたが、1453年コンスタンティノープルがオスマン帝国の手に渡ったことでモスクに改築され、1953年からは博物館として広く開放されてきた。

昨年7月、トルコ政府は再びアヤソフィアをモスクとすることを発表したが、今後もイスラム教徒だけでなく、誰でも訪問できる文化財として守られるとしている。

【写真9】夕暮れのアヤソフィア

【写真9】夕暮れのアヤソフィア

内部の吹き抜け部分の天井は、ロードス島で特別に焼かれた軽いレンガで作られた直径約30mの大ドーム。大聖堂だった頃は十字架のモザイクで飾られていたとのこと。壁や柱にはふんだんに大理石が使われ、4本の柱で大ドームを支える構造は当時の技術が集結された建物だったことがうかがえる。
天井を見上げると、イスラム教の神を現わすアラビア文字と、キリストと聖母マリアの壁画が並ぶ(写真10)。不思議と違和感はなく、イスラム教とキリスト教それぞれの宗教芸術が上手く溶け込み、より魅力のある美しい独自の空間として世界中から訪れる人々を魅了している。

【写真10】イスラム教とキリスト教の融合

【写真10】イスラム教とキリスト教の融合

バシリカ・シスタン

ここまでは超メジャースポットだが、行ってみてとてもよかった穴場スポットも紹介したい。

ブルーモスクのすぐ近くにある素晴らしい遺跡だが、一般に公開されたのは比較的最近の1985年からとなるバシリカ・シスタン(BASILIKA・CISTERN)、通称 地下宮殿。

地下宮殿と呼ばれているが、ここは宮殿ではなく、バシリカ貯水槽と言い、現存する東ローマ帝国の貯水槽としては最大のもの。527年、今から1500年近く前にアヤソフィアとトプカプ宮殿に水を供給するために作られたものだが、近年まで実際に使われていたというのは驚き。あまりに中心地にあり、こんなところの地下にこんな設備が? という感じで、道路上に看板はあるが、入り口は少しわかりにくい。チケット売り場の奥から階段を降りると、突然、眼下に広がるのはまさに地下宮殿!(写真11)

【写真11】バシリカ・シスタン

【写真11】バシリカ・シスタン

内部は縦138m、横65mの長方形の空間で、高さ9mのアーチ天井を支えるための柱が12本×28列で合計336本。明かりに照らされ、水面に浮かび上がる柱が立ち並ぶ幻想的な空間は別世界に来た感動すら覚える光景。歩いて回れる通路があるので、神秘の世界を自由に探索できるのも魅力。見どころとなっているのは、奥の方にある円柱。土台としてメデューサの首が一つは逆さまに、一つは横向きにされて使われている。古代ローマ遺跡の処分品を持ってきたもので、メデューサは地底世界の怪物ゴルゴン三姉妹の一人であるため、当時の人々はその力を信じてここにメデューサの頭の像を置いたと言われているが、なぜ逆さまや横向きに置かれているのかはわかっていない。見つめられると石に変えられてしまうと言うが、幸い? 目をつぶっているメデューサは静かに眠っているようで、こんなところで土台にされてしまい何だか可哀そうな気もした(写真12)。

【写真12】メデューサ

【写真12】メデューサ
(出典:Basilica Citern HP http://yerebatansarnici.com/ より)

メデューサとは、、、
ギリシャ神話に出てくる怪物で、宝石のように輝く目を持ち、見たものを石に変えてしまう能力を持つ。元々美しい少女だったが、海の神ポセイドンと関係を持ったためアテーナーの怒りを買い、醜い怪物にされてしまった。ペルセウスに首を切られ殺されるが、その血から空駆ける天馬ペガサスが生まれたと言われている。メデューサの神話はレオナルド・ダ・ヴィンチやルーベンス、近年ではダリなど多くの芸術家に作品のモチーフとして取り上げられている。

もう一カ所、人が集まっているのが涙の柱(Crying Column)(写真13)。

【写真13】涙の柱

【写真13】涙の柱
(出典:Basilica Citern HP http://yerebatansarnici.com/ より)

この地下宮殿の約1/3の柱は4世紀頃の建物の柱を再利用したもので、この柱もその一つ。いつも濡れているので涙の柱、または3匹の蛇が絡み合ってできた蛇の柱とも呼ばれている。アポロン神殿にあったという説もあるとか。表面の目玉のような模様に穴が開いており、そこに指を入れて一回転できれば願いが叶うと言われている。私も挑戦してみたが、なかなか指を入れたまま360°回すのは難しく、苦心。願いは簡単には叶わないという教えなのかも?と思ったのだった。

ちなみにこの地下宮殿は、ジェームズボンドが活躍する『007 ロシアより愛をこめて』や、ダン・ブラウンの小説を映画化した『ダ・ヴィンチ・コード』の続編『インフェルノ』の撮影でも重要なシーンで使われているので、行く前にはぜひ一度、映画を見ておくことをお薦めする。

イスタンブールは比較的治安もよく、様々な場所がライトアップされているので、夜の散歩も楽しめる。光の中に浮かび上がるブルーモスクを見ながら食事ができるレストランもいくつかあり、世界三大料理と言われるトルコ料理を楽しみつつ、昼間とは違う美しい姿を堪能するのも至福の時間となること間違いなし(写真14)。

【写真14】夜のブルーモスク

【写真14】夜のブルーモスク

この後、まさに弾丸ツアーで2つの世界遺産、カッパドキアとパムッカレに向かうのだが、イスタンブールだけでも書ききれないほど魅力的な街であるため、今回はここまで。こちらはまた次回!

自由に旅行に行ける世界に戻るにはまだもう少し時間がかかりそうだが、素晴らしい思い出を振り返り、一日も早く、再びトルコを訪れることができるようになることを願ってやまない。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。




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