2023.11.13 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:グランドサークルの旅 ~大自然の神秘を巡る~

アメリカ西海岸は仕事で数えきれないほど訪れた場所。日本とサンノゼを月に数回往復していたが、空港からオフィスに直行し、打ち合わせを終えて夜中にホテルに入り早朝に帰るだけ。そんな私を見かねたパートナー会社の友人が「一度ちゃんと遊びに来なさい!」と企画してくれた思い出の旅がこのグランドサークルを巡る旅。

今回はその一部をご紹介したい。

グランドサークル(The Grand Circle)とは、アメリカ西海岸のユタ州とアリゾナ州の境にあるレイクパウエルという人造湖を中心に、半径230kmの円に10の国立公園と16の国定公園や州立公園等が含まれることから名付けられた世界屈指の公園群のことで、大自然が作り出す様々な景観を楽しむことができる。

旅の入り口はラスベガスから。夕方空港に着き、車を借りて、2泊3日、総移動距離1900kmを超える旅へ出発!

バレーオブファイヤー州立公園(Valley of Fire State Park)

ラスベガスから約100km、赤色のアステカ砂岩が、夕陽に照らされると燃え上がる炎のように見えることから、火の谷と名付けられたモハべ砂漠の一角に位置する州立公園。最も古い地層は2億5000年前のものと推定されており、長い年月の中で堆積した赤い砂岩が隆起し、雨と風により浸食され、様々な不思議な景観を作り出している。

その中で最も象徴的な奇岩として有名なのがエレファント・ロック。その名のとおり、象に見える岩。真っ暗な砂漠の中、小さなライトで浮かび上がる姿は神秘的で神々しい。満天の星の美しさも息をのむほどで、その姿を撮影に来ているカメラマンが沢山いた。このまま長時間露光をすれば、円を描く星と象の撮影ができるので、カメラが趣味でもある私もチャレンジしたいところだったが、我々はモニュメントバレーの日の出を目指し移動することに(写真1)。

【写真1】Elephant Rock

【写真1】Elephant Rock
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)

モニュメントバレー(Monument Valley)

スペイン語でテーブルを意味するメサと言われる台地や、フランス語で小さな丘を意味し、ビュートと呼ばれる岩山が点在し、記念碑のように見えることからその名がついたと言われている。この一帯は、14世紀頃からナボホ族の居住地であったが、、彼らは一時アメリカ政府による強制収容を受けてこの地を追われた。1868年に先住民保護施策により居留地として認められ、現在はナボホ族の管理の下、一部地域を開放して一般に公開し、その広大で美しい景観を求め多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっている。

狙い通り日の出の少し前に到着し、拠点となるビジターセンターの展望台で、徐々に空が白むのを待つ。真っ暗で何も見えなかったところが徐々にシルエットを表し、やがて赤く染まる姿は圧巻。目の前に、モニュメントバレーで最も有名な景観と言える3つの有名な一枚岩、イースト&ウェストミトンビュート(East & West Mitten Buttes)とメリックビュート(Merrick Butte)が見える。刻々と太陽の光により色を変えるその姿は、得も言われぬ美しさで何時間でも見ていたい光景(写真2~4)。

【写真2】モニュメントバレー

【写真3】モニュメントバレー

【写真4】モニュメントバレー

【写真2〜4】モニュメントバレー

ビジターセンターからは、公園の中心を走るバレードライブ(Valley Drive)に降りることができる。路面はかなりデコボコでまさにダートコースだが、ゆっくり走ればSUVでなくても走行は可能。様々な岩を間近で見ることができ、自然が作り上げる芸術的な光景の中に自分も入り込む経験ができるので、ぜひおススメしたい(写真5)。

【写真5】Valley Drive

【写真5】Valley Drive

3本の細く切り立った特徴的な岩はスリーシスターズ(Three Sisters)と呼ばれている。このシスターズは、姉妹という意味ではなく修道女を指しているそうで、確かによく見るとベールを被った女性の姿に見えてくる(写真6)。

【写真6】Three Sisters

【写真6】Three Sisters

モニュメントバレーは様々な映画の舞台となったことで、広く知られるようになった。中でも、ジョン・フォード監督の『駅馬車』や『捜索者』などの西部劇は有名で、『捜索者』でジョン・ウェインが娘をさらった先住民を追いかける場面など、監督が撮影に使った場所はジョン・フォード・ポイント(John Ford Point)として、人気のフォトスポットとなっている。画面中央の岩のステージのような場所に立つと、広大な風景をバックに美しい写真を撮ることができ、まるで西部劇の世界に入り込んだような気分が味わえる。もっと楽しみたい人は、看板にあるように、馬に乗ったカウボーイ姿の人にポイントに立ってもらい撮影することもできる。この日はまだ朝早く、馬は出勤前だったようで残念(写真7)。

【写真7】John Ford Point

【写真7】John Ford Point

モニュメントバレーを背景にする人気の撮影スポットがフォレストガンプポイント(Forrest Gump Point)。

映画『フォレスト・ガンプ』の撮影に使われた場所で、トム・ハンクス演じる主人公が、アメリカ大陸をひたすら走りつづけ、突然足を止めた場面で使われ一躍有名に。モニュメントバレーへ真っすぐ伸びる163号線にあり、皆、路肩に止めて撮影しているのですぐにわかる。あまり交通量は多くないので、道路上に座って写真を撮ることも可能で、私も数枚撮ってもらった。もちろん通行の邪魔にならないよう、車には十分気を付けて!(写真8)

【写真8】フォレストガンプポイント

【写真8】フォレストガンプポイント

フォーコーナーズ(Four Corners)

モニュメントバレーを後にし、約1時間で到着するのがフォーコーナーズ。北緯37度0分、西経109度3分に位置する場所で、ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州、アリゾナ州の4つの州の境界線が集まった地点。米国内で4つの州の境界が1点で交わるのはここだけで、境界線を描いた記念碑がある。

観光客は、4州をぐるぐる周ってみたり、一度に4州をまたがる写真を撮るべく、皆思い思いのポーズで挑戦しており、写真の彼女は見事なブリッジで達成!(写真9、10)

【写真9】フォーコーナーズ

【写真10】フォーコーナーズ

【写真9、10】フォーコーナーズ

徹夜で移動し、12時間を超えるドライブとなった長い2日目はここで終了。ページ(Page)の街まで移動してホテルへ。シャワーを浴びると、全身から砂がザラザラ。これも貴重な経験。ずっと運転してくれた友人達をねぎらいつつ、明日に備えて早々に就寝。

天気にも恵まれ、3日目も早朝から活動開始。まずはアンテロープキャニオンへ。

アンテロープキャニオン(Antelope Canyon)

ナバホ砂岩と呼ばれるこの地域の砂岩を、鉄砲水や風が長い年月をかけて狭く深く削り出すことで作られたスロット・キャニオンと言われる渓谷。モンスーン時期の激しい水流によって地層が浸食され、渦を巻いて流れるような模様を描く岩壁となった。“The beam”と呼ばれる光がその隙間から差し込み影を落とす幻想的な光芒はここでしか味わえない絶景で、特に写真家に人気の場所。UpperとLowerの2つの渓谷からなり、いずれもナバホ族の聖地として管理されており、ガイドが同行しないと入ることができない。Upperの方が平坦で、太陽光が多く入るため人気となっている。ツアーには三脚を使用しての撮影ができる写真家向けのものなどもあるが、競争率が高く、今回は通常のツアーでUpperキャニオンへ。

ガイドの案内で細い岩の隙間に入っていくと、人間の力で人工的に作ることは到底不可能と思われる、複雑で美しい曲線を描く砂の壁が続く別世界が広がる。岩肌の地層は、隙間から所々差し込む光の加減で、茶色から薄いピンク、赤まで色も変わり、美しい縞模様を描く。渓谷と言うだけあって、中はかなり深く、高い壁の隙間を歩いて進む感じで、その迫力にも圧倒される(次ページ写真11~15)。

アンテロープキャニオンは長い間、一度は行って見たいと思っていた場所で、この旅で実現することができ感動も一入だった。

【写真11】アンテロープ入り口

【写真11】アンテロープ入り口


【写真12】アンテロープ

【写真13】アンテロープ

【写真14】アンテロープ

【写真15】アンテロープ

【写真12〜15】アンテロープ

ホースシューベンド(Horseshoe Bend)

コロラド川が何百年もかけて、崖を侵食し、蛇行して流れることで馬蹄型に切り取ったような独特な景観が人気のスポット。この景色が馬の蹄鉄のように見えることから、Horseshoe(ホースシュー=蹄鉄)+Bend(ベンド=曲がり)と呼ばれるようになった。

駐車場からトレイルを1.2km歩いていくと、地面に大きな穴が開いたような姿が現れる。一部、安全のため柵が設置されているが、ほとんどの部分は崖となっており見学は自己責任で。崖の深さは300mもあるため、端に立って下を見ると足がすくむが、美しい川の曲線と鮮やかな緑色、赤褐色の岸壁と青い空は、時間帯によって色が変わり様々な表情を見せ、多くの人々を魅了している(写真16)。

【写真16】ホースベンドシュー

【写真11】アンテロープ入り口

ブライスキャニオン国立公園(Bryce Canyon National Park)

ブライスキャニオンは川で浸食されてできた地形ではなく、水の凍結と融解、雨による自然浸食によって石柱が立ち並ぶような独特の光景が作られたもの。石灰岩の石柱は、大きなものでは10階建てのビルの高さほどもあり、世界一多くの石柱がある場所となっている。渓谷の下まで降りられる道があり、ハイキングや馬で渓谷をまわるツアーも人気。写真のこの地点は、Sunset Pointと呼ばれる渓谷に夕陽が沈む光景が見られる場所なのだが、当日は9月にもかかわらず突然雪が降りだし、この後一気に吹雪で前が見えないほどになってしまった。自然の力は凄いと、旅の終わりに改めて感じた経験ともなった(写真17~19)。

【写真17】ブライスキャニオン

【写真18】ブライスキャニオン

【写真19】ブライスキャニオン

【写真17〜19】ブライスキャニオン

グランドサークルには他にも魅力的なスポットが多くある。全米では国立公園が59、州立公園は417もあり、豊かな自然とその神秘に触れることができる。以前、本誌2020年10月号掲載のICT雑感「コインの行方」でご紹介したが、国立公園のQuarterコインのコレクションもまだまだ未完成なので、行ってみたいところが沢山。次の機会を楽しみにしたい。Special thanks to Martha and Phill!

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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