ICT雑感:世代間ICT利用事情

ICTは現在の生活の至る所に組み込まれており、もはやICTなしの生活は想像もできなくなっています。以前は外出する際に財布を忘れると大変でしたが、今はたとえ財布を忘れても、スマートフォンさえあれば買い物を含め大抵のことはできます。逆にスマートフォンを忘れてしまうと、ほぼ何もできなくなる人が多いのではないでしょうか。ただ、ICTリテラシーの高い若い世代ほど上手に使いこなしてとても便利なツールとなっている一方で、高齢者にとってはまだまだ便利なツールにはなっていないということを私自身の身近な体験から紹介します。
まずは西暦2000年前後に生まれた私の子供たちですが、生まれたときからデジタル機器に囲まれていた、いわゆるデジタルネイティブ世代と言えます。特に下の子供は現在大学生で、昨年1年間は大学キャンパスにはほとんど行かず(というより新型コロナウイルス感染防止のために行けず)、もっぱらオンラインで授業を受講していました。大学側も学生側も最初のうちは多少のトラブルがあったようですが、今では完全に使いこなしており、私の子供をはじめ学生たちは、時折、海外の大学生とも意見交換しているまでになっているようです。私の子供はオンライン授業ではさすがにノートPCを利用していますが、それ以外はスマートフォンを使いこなし、LINEやInstagramを常に利用しています。
そもそもスマートフォンへの入力は、私などとは桁違いの速さで、家族間でLINEをやり取りする際にはそれを痛感させられます。イベントの予約の際も、一緒に予約を取ろうと挑戦すると、いつも子供たちの方が先に予約を取ってくれるので、その点では助かっています。
一方で高齢者にとっては、まだまだ便利なツールとはなっていないようです。私の父は85歳を超え、耳がかなり遠く、妻や妹等女性の声であれば大声を張り上げてもらえれば何とか聞こえるのですが、私の声は全く聞き取れず、筆談によって何とかコミュニケーションを図っているという状況です。そんな状況で一人暮らしをしているのですが、当然電話は役に立たず、携帯電話のメールで何とか最低限のやり取りをしています。直接の会話はこのように困難を極めるのですが、警備会社の見守りサービスを利用しているため、外出時や就寝時に警備が開始され、その情報が私のスマートフォンに届きますので、起床、就寝、外出がリアルタイムでわかり、その点では安心です。とはいえ、父が誤って警報を鳴らしてしまい、警備会社のオペレーターが本人に確認の電話をしても詳細が判明せず、警備員が家まで駆けつけなければならなかったということが何度かありました。
自宅ではホワイトボードに手書き、外出先ではスマートフォンに入力して画面を見せるという方法で私から情報を伝え、父はそれに対して声で返答するという形でコミュニケーションを図っていますが、手書きだと文字の癖、スマートフォンでは画面の小ささもあって読みづらいようで、もう少しユーザーにとってストレスのない形に進化して欲しいと感じています。音声認識ソフトもいくつか試してみたのですが、まだまだ認識率は低いように感じます。
考えてみれば、かつては視覚障がいと言われるレベルだったかもしれない多くの人が、今や不自由なく暮らしていけるのは眼鏡というテクノロジーのおかげだと思います。自分が父の年齢に到達する30年後はテクノロジーがどう進化しているのか全く想像もつかないのですが、最近の進歩には目を見張るものがありますので大きな期待を抱いています。例えば、ICT機器が話した内容をリアルタイムで正確に認識し、それを受け手に合わせて伝達できるようになると、障がいや言語の壁を越え、誰もが便利な生活を送ることができるのではないかと思います。現在の大学生のようにITリテラシーの高い人だけが利便性を享受できるのではなく、誰もが気軽に、ICTの利用を特別に意識することなく生活できる世界が実現できたらと思います。
とは言いつつ、今現在はICTを利用すればするほど利便性を享受できますし、子供たちから馬鹿にされないためにも頑張って使いこなしていきたいと思っています。
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