2026.3.30 DX InfoCom T&S World Trend Report

自治体DXにおける成果責任の制度設計と事業者の役割

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1.概要

自治体DXは国の政策的後押しを背景として全国的に推進されている。しかし現場では、「計画はあるが実装が伴わない」「実証は行われるが政策改革につながらない」「システムは導入されたが活用されない」といった状況が少なからず見受けられる。これらの原因は、「人材不足」や「ITリテラシー・スキル不足」といった表面的な個別要因だけで片づけられるものではない。問題はもっと構造的であり、自治体DXに向けたシステム導入に至るまでの総合計画、DX計画、実証実験という各フェーズが分断され、本来あるべき連続した政策実装プロセスとして設計されていない点に本質があると考える(図1)。

【図1】総合計画・DX計画・実証実験・システム導入関係性イメージ

【図1】総合計画・DX計画・実証実験・システム導入関係性イメージ
(出典:筆者作成)

本稿では、これらの総合計画フェーズ、DX計画フェーズ、実証実験フェーズの各段階に内在する構造的課題を整理するとともに、それらを克服するために事業者側が果たし得る役割と、取り組むべき具体的方策を提示する。端的に言えば、総合計画フェーズにおいて効果達成に対する責任が制度的に設計されていないことが、後続フェーズにおける目的志向の弱体化を招いていると考えられる。そのため、まずは筆者自身の行政職員としての経験も踏まえつつ、これらの構造的問題を検討することとしたい。

2.各フェーズの構造的問題

2-1.総合計画フェーズの問題点

総合計画は、多くの自治体において10年単位の長期構想として策定されるが、実際には5年程度で中間見直しが行われることが多い。また、その内容については、定性的な目標や施策が網羅的に列挙される傾向が強い。5年経過時の見直しでは、本来であれば政策成果を定量的に検証した上で、残り期間の施策へ反映させるべきである。しかし現実には、評価指標が十分に設計されていない場合も多く、優先順位を明確に付けることができない構造となっていることが多い。その結果、環境変化への対応という名目のもと、緊急性の高い案件や補助制度と親和性の高い案件が相対的に優先され、気づけば当初描かれた戦略的構想から離れてしまっているということもあるかもしれない。さらに、総合計画が10年構想を掲げる一方で、担当職員の在任期間は2~3年、首長の任期は4年である。この時間軸の不整合は、長期目標の継続的実行を制度的に弱める要因となっている。

例えば、「農業を育成し、6次産業化を進め、観光資源として活用する」という構想を例に考えてみたい。この構想を真に実現するには、単に生産量を増やすだけでは十分ではなく、加工業の育成、地域ブランドの確立、観光施策との連動といった複合的な施策展開が求められる。加えて、付加価値額の増加、域内経済循環率の向上、観光消費額の増加、ブランド認知度の上昇といった評価指標の設計が必要となる。そのうえで、これらに対応するために、農政部門で知見を積んだ職員が、一定期間後に商工部門へ異動し、さらに観光部門へ異動することで、農業・商工・観光を横断した政策立案・評価設計を担う、といった戦略的な人事設計が想定されてもよいはずである。しかし現実には、目先の課題対応や組織均衡を重視した慣行的ローテーションが優先される。筆者自身の行政職員時代の経験に照らしても、政策効果を最大化すること以上に、組織の安定維持が優先される場面は少なくなかった。

2-2.DX計画フェーズの問題点

自治体DXには二つの側面がある。一つは住民サービス向上という外向きの改革、もう一つは行政内部の業務効率化という内向きの改革である。

社会的意義が高いのは前者である。住民の利便性向上や地域課題の解決は、公共政策としての正統性が高い。しかし実務上は、後者の方が着手しやすい。業務自動化や内部システム改善は組織内で完結しやすく、成果指標も設定しやすいためである。その結果、DX計画はソリューションありきで進んでしまい、業務の根本的再設計には至らなかったというケースが散見される。

例えば、DX計画に「RPA活用」という文言が盛り込まれた場合を考えてみたい。RPAは業務自動化の一手段に過ぎず、行政運営の目的そのものではないが、DX計画に明記されることによって、あたかも政策目標であるかのように扱われることがある。本来は、①業務の廃止可能性の検証、②業務フローの再設計、③API連携等による自動化可能性の検証、④それでも残る部分へのRPA適用、という順序で検討されるべきである。しかし現実には、DX計画に「RPA活用」と明記され、トップダウンでRPA導入方針が示される状況において、代替手段との十分な比較検証が行われているとは言い難い。筆者が行政職員としてRPA黎明期を経験した際にも、慎重論を述べることは「先進的取り組みに水を差すもの」と受け止められることがあった。その結果として残ったのは、トップダウンの指示に沿う対応案であった。RPA導入は「デジタル化を進めている」という説明がしやすく、導入件数や削減時間といった指標も示しやすい。しかし、手段が目的化すれば、業務そのものの再設計や構造改革の検討は置き去りにされてしまう。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
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3.解決の方向性

4.事業者の役割・関わり方

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開たものです。

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