デジタル・トランスフォーメーションが売上拡大に寄与 -傾向スコア・マッチング法を用いた分析―
近年,AI、ビッグデータ、IoT、クラウドといった新たなICT技術を活用し,ビジネスモデルの変革や新しいビジネス創出,新たな価値の提供などを実現する,所謂【デジタル・トランスフォーメーション(以下,DX)】が注目され,DXに取り組む国内企業も増加しています。
DXによる現発効果については,個別企業レベルでの効果事例が多くのメディア・媒体で紹介されていますが,そのような現発効果は定量的にも確かめられるのでしょうか。
そこで,筆者は当社が実施した「企業におけるDX導入状況に関するアンケート調査」の回答データを用い,企業におけるDXの導入が企業業績パフォーマンスに与える【因果】関係について,傾向スコア・マッチング法(※1)という分析手法を用いて,定量的に検証しました(詳細は,山崎(2018)を参照(※2))。
DX導入による効果には,売上拡大やコスト削減,生産性の向上,新たなビジネスモデルの創出など,多種多様な効果が考えられますが,山崎(2018)では,(利用可能なデータの制約を踏まえ)企業の業績パフォーマンスを表す指標として,「企業の売上拡大の有無」に注目し,DX導入により,(DXを導入しない場合に比べて)企業の売上が拡大するか否かに分析の焦点を当てています。
傾向スコア・マッチング法を用いた定量分析を行った結果,(業種,経営・事業課題,年商など,その他の企業属性を制御し,その他の条件が同じという状況のもと)DXの導入により,(DXを導入しない場合と比べて)企業の売上が拡大する確率が概ね25%程度増加することが明らかになりました。このことは,DX導入が企業の売上拡大をもたらすという【因果】関係が存在することを意味しています。
(先述したとおり)DX導入による現発効果は一意ではないですが,この分析結果は,DX導入が売上拡大を牽引していることを示しています。
人手不足や業務効率化など,多くの経済社会課題に直面する我が国の企業において,DXへの取り組みが,今後の競争力の源泉の1つとなりそうです。
(※1)トリートメントの状態(ここでは,DX導入の有無)が異なる似た企業同士をマッチングして比較することでトリートメント(DX導入)の因果的効果を推定する手法。
(※2)山崎(2018)「企業におけるデジタル・トランスフォーメーションの導入が企業業績パフォーマンスに与える効果-傾向スコア・マッチング法を用いた分析―」, mimeo.
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