2016年9月1日掲載 ITトレンド全般 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

ロボティクスへの興味-サービス分野で活用が進むコミュニケーションロボット



このところロボットが話題となることが非常に多くなっています。ロボットと一言でいっても定義はさまざまで、時代の流れではセンサー(感覚)、コンピューター(知能制御)、アクチュエーター(駆動)の3つの要素技術を持つ「知能化した機械システム」全体を指してきましたが、近年これにコミュニケーション機能を加えることで身近に感じられるロボットが登場してきたと言えます。ソフトバンクのペッパー(Pepper)がその代表ですが、鉄腕アトムの大きさを意識した身長120cmの人型ロボットで感情認識機能をはじめ、ネットワークとの常時接続でネット上の情報に自らアクセスしたり、3ヵ国語のコミュニケーションが可能となっています。典型的なコミュニケーション型ロボットであり、成長著しいサービスロボットの先駆けでもあります。

私はこれまでコミュニケーション機能を持つ人型ロボットに対して偏見があり、本来は人対人でなすべきことが十分できないので代わりに人の形をした機械に行わせるという、どこか侘しいものを感じてきました。結局のところ、高級な大人の機械おもちゃ位にしか考えてきませんでした。いずれユーザーに実体を意識させないバーチャルな何か新しいサービスロボットに置き換わると予想していました。“ペッパー”は人寄せパンダに過ぎないとの意見でした。サービス分野のロボットとはいえ、やはりロボットなので製造業で見られる産業ロボットと同様に限定的な動作・操作をベースにした合目的な知能機械の域を出ることはないと感じていました。

しかし実態は違っていることにようやく気付いたこの頃です。ペッパーだけでなくさまざまな姿のロボットが登場し、またペッパーにも一般販売モデルのほかに昨年10月からは法人向けモデルとして「Pepper for Biz」が販売されて多様化が進展しています。既に、この種のコミュニケーション型ロボットの製造・販売だけでなく、保守・修理(検診・入院・手術と擬人化して呼ばれるとのこと)からビジネスソリューションまでの流れがエコシステムとして成立しています。センサーやコミュニケーション機能が付いているので、当然、通信ネットワークや情報処理、クラウドが必要となっていて、いわばICT、IoTの統合デバイスの存在となっていますので、人を対象としたサービスロボットは単なる知能付の高級機械から社会や産業活動のなかで特定の領域を占めてソリューションをもたらす不可欠の技術となっていると言えます。

サービスロボットとしてはコミュニケーション型ロボットのほか、従来からみられる人の動作をサポートする装着型ロボットの進歩も著しく重量物の運搬作業や長時間作業が必要な場などで実用化が進んでいます。また、歩行動作や立ち座りが不自由な人の自律動作を助ける装着型ロボットは新たな医療機器として注目を集めています。残念ながら日本では認可などで出遅れています。ロボットである以上、駆動系のモーターが多いので障害は多く、ペッパーもその例外ではないようです。ましてや個人毎に装着されるロボットには当然力の負荷がかかり、脳波などをセンサーで読み取る必要があるので故障への対応が絶対的な条件となります。現状、ペッパーでは一般向けの機種は預り修理=入院対応ですが、法人向けでは交換するとのことです。複雑な動作が必要で、また設置(居場所)環境の良し悪しの幅が大きくなるサービスロボットのメンテナンスや監視まで含めたエコシステムの確立こそ、新しいビジネスチャンスになると思います。電機メーカー各社にその取り組みが見られるのも頷けます。

035年に向けたロボット産業の将来市場予測

出所:NEDO「2035年に向けたロボット産業の将来市場予測」(2010年4月23日)

ロボット産業の市場規模は10年後、20年後には現在の3倍、6倍へと成長すると予測され、特にサービス分野(農林水産分野を含む)ではさらに伸びが大きく、2015年の4千億円が2025年には2.9兆円、2035年には5.4兆円との見方があります。IT機器の製造から通信、情報処理、AIをはじめ各種のソリューションまで網羅する統合的な産業なので、ロボットの実装・活用の場と製品・サービスの開発及び要素・基盤技術の研究の3分野に加えて、具体的なサービス提案をプロデュースする役割や必要な技術を調達するコーディネート機能が従来以上に重要になっています。

人と人とのコミュニケーション、人と機械や機械どうしの通信を担ってきた通信オペレーターとしてはこれまでの延長線でロボットの持つコミュニケーションを短絡的に機械通信と捉えることなく、情報処理やクラウドまで含めた通信、加えてコミュニケーション型ロボットの弱点となり得るセキュリティまで取り込んだ取り組みが求められます。ロボットとのコミュニケーション、ロボットどうしの通信などは通信オペレーターにとっては未知の分野です。ここでもデータの蓄積が何より求められますので早急な取り組みが望まれます。ロボットの知能を支えるAI技術の進展には著しいものがありますので、ロボットの発する通信をよく観測しておかないとモバイル通信への要求条件が近い将来変わってしまうかも知れません。

具体的な通信サービスのプロデュース面ではロボットは既にWi-Fi装備であり、アンドロイド端末と言えます。コミュニケーション型、装着型とも多種多様な存在となっていますので、クラウドを前提とした通信、情報処理にはレベルの高いコーディネート機能が求められます。既存の物流や監視、故障修理や受付連絡などの24時間のコールセンターなどもまた必要となることを忘れてはいけません。

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