景気動向を把握する方法の一つとして在庫の動きを見る方法がある。図はその在庫の動きを生産の動きと合わせて循環図としてあらわしたもので、鉱工業指数からICT製造業に絞り作っている。その在庫循環図、最近の動きは、急激な在庫の増加が特徴だった。さては景気減速か?とすぐ悲観的に考えるが、いろいろな状況を見ると必ずしもそうとは言えないようだ。そこで動向を見守っていたのだが、8月の月次を見て正直びっくりした。
在庫循環図で景気の動向を見るとき注目は在庫の動向だ。その動向が、企業の意図した積み増しか、意図せざる積み上がりかがポイントになる。積み増しは企業が将来に対し強気の見通しを持ち、自社の製品が今後も売れると読んで意図的に在庫を積み増している状況を指し、景気はよく、経済が好転していると考える。一方、積み上がりは企業の意図に反して、売れ残りという在庫が積み上がってきている状況を指し、経済活動が停滞しつつあり、景気が悪化してきていると考える。 在庫の動向が、積み増しか、積み上がりかは景気が上向きかあるいはその逆かということで非常に関心を引くところだ。
上記のICT関連の在庫循環図を見ると、ここ4四半期にわたって在庫が増加し、生産が減速していた。今後の見立ては、この傾向が続くというものだったが、今回の動きはその予想が完全に裏切られるものだった。在庫と生産の両方が増加したのだ。この在庫が増加している状況でさらに在庫が増加し、かつ、減少基調だった生産も増加するということは、この動きは積み上がりではなく、積み増しと考えられないだろうか、ICT製造業は調整局面を乗り越えつつあるとみられる。
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野口 正人(退職)の記事
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