情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について2023年10-12月期がまとまりましたのでご報告いたします。
【2023年10-12月期のポイント(前年同期比)】
2023年10-12月期のICT経済は、総合指標が前年同期比マイナス1.4%と2期連続で減少した(7-9月期:同マイナス2.0%から0.6ポイント改善)。財・サービス別にみると、ICT財は、同マイナス4.2%と5期連続で減少し、減少幅は縮小した(7-9月期:同マイナス11.9%から7.7ポイント改善)。一方、ICTサービスは、同マイナス0.5%と7期ぶりに減少に転じた(7-9月期:同1.5%から2.0ポイント悪化) (図表1)。
今期のICT経済は、供給サイドの財生産では半導体・フラットパネル製造装置は減少幅が縮小し、電子部品、集積回路は増加に転じた。さらに、ICT財は、在庫調整局面にあり、電子デバイスや集積回路の在庫は減少幅が拡大した。一方、ICTサービスは、ゲームソフトが減少したころにより、減少に転じた。
需要サイドをみると、ICT消費は10期連続で減少したが減少幅は縮小している。スマートフォンなどの本体価格は円安や部材価格の高騰を背景に増加幅が拡大し、スマートフォン等通信・通話使用料とインターネット接続料の減少幅が縮小したことが背景にある。また、ICT設備投資(民需)は2期連続で減少した。要因は、通信業の通信機への投資の減少継続や電子計算機等が減少に転じたことが挙げられる。
ICT輸出は、金額ベースで4期連続減少したものの、半導体等電子部品が増加に転じ、半導体製造装置は減少幅が縮小し、回復傾向にある。ICT輸入は、金額ベースで3期ぶりに増加に転じた。通信機、半導体等製造装置が増加に転じ、半導体等電子部品は減少幅が縮小した。
今後については、世界的な半導体市場が回復傾向となってきていることがICT財生産のプラス要因である。背景には、スマートフォンの販売低迷が底打ちしたこと、世界的に市況が悪化したフラッシュメモリーがクラウドサービス、5G、IoT、AI等向けの需要を背景に持ち直したことに加え、生成AIの普及により高性能サーバー向けの需要拡大が見込まれるためである。ただし、スマートフォン、パソコン、電気自動車(EV)の最大需要先である中国景気の先行きが不透明である点は注意を要する。国内では、台湾の大手ファウンドリ台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場において2024年内の半導体の量産開始が予定されており、半導体産業の国内設備投資が増加している。シリコンサイクルが上昇局面になったことを捉えると、ICT財生産は2024年後半にかけて回復基調が継続するだろう。
【2023年10-12月期の動向】
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比マイナス1.4%と2期連続で減少し、前期(7-9月期)に比べて0.6ポイント改善した(図表1)。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比マイナス4.2%と5期連続で減少し、前期(7-9月期)に比べて7.7ポイント改善した(図表1)。
- 電子部品、集積回路は増加に転じ、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置は減少幅が縮小した(図表3)。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比プラス0.9%となり、前期(7-9月期)に比べると増加幅が0.1ポイント縮小した(図表4)。
- 電子デバイスと集積回路の減少幅が拡大した。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比マイナス0.5%と7期ぶりに減少に転じた。前期(7-9月期)に比べて2.0ポイント悪化した(図表1)。
- 受注ソフトウェアの増加幅が縮小し、ゲームソフトの減少幅が拡大した(図表5)。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比マイナス0.9%と10期連続で減少し、前期(7-9月期)に比べると1.0ポイント改善した(図表1)。
- スマートフォン等の通信・通話使用料は減少幅が縮小し、スマートフォン等の本体価格は増加幅が拡大した(図表6)。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比マイナス7.9%と3期連続で減少した。前期(7-9月期)に比べて2.6ポイント悪化した(図表1)。
- 通信機は増加に転じたが、電子計算機等は減少幅が拡大した(図表7)。
- 官公需は前年同期比プラス26.4%と4期連続で増加した。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比マイナス2.6%と4期連続で減少した(図表1)。半導体等電子部品は増加に転じ、半導体製造装置は減少幅が縮小した(図表8)。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス5.1%と3期ぶりの増加に転じた(図表1)。半導体等電部品は減少幅が縮小し、通信機、半導体等製造装置は増加に転じた(図表9)。
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【関連サイト】ICT経済分析
「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容
- 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。 - 情報通信の在庫循環分析
情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。
情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。
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