欧州が米国IT大手企業の取り締まりを強化か
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昨2014年まで、欧州委員会は「テレコム単一市場」の構築のため、通信市場の大幅な規制見直し作業に励んできた。その見直しはEU市場の単一化を通じたブロードバンド投資促進を大目標とし、テレコム市場に関する多くの野心的な規制改革案を含んでいた。しかし合意形成が難航し、規制案は立法の道半ばのまま、委員会は2014年後半から次期体制に移行してしまった。
新たな体制となった欧州委員会は2015年5月6日、「デジタル単一市場」形成に向けた戦略を発表した。戦略はテレコム市場にとどまらず、電子商取引市場全体の成長戦略として方針を明確化したものとなっている。EU全域に「デジタル単一市場」を構築するための環境整備を大目標とし、その一環として競争総局の調査やオンライン・プラットフォーム規制の検討が組み込まれていることも注目される。一方、EUとの間で環大西洋貿易投資連携協定 (TTIP) 交渉を続けている米国からは、オンライン市場で圧倒的な競争力を持つ米国IT企業を狙い撃ちにしているのではという憶測を呼んでいる。欧州は保護主義に向かっているのだろうか。以下では、新たに示されたEUの制度改革の方向性と、実態調査の開始発表が起こした波紋について考える。
デジタル単一市場戦略の誕生
欧州委員会が2014年夏の成立を目指していた「テレコム単一市場 (Telecom Single Market)」は、通信事業の単一認可制度、ブロードバンド卸売りの標準化、周波数割り当てにおける欧州委員会の権限強化、ネット中立性、国際ローミング、統一的な消費者保護といった数々の制度改革案を打ち出していた。その枠組みは、テレコムサービスにおける国境解消およびブロードバンドインフラの構築を政策の核としていた。しかし審議は進まず、膨大な法案のうち、2015年に立法化の確実視できるものは、ネット中立性と国際ローミングに関するルールのみという結果となった。これ以外の規制案は事実上廃案となり、課題は新制度「デジタル単一市場 (Digital Single Market)」の中で別途取り上げられることとなった。2015年7月現在、欧州委員会・理事会・議会の3者は、中立性に関しては合理的トラフィック管理の定義、ローミングに関しては小売ローミングの廃止時期を2017年6月とすることで合意したとされている。「テレコム単一市場」規制案の中ではこの2つだけが生き残ったことになる。
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