私は20年以上にわたって家族とともにマンションに住んできました。購入した当時は子供がまだ小さかったのですが、その子供たちが独立して夫婦二人だけでの生活となることが間近に迫ってくる年齢となりました。キッチンや風呂、洗面台等の水回りや畳、柱等は傷んできており、何らかの対応をしなければならないと徐々に考えるようになってきました。

私の両親は私が同居していた時期（幼少期から学生時代）は賃貸住宅に居住して、私が結婚して独立した後で現在の実家（戸建て）を購入したため、現在の実家に対して私自身あまり愛着を感じていません。私たち子供が独立して二人だけとなった両親が生活しやすいように場所や間取り等を決めたようですが、子供たちが遊びに来ることや将来的に2世帯で住むといったことをあまり想定しないで建てたようで、私から見るとあまり使い勝手の良い家とは言えませんでした。そうした実家の状況と部屋数や階段の昇降、庭の手入れ、安全性といったことを考慮すると、戸建てよりもマンションのほうが年老いてからは住みやすいのではないかと考え、住み慣れた自室をリフォームしてこれからも住んでいこうと決めました。また現在同居している子供たちの柔軟な発想を取り入れることで、家族皆が愛着を感じる住まいにすることができると考えました。

実際にリフォーム会社の方々と検討を開始してみると、間取り等基本的なことから各部屋の壁、天井、床、玄関タイル、電灯の色・形状に至るまで想定以上に多くのことを決めなければならず、とても妻と二人だけでは対応しきれない分量だと実感しました。機能の違いだけであれば妻と自分で選択することはできるのですが、デザインとなると趣味やセンスの問題であり、子供たちの感性がとても役立ちました。また、良いものを選択すればその分価格が上昇するので、限られた予算内で優先順位をつけながら決めていくことが必要でした。

結果として満足のいくリフォームが完成し、今ではとても快適に生活しています。子供たちも帰宅するのがとても楽しみだと話しており、リフォームをして良かったと感じています。あらかじめ建築会社が一般的な人々の住みやすさを考慮して設計した部屋に入居できることが新築マンションを購入する大きなメリットだと思いますが、自分たちの理想とする生活スタイルをベースに、家族で話し合いながらオーダーメイドで作っていくリフォームは完成後の満足感だけでなく、その過程自体もとても楽しい貴重な経験だったと思います。水回り設備のおおよその位置以外については基本的に制約がなく、希望に沿った間取りに変更することが可能なので、リフォームに対する顧客の満足度は一般的にとても高いようです。リフォーム工事期間中に一時的に引っ越しをして、通常と異なる環境下で生活したことも、今から振り返ると貴重な体験となりました。

ただ、一連のリフォーム工事において、ICTを活用した場面は極めて限定的だったと思います。リフォーム会社への最初の問い合わせ、ショールームの申し込みについてはインターネットを利用しましたが、新型コロナウイルス感染拡大が収まっていない時期であったにもかかわらず、リフォーム会社の方々との打ち合わせは毎回対面で実施しましたし、ショールームには何度も足を運びました。工事の現場で正確に実測しなければならない部分があることは事実ですが、シミュレーションの技術が向上し、特に画面越しでも実際と変わらない色合いを見ることができるのであれば、リアルでの対応はもう少し減らすこともできたのではないかと思いました。平均寿命が延び、年老いてからのリフォーム需要は今後ますます増加すると予想されますので、ICTの利活用によって効率化できる有望な分野ではないかと思いました。