2015年10月5日掲載 ITトレンド全般 ICR View

ドローンと周波数


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最近、「ドローン」が話題になっている。ドローンとは無人の自律移動端末航空機のことであり、形態は大型のものから手のひらに乗るほど小さいものまである。飛行中に発する音が蜂の飛行音と似ていることから、雄蜜蜂を意味する英語「ドローン」がその名称となったものである。

米国のAmazonは、ドローンを活用した配送サービスの提供を検討していることを2013年12月に発表、実証実験をカナダなどで行っている。また、運輸大手のDHLも、貨物輸送におけるドローンの実地テスト開始を2014年9月に発表している。現時点発表されているものは試験段階のものであるが、利用方法次第では、従来なかった多くの可能性をもたらすものと期待されている。

新しいサービスや製品の常として、ドローンには可能性だけではなく、ネガティブな一面もある。2015年4月、首相官邸屋上に、放射能汚染土や発煙筒を載せたドローンが発見された事件が報じられた。さらに同年5月には、ドローンに関して初めての摘発事例が発生した。神奈川県大磯町で開催されたマラソン大会を空から撮影するため、ドローンに画像伝送用無線装置を搭載していたことが「電波法違反」となり摘発・書類送検されたものだ。

ドローンは航空機であるため、その利用には電波の利用が前提となる。電波は有限かつ希少な資源であるため、日本においては電波法をはじめとした各種法令により利用の枠組みが定められている。

電波法では、無線周波数を活用する機器等(「無線局」と呼ばれる)を設置・利用するには原則総務大臣の免許を取得することとなっており、電波の特性等に応じ、周波数が割当てられている。

上記のドローンの摘発事例では、「5.8GHz帯映像伝送システム」を搭載していたことが問題となった。日本においては、この5.8GHz帯という周波数帯は、ETC(Electronic Toll Control System)で使われており、勝手に使うことは許可されていない。

この5.8GHz帯は、海外では免許等不要な無線LAN用周波数帯となっている場合があり、こうした海外で合法的に製造されたものであっても、日本国内で許可なく使用すると電波法違反となってしまうことがある。

5.8GHz帯のような比較的高い周波数は、直進性が高く、データ伝送量が大きいという特性がある。高精細な画像を伝送したい場合には、高い周波数を使うのが合理的であるが、国による制度・仕組みの違いにより、その利用は無条件ではない。

ちなみにこの5.8GHz帯は、将来に向け、無線LAN用周波数の拡張帯域の候補ともなっている。無線LANは今後2020年以降を見据えると、増々の利用増加が見込まれており、周波数が足りない状況が予想されている。周波数が逼迫する場合には、対象とする周波数の割当て拡張が行われる場合があるが、その候補としてこの帯域も挙げられている。

更に、5.8GHz帯は欧米においてはITS(Intelligent Transport System)用の帯域となっている。日本においても先のドローンの例にあるように、ETCやITS用に割当てられているが、日本ではこの用途として、別に700MHz帯が割当てられており、世界協調という観点から、欧米との整合をどのように取るかが論点となっている。

ドローンでは、免許不要で利用できる2.4GHz帯が使われることも多いが、付加価値をつけようとすると、上記の5.8GHz帯映像伝送システムのような事例が出てくるし、更には無線LANやITSといった既存のサービスとの整合、調整をどう取るかが課題となる。

総務省は2015年3月、ドローンを含むロボットなどによる電波利用をどうしていくかの検討を、情報通信審議会へ諮問した。我が国の国際競争力を高め、海外を含めたシナジー創出、安価で新しいサービスの出現、イノベーションの促進が図られる方向での検討を期待したい。

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