「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の公表
デジタルの力を活用した地方の社会課題解決を図る「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、総務省は、2022年3月に「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を公表した。[1] 同計画は、光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブルなどのデジタル基盤を地方ニーズに即して迅速に推進するというものである。5Gについては、第1フェーズで5G基盤(4G、5G親局)を全国整備し、第2フェーズで子局(基地局)を地方展開し、エリアカバーを全国で拡大する。
総務省は2019年6月に「ICTインフラ地域展開マスタープラン」を公表し、5G基地局やそれを支える光ファイバの地方への早期展開を促進してきた(2020年7月2.0版、2020年12月3.0版の策定)。NTTドコモ、KDDIおよびソフトバンクは2020年3月に、楽天モバイルは2020年9月に5G商用サービスを開始し、設備投資計画の前倒しなどにより積極的に5Gエリア展開を進めている。
5G整備の方針および具体的施策
「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」において、「デジタル田園都市国家構想」を実現するためには、5Gネットワークの都市と地方での一体的な整備が重要であり、世界最高水準の5G環境の実現を目指すとしている。5G人口カバー率については、(1)2023年度末:全国95%、全市区町村に5G基地局を整備、(2)2025年度末:全国97%、各都道府県90%程度以上、(3)2030年度末:全国・各都道府県99%を目標とする。
具体的施策として、(1)新たな5G用周波数の割当て、(2)制度整備、(3)支援措置、(4)インフラシェアリングの推進、(5)地域協議会の開催等を推進する。新たな周波数割当てや補助金交付にあたって、条件不利地域の基地局整備を考慮するなど、地方での整備に向けた配慮がみられる。
5G整備状況とインフラシェアリングの推進
総務省は、2021年12月に、モバイル通信事業者各社に対して、5G基地局数・5G人口カバー率等の年度計画の提出、整備状況の定期報告などを要請した。同省は、2022年10月、各社からの報告に基づき、2022年3月末の5Gの整備状況を取りまとめ、公表した。[2] 総務省によると、全国の5G人口カバー率は、2022年3月末で93.2%、都道府県別の5G人口カバー率は、2022年3月末で全ての都道府県で70%超という整備状況である。都道府県間で人口カバー率に差異はあるものの(72.3%~99.7%)、概ね順調な進捗状況とみられる。
効率的なエリア展開に向けて、鉄塔やアンテナ等を共用するインフラシェアリングの推進が不可欠となるため、総務省は、基地局のシェアリングを可能とするための技術開発、国有・公有施設などの情報共有などに取り組んでいる。2022年8月、総務省は、携帯電話事業者とインフラシェアリング事業者との間におけるルール整備に向け、インフラシェアリングに係るガイドラインを改正した。[3] インフラシェアリング事業者JTOWERは、NTTドコモなどから通信鉄塔のカーブアウト(買い取り)を進めるとともに、補助金を活用し、地方・郊外におけるシェアリング用の鉄塔を新設する。[4] 新たなガイドラインを踏まえて、今後、インフラシェアリング活用などによる5G整備の加速が期待される。
(出所)
[1] [2] [3] 総務省 ウェブサイト
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban01_02000042.html
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000561.html
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000555.html
[4] JTOWER ウェブサイト
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4485/ir_material_for_fiscal_ym/125809/00.pdf
調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。
ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら関連キーワード
清水 郁雄 (Ikuo Shimizu)の記事
関連記事
-
Telefonica、アルゼンチン事業を売却-グローバル戦略の「選択と集中」を推進
- MWC
- スペイン
- モバイル通信事業者(海外)
- 欧州
-
AI-RANの導入は世界の通信業界に新たな変革をもたらすか
- WTR No429(2025年1月号)
- オープンRAN
- 日本
-
ミリ波帯の可能性を広げる国内外の動き
-
Starlinkの新サービス、地上ネットワークへの影響を巡る国際的な議論に
- モバイル通信事業者(海外)
- 欧州
- 米国
- 衛星ビジネス
-
通信事業者の新たな収益源となるか ~ネットワークAPI開放の取り組みと今後~
- MWC
- WTR No423(2024年7月号)
- イベントレポート
- モバイル通信事業者(海外)
- 海外イベント
5G/6G 年月別レポート一覧
ランキング
- 最新
- 週間
- 月間
- 総合