2023.9.14 ITトレンド全般

世界の街角から:広島県竹原市と豊田郡大崎上島町

Image by Monika Schröder from Pixabay

2022年8月、国内では新型コロナの「第7波」が到来し、感染者数がピークを迎えていた。その後(2022年9月以降)に迎えた感染状況の改善から「ウィズコロナ」の歩みが進むなど、社会全体がコロナとの付き合い方の見直しに動いていたタイミングであったが、前年度からの業務遂行のため、広島県豊田郡大崎上島町へ向かった。

出張に際しては、万全の準備(ワクチン接種、PCR検査)をおこなうことで島への渡航が許可されていた。本稿では、離島である広島県の豊田郡大崎上島町および竹原市の様子を紹介していく。

広島県豊田郡大崎上島町への移動

広島県豊田郡大崎上島町へ向かうには、東京都心からだと電車、飛行機、路線バス、乗り合いタクシー、レンタカー、フェリーなどを駆使することになり、今回の出張では、各路線の時刻表をつなぎ合わせ効率的に大崎上島にたどり着くことが重要であった。帰路についても、一本バスを逃したことで、次のバスまでかなり時間が空くなど、最終的に飛行機に間に合わないことも想定できるため、フェリーの運航時間を把握することに加えて、フェリーを降りた後のバスの時刻を把握しておき、下船後、港からバス停まで小走りが必要なのかを検討するなど、スリルのある移動を経験した。

東京から広島への出張を検討する際に、「どの路線を利用するか」で悩むことが多い。東京駅から広島駅までの所要時間だけで比較すると飛行機は約3時間、新幹線では約4時間かかることになり、飛行機の方が速い。しかし、広島空港が広島の中心地から離れた場所[1]にあることから、広島市方面に行く場合にはバスを利用(約50分)することになる。この乗り継ぎを考慮すると、新幹線の方が便利と考えることもできる。

今回の出張先である、大崎上島へ向かうためには、広島県の南中部、瀬戸内海の沿岸に位置した竹原市にある竹原港からフェリーに乗船することが最も効率的であるため、新幹線の場合、広島駅、東広島駅、三原駅にて降車し竹原港を目指すことになるが、路線バスの本数および新幹線との接続を考慮すると、飛行機で広島空港に降り立ち、乗り合いタクシーかレンタカーで南下することが効率的な移動となる。このため、今回は飛行機を選択した。また、広島空港から竹原港までは車で3~40分程度であり、本来であれば広島空港と竹原港をダイレクトでつなぐ乗り合いタクシーが移動手段となるが、コロナ影響もあり運休していたため、空港でレンタカーを借りて竹原港を目指した。

竹原市および大崎上島町

大崎上島町に向かう際に重要な経由地となる、竹原市および竹原港周辺について、ここで紹介したい。竹原市は広島県の南中部、東広島市や三原市に隣接した場所に位置し、瀬戸内海に面している。竹原市内に入り竹原港を目指すと地方都市と思われる景色が続くが、突如、歴史的景観を残す「町並み保存地区」が現れる。観光地ではあるものの、町並み保存地区では地元民が普通に生活している。本来であれば車を停めて、町並みを撮影したいところだが、そこで普通に生活している地元民の方を撮影するのも失礼になると思い自粛した[2]

町並み保存地区を後にし、竹原港へ向かうが、これまでもフェリー出航時間に余裕がある場合には、竹原市内で昼食をとることが多かった。広島ということもありお好み焼き屋がたくさんあり、今回もお好み焼きを食べる機会に恵まれた。竹原市は日本酒の産地としても有名であるため、酒粕がまぶされたお好み焼きがあるなど、バリエーション豊富なお好み焼きを堪能することができた(写真1)。

【写真1】お好み焼き

【写真1】お好み焼き
(出典:文中掲載の写真は、一部記載のあるものを除きすべて筆者撮影)

瀬戸内海に面している竹原港を発着するフェリーには、大崎上島へ向かう航路と大崎上島の各港を経由し、大崎下島へ向かう航路、さらに契島へと向かう航路がある。また、今回の目的地である、大崎上島には白水港とそこから車で10分ほど離れた垂水港の2つの港があり、それぞれの行き先によりフェリー航路が違うため、経由と到着港を間違えると簡単には引き返すことができなくなる。乗り慣れていない場合には注意が必要である。フェリーは自動車搬送も可能なため、島内を車で移動する場合には自動車のまま乗船することもできる。

竹原港から大崎上島の白水港までは30分程度であり、穏やかな瀬戸内海だけあってフェリー内でのんびりと過ごすことができる(写真2、3および図1)。

【写真2】竹原港のテラスと垂水港行きフェリー

【写真2】竹原港のテラスと垂水港行きフェリー

【写真3】白水港ゆきフェリーと 穏やかな瀬戸内海

【写真3】白水港ゆきフェリーと
穏やかな瀬戸内海

【図1】大崎上島MAP

【図1】大崎上島MAP
(出典:ひろしま公式観光サイトDive Hiroshima:https://dive-hiroshima.com/feature/island-kamishima/)

瀬戸内海の大崎上島

瀬戸内海とはどこまでをいうのか正確な範囲を調べてみると、「瀬戸内海環境保全特別措置法」という法律があり、以下に引用する[3]

「瀬戸内海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によつて囲まれた海面並びにこれに隣接する海面であつて政令で定めるものをいう。

  1. 和歌山県紀伊日ノ御埼灯台から徳島県伊島及び前島を経て蒲生田岬灯台に至る直線
  2. 愛媛県佐田岬灯台から大分県関埼灯台に至る直線
  3. 山口県火ノ山下潮流信号所から福岡県門司埼灯台に至る直線

とのことだ。

文字だけ見てもまだ良く理解できないが、大阪湾から山口下関海峡までと、中国地方と四国、四国と九州に挟まれた水域を指す。

瀬戸内海には727もの島(昭和61年海上保安庁調査より)があり、大崎上島は第8位の大きさ(38.27k㎡、外周約60km)である。瀬戸内海を眺めながら、サイクリングで島一周を楽しむことも可能だ。サイクリングといえば、瀬戸内海の7つの島を橋で結んだルートとして、「瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」が有名で、さらには広島県呉市から安芸灘諸島を経由し、愛媛県今治市の岡村島までを結ぶルートとして「安芸灘とびしま海道(安芸灘諸島連絡橋)」もサイクリストの聖地と呼ばれている。大崎上島はこの2つのルートの真ん中に位置し、いずれのルートにも属さない島となる。島には橋がないために自転車で渡るにはフェリーへの乗船が必要である

人口は7,158人[4]であり、65歳以上が46.1%、産業としては、造船業および島の斜面を活かした、ブルーベリーや柑橘類の栽培が盛んである。

島内には温泉旅館もあり、のんびりするには良質な環境が整っているといえる。

大崎上島とフェリー

前述のとおり、大崎上島において、島と本州や四国をつないでいるのは、フェリー航路のみとなり移動するためには時刻表や運行時間を常に気にしなければならない。

さらに、今回の業務では大崎上島町に属する、「生野島」および「契島」へと渡った。両島については次回詳細に記載させていただくが、各島への渡船フェリーを効率的に乗りこなしていくためには、緻密な運航時間の把握とともに、乗り損ねてしまった場合に、のどかな島の風景を見ていかに時間を潰せるかという点も大切だ。

ちなみに瀬戸内海に限らず海上を運航するフェリーは月に数度、ドッグに入りメンテナンスを受けることが必須とされている。その際に、ドッグ入りした船の代わりに、別の船がフェリー会社の垣根を越えて運航を代行するケースがある。

そのため、事前にフェリーの行き先、出発時間を調べて港に行っても、予定されているフェリーは運航されておらず、違う行き先が掲示されたフェリーに出くわすこともある。日頃からフェリーに乗船している人は、「いつものフェリーはドッグ入りで今日は代替フェリーである」とピンとくるらしい。

大崎上島町での仕事を控えた私は、早朝フェリーの出発時間に合わせて、竹原港に行き、今回は自動車も一緒に乗船するため、車列に並んでいた。出発時間になり車列の流れるまま、フェリーに乗船した。フェリー内の駐車場へ停車し落ち着いていると、行先掲示板には、本来の行き先が掲示されておらず、違う行き先が掲示されていた。行き先が違うフェリーに乗ると取り返しがつかないことを承知していたので、驚き慌てて、訪問先の顧客、別ルートから現地入りしている上司に連絡し、到着が大幅に遅れると詫びを入れた。車に戻り落ち込んでいると、本来の目的地の港へフェリーが入っていく。慌てて乗務員に聞くと「いつものフェリーはドッグ入りで、普段は別の行き先へ渡船しているフェリーが代替できた」と話してくれた。フェリー乗船は瀬戸内海の穏やかさ、のどかさを感じられる貴重な体験ではあるが、のんびりしていると途方に暮れることもあるので注意が必要である。

[1] 国内主要都市中心地と空港との位置関係を直線距離で遠い順に並べると、福島(59km)、成田(57km)、広島(43km)、新千歳(41km)となっている(出典:https://air-line.info/citycenter.html)。

[2] 街並みが気になる方は下記を参照(https://www.takeharakankou.jp/)。

[3] https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348AC1000000110

[4] 大崎上島町役場 統計情報(https://www.town.osakikamijima.hiroshima.jp/soshiki/jumin/3/772.html)

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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