情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)技術の世界的な普及と変遷を分析するための指標であるグローバルICTインディケーターを用いた分析結果を公表している(分析結果を参照)。
グローバルICTインディケーターは、ICTの普及度合いを「装備量」として計測するものであり、固定電話回線数、携帯電話加入者数、固定ブロードバンドインターネット回線数、インターネットユーザ数(除固定BB)、コンピュータ保有世帯数をそれぞれ1つの「装備」として集計している。
2016年7月1日のInfoComニューズレターに掲載された「グローバルICTインディケーター(装備量)が示すICTの世界的な普及と分析」では、日本のICT装備が約3装備であることについて、どのような日常生活が想定されるのかが述べられているが、ここではICT装備の内訳のデータを用いて、日本のICT普及状況を掘り下げてみたい。
2014年(速報値)において、日本の「一人当たり装備量」(装備量を人口で割って基準化した値)は世界20位となっているが、まずはその内訳をみてみよう。先進国の平均と比べたものが以下のグラフである。

2014年(速報値)の日本の一人当たりICT装備量と先進国平均の比較
日本の一人当たりICT装備量は2.92であり、先進国平均2.58を上回っている。内訳をみると、全てにおいて日本は先進国平均を上回っているが、特に固定電話、携帯電話、インターネット(除固定BB)が高い。日本は先進国の中でも固定電話、携帯電話、インターネット(除固定BB)を活用する環境が比較的整備されていると言えるだろう。
日本では携帯電話の普及によって固定電話はあまり使われなくなっている印象があるが、先進国の中でみると比較的多い点は興味深い。
また、日本の固定BBの一人当たり装備量は先進国とほぼ同水準だが、固定BBの定義は「通信速度が256kbps以上」だという点には注意が必要だ。日本の固定BBで主流になっている光ファイバーの通信速度は256kbpsよりもはるかに速い。「1Mbps以上」「1Gbps以上」のようにもっと高速な固定BBに絞ってみれば日本の順位はもっと高いであろう。
次に、日本の順位がどのように変化してきているのかをみてみよう。以下のグラフは、一人当たり装備量とその内訳について世界で日本が何位なのかを示したものである。

日本の一人当たりICT装備量の順位の推移
これをみると、日本の順位は2011年以降上昇を続けていることが分かる。ICT装備の内訳別にみると、携帯電話の順位が上昇を続けており、日本のICT装備普及の順位上昇に貢献しているといえる。逆に固定BBは2012年以降で下落が続いているが、前述のように「通信速度が256kbps以上」の通信サービスで評価した順位である点には注意が必要だ。
今後、日本で携帯電話の法人利用や1人2台以上の利用が拡大すれば、さらに日本の順位は上昇していくことが期待できるだろう。また、最近の若者はスマホの利用は上手いがパソコンは苦手というようなことが言われているが、パソコンの活用が広がればコンピュータの順位が上昇していく。NTTが光コラボレーションモデルを開始したことにより、光ファイバーと携帯電話のセット割引等が増えており、固定BBの順位が上昇することも考えられる。今後も日本の一人当たりICT装備量の順位が上昇を続けられるのか注視していきたい。
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