秋と冬のソウル
昨年から今年にかけて、2回ソウルを訪問する機会があった。2度とも忙しい旅ではあったが、その中でも、宮廷料理や韓国のお米、そして面白いラテなどを楽しむことができたので、その模様をご紹介したい。(写真1)

【写真1】ソウル市を望む
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)
宮廷料理
韓国料理といってもさまざまなものがある。地元の人と一緒に焼肉を食べたり、キムチを買ったりするのもとても楽しいのだが、韓国の伝統食文化の結晶といわれる「宮廷料理」もいつか体験してみたいと思っていた。「朝鮮王朝宮中飲食」は、韓国の国家重要無形文化財にも指定されている。昨年秋、初めて有名店の一つを訪れる機会を得た。「宮廷料理」はいわば韓国料理のフルコースだが、中でも、「クジョルパン」と呼ばれる盛り合わせが目を引く。円形の器に野菜など5色8種類の具材が盛り付けられ、中央には「ミルジョンビョン」という薄いクレープ状のものがある。似た色の具材が「ミルジョンビョン」を挟んで対称になるように置かれているのも美しい。「ミルジョンビョン」を1枚ずつ取り、好きな具材を包んで、調味料を付けて食べる。このほか、チャプチェやチヂミのような親しみのある料理から見たことのないものまで、さまざまな料理が並ぶ。刺激の強い香辛料は使われないのだそうで、辛いものはなく、どれも優しく上品な味である。一度知ってしまうと、次もぜひ、と思わせるものがある。贅沢な楽しみではあるが……(写真2、写真3)

【写真2】宮廷料理1

【写真3】宮廷料理2
韓国の米どころ
韓国にも「米どころ」があることを初めて知った。ソウル市内から南東に約50km、高速バスで約1時間のところにある京畿道・利川(イチョン)市(図1)のお米は、「王様印の利川米」と呼ばれており、昔から王様に献上されていたもので、現在でも利川の特産品なのだという。利川市内でこのお米を含む韓定食を味わうことができた。数多くのおかずと共に、釜に入った熱々のご飯が供される。具沢山の、少し辛いテンジャンチゲ(韓国式の味噌汁)や優しい味の野菜料理など、丁寧に調理された現地の食材と非常によく合う。ひとつひとつのお皿に盛られた量は一見多くないように見えるが(写真は3人前)、いつしか大満足となる。店頭ではお米も売られていた。私見だが、ご飯やパン、麺などの主食は、現地の水で調理されたものを現地の食材と共に味わうのが、最も美味しく食べる方法ではないかと思う(写真4、写真5、写真6)。

【図1】京畿道利川市
(出典Google Map)

【写真4】利川のご飯

【写真5】韓定食(フレーム外にもおかずが並ぶ)

【写真6】店頭ではお米が売られている
面白ラテ
移動中にドライブインに立ち寄った。さまざまなテナントがあり、その中に良さそうなコーヒーショップがあったので行ってみる。普通のカフェラテなども十分美味しそうだが、「朝鮮人参ラテ」なるものを発見。こんな機会はなかなかないので試してみる(写真7)。見た目に特徴はなく、味は、ミルクにいわゆる朝鮮人参の味と香りがプラスされた感じである。香りは強すぎず、優しい味だった。

【写真7】朝鮮人参ラテ
昌徳宮
食べ物ばかりでなく少しは観光の話題も。最も有名な観光地の一つである「昌徳宮」を訪れた。朝鮮王朝時代の宮殿で、さまざまな建物と庭園が美しいが、中でも特徴的なのは建物の屋根である。屋根の上には動物が並んでいる。これは雑像(チャプサン)と呼ばれ、魔除けでもあるのだが、「西遊記」の三蔵法師の一行との説もあるそうだ。そう思ってみると楽しい。また、屋根の下から見上げると、軒下にも緑を主体とした緻密な装飾が見られる。建物の外観や室内装飾も気になるが、軒下もぜひ見てみたい(写真8、写真9)。

【写真8】屋根に動物が並ぶ

【写真9】美しい軒下
旅行者向けの日本語対応
韓国でも、観光客が多く訪れる場所では、多くの日本語での案内がある。金浦空港とソウル市内を結ぶ空港鉄道(A'REX)では、車内放送や文字での案内が英語、中国語、日本語でも流れており、言葉ができなくても不安なく移動することができる。その他の交通機関でも文字、音声での日本語の案内が多く見られるし、チケットも自動販売機で日本語を選んで購入できる。しかも、優先座席についてなど、細かい情報まで日本語に訳されるようになっている。昔は微笑ましい訳も見られたように思うが、最近では語学に堪能な人が増えたためか、敬語表現なども違和感がない。筆者にとっては数年ぶりの韓国であったが、ますます旅行しやすくなったと感じた。個人で行動している時には多くの人々に道を尋ねたり助けてもらったりもしたが、どの人も親切だった。日本でも多くの場所で韓国語を目にするようになっている。このような動きが進むと良いと思う。
コロナウイルスの影響
昨今のコロナウイルスによる新型肺炎(COVID-19)の流行は、韓国だけでなく世界全体に大きな影響をもたらしている。韓国でもスマートフォンへの緊急情報配信(日本でいえばドコモの「エリアメール」にあたるもの)、位置情報利用など、ITを含めた対策が取られている。一方でプライバシーとの兼ね合いなどの課題も指摘されており、今後の感染症対策のあり方についてはさらに検討や議論が進むと思われる。
また、世界の旅行業界も大きな被害を受けている。出張や個人旅行の予定が変わってしまった方も多いだろう。旅行関係のサイトを見ても、入国制限やコロナウイルス対策に関する情報とともに”survive”(生き残り)の文字が多く見られる。現在の厳戒態勢が多少緩和されたとしても、旅のあり方は、少なくとも当分の間は大きく変わらざるを得ない。しかし、BBC Worldで4月に放送された旅行番組「Travel Show」では、世界各国からの悲壮な報告が並ぶ一方で、モルディブのリゾートホテル経営者が「我々は未来に向けた計画を立てている。我々はコンスタントに設備の修復や刷新を行っている。モルディブでは6月にはすべてが通常に戻るだろう。その時にはまた多くの観光客がやってくると期待している」とコメントしていた。状況は深刻であり、6月が正しいのかはわからないが、被害が少しでも少なく済み、充実した出張や楽しい個人旅行ができる日々が一日も早く戻ることを願ってやまない。
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左高 大平 (Taihei Sadaka)の記事
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