2022年8月2日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

2022年6月に開催された注目のカンファレンスを一挙公開:RSAC 2022 / Collision 2022 / Plug and Play Tech Center Summit 2022



本記事は、NTTコミュニケーションズ イノベーションセンターの小室智昭氏より寄稿いただいた原稿をそのまま掲出しています。

1. はじめに

 6月は、毎週のようにカンファレンスが開催され、カンファレンス月間となった。本稿ではその中から、世界各地から出展社、参加者がやってきたRSAC 2022、Collision 2022とPlug and Play Tech Center社(以降、PNP社)のSummitについてお伝えする。

2. RSAC 2022

2-1. はじめに

 新型コロナの影響でRSAC 2019を最後にRSAC 2020, RSAC 2021はオンライン開催となったが、RSAC 2022は2年半ぶりにリアル開催としてSan Francisco市に戻ってきた。前日まではどんよりとした天気だったが、RSAC 2022のリアル開催を祝福するように、初日は快晴に恵まれた。

初日は午後からの開催だったため、午前中は会場のMoscone Centerの入り口付近の人の流れはまばらだった。会場の隣にはPCR検査場が設けられ、海外からの参加者向けにRapid Testが提供されていた。

【写真1】RSAC 2022初日のSan Francisco市内の様子

【写真1】RSAC 2022初日のSan Francisco市内の様子
(出典: 筆者撮影)

2-2. RSAC 2022 Innovation Sandbox

 RSAC 2022 Innovation Sandbox(以降、Innovation Sandbox)は応募があった100社以上のStartupの中から10社がFinalistsとして選ばれ、その10社が優勝をかけてPitchを行う。StartupにとってInnovation Sandboxは大きな意味を持つ。これまでの17年間でInnovation Sandboxに参加したStartupが調達した資金は、Top 10だけでも合計で$9.8Bに達する。2018年に優勝したBigID社が、Innovation Sandboxでの優勝をきっかけに多くの資金を獲得してUnicornになったことは記憶に新しい。また、資金調達に加えて、大企業とのパートナーシップが加速することは言うまでもない。

【図1】過去4年間のRSAC 2022 Innovation Sandboxの優勝社

【図1】過去4年間のRSAC 2022 Innovation Sandboxの優勝社
(出典: RSACの発表をもとに筆者が作成)

今年のInnovation Sandboxには、クラウド環境の脅威管理、エンジニア向けゼロトラスト、ソフトウェア開発環境の脅威管理、企業データセキュリティ、セキュリティ可視化、XDR(Extended Detection & Response)、企業向けセキュアブラウザー、セキュリティオートメーションといった、いずれも今のセキュリティトレンドにマッチしたソリューションを提供するStartupが登壇した。

【図2】RSAC 2022 Innovation Sandboxに参加したStartup達

【図2】RSAC 2022 Innovation Sandboxに参加したStartup達
(出典: RSACの発表をもとに筆者が作成)

 今年のInnovation Sandboxの栄冠を勝ち取ったのは、Israel発のTalon社だ。Talon社は企業が利用するクラウドアプリをWidgetのようにブラウザーに配置し、企業が使用するクラウドアプリをワンストップで管理・提供できるようにした。さらにTalonはSASE機能も提供している。例えば、Talon社のブラウザーで情報をコピーしても、Chrome Browserなどに貼り付けられないようになっている。企業向けブラウザーはGoogle社なども注目していて、今後ブームを迎えるかもしれない注目の分野だ。

【写真2】RSAC 2022 Inovation Sandboxに優勝したTalon社

【写真2】RSAC 2022 Inovation Sandboxに優勝したTalon社
(出典: 筆者撮影)

優勝は逃して2位となった高度な暗号技術を開発しているBastionZero社は「暗号化は重要な技術だ」と審査員の評価は高かった。BastionZero社はDigital Garage社が資金調達している。

2-3. Expo

 4日間、Expo会場を歩き回ったが、私が見る限りRSAC 2022のトレンドはXDR(Extended Detection & Response)だろう。XDRを提唱したPalo Alto Network社を始め、多くの企業がXDRに関するソリューションを出展していた。

 XDRは、簡単にいうと”発見と対策”で以前からある技術だが、脅威の検知技術や対応の自動化など、XDRのサービス内容は毎年進化している。

 「Zero Trustはどうだった?」とよく聞かれるが、Zero Trustはキーワードであることは間違いないが、Zero Trustは基本機能で、Zero Trustを前提とした上で何を提供できるかがポイントとなっていると感じた。

【図3】RSAC 2022のホットトピックス

【図3】RSAC 2022のホットトピックス
(出典: 筆者が撮影した写真をもとに作成)

 XDR以外のソリューションとしては、新型コロナでブレーキがかかった感は否めないが、SafeBreach社のようなAttack Simulationに注目したい。当初は専用のハードウェアが必要であったり、Attackシナリオが独自の物が多かったが、ソリューションがクラウド化し、AttackシナリオもMITRE ATT&CKに対応するものが増え、年々洗練されている印象だ。

 変わったところでは、SD-WANのVersa Networks社がRSACに初出展していた。President & CEOのKelly Ahujaさんは、「ネットワーク側からSASE機能の提供を目指している。」とRSAC 2022出展の理由を話してくれた。

 また、2018年にMcAfee社に買収されたSkyHigh社が独自に展示していた。話を聞くと「McAfee社は企業向け総合セキュリティソリューションに舵を切ったので、McAfee社から離れてSkyHigh社としてSASEサービスの提供を再び目指すことにした。」と裏話を話してくれた。

2-4. Early Stage Expo

 Early Stage Expoは、Innovation Sandboxに参加したStartupや起業間もない若いStartupが出展している展示スペースで、今年は34社が出展していた。Early Stage ExpoにはPitch Spaceが設けられ、Early Stage Expoに出展しているStartupが30分の持ち時間で、自社のサービスをアピールできるようになっている。

 巨大なExpo会場ではなかなか会えない企業のイノベーターがここに集まるため、私は情報交換の場としてもEarly Stage Expoを活用している。 ここでは、Zero Passwordサービスを開発しているProcyon.ai社を紹介する。多くの企業は、セキュリティのために、社員にクラウドアプリごとに異なるパスワードの設定とパスワードの定期的な変更を求めている。セキュリティ性を高めるために、長い文字列、大文字と小文字の組み合わせ、英文字と数字の組み合わせ、特殊文字の利用が求められるため、社員にとっては記憶するのは苦行に等しく、新たなセキュリティリスクを生み出す危険性もある。それが、1Password社のようなSSO(Single Sign On)サービが人気の理由の一つだろう。しかしSSOは、一回はパスワードを入力しなければならない。Procyon.ai社は、ユーザーが使用しているコンピューターのプロセッサー上にPrivate Keyを生成し、そのPrivateキーを使ってクラウドアプリにアクセスするため、パスワードの入力は一切いらない。Intel社で15年間ソフトウェアエンジニアとして活躍したProcyon.ai社のCo-founder & CTOのSuman Sharmaさんは、Procyon.ai社の機能をOFFの状態ではクラウドアプリにアクセスするためのパスワードが要求され、Procyon.ai社の機能をONにするとパスワードを入力せずにクラウドアプリにアクセスできるデモを見せてくれた。

 ユーザー管理のためにOkta社やPingIdenty社などのID Managementとの連携は必要になるが、MobileIron社などのMDMとの相性も良いため、既存のセキュリティシステムとの相性は良いはずだ。

【図4】Procyon社のシステム概要

【図4】Procyon社のシステム概要
(出典: Procyon社の資料をもとに筆者が作成)

2-5. おわりに

 新型コロナの影響でSan Francisco市での最後の大規模イベントがRSAC 2020だった。当時を振り返ると、マスクをして参加している日本人が現地の記者からインタビューを受けていたことを思い出す。Innovation Sandboxの広い会場は閑散とし、Expo会場も大企業がキャンセルしたスペースが寂しげであった。RSAC 2022はRSAC 2019ほどではないが、賑わいが復活し、Expo会場にはノベルティを集めるノベルティコレクター(筆者が勝手に命名)も復活した。

 米国は、6月12日に入国時のPCR検査の実施義務を撤廃した。現時点では日本政府は入国時のPCR検査は必須だが、セキュリティは日本の企業にとって今後ますます重要になる。本稿を読んでセキュリティへの関心が高まった方には、RSAC 2023への参加を勧めたい。

3. Collision 2022

3-1. はじめに

 Collisionも新型コロナの影響でリアルでの開催は、3年ぶりとなった。Collision 2022が開催されたCanadaのToronto市は、Canadaでは3番目に大きな都市で、市内や近郊に優秀な大学があるため、多くの卒業生をエンジニアとしてハイテク企業に送り込んでいる。

 Toronto市は、北米の大都市と同様に人口の増加によりアパートの家賃が急上昇している。Toronto市内のあちこちでオフィスビル、アパートの建築ラッシュが続いているうえに、市内では慢性的な交通渋滞が発生している。

3-2. Collision 2022概要

 日本では、Startupの祭典というとSXSWを思い出す人が多いと思うが、CollisionはStartupの祭典として毎年CanadaのToronto市で開催されている。2020年までPortugalのLisbon市で開催されていたWeb SummitはCollisionの姉妹カンファレンスにあたる。

 Collision 2022には130の国や地域から35,000人以上が参加した。これは、Collision 2019と比べて40%も多い。参加者の4割以上が女性で、今回はStartup展示、セッションで女性CEOが活躍していた。

3-3. Startup展示

 Collisionはセッション、Startup展示、Startup Pitch、企業や政府などのスポンサー展示で構成されている。セッションやStartup Pitchは興味深いものが多いのだが、それに参加すると日替わりで入れ替わるStartup展示が見れなくなるため、今回はStartup展示をメインに会場を回った。

 Collision 2022では、3日間でのべ1,500社以上のStartupが27のカテゴリーに分かれて展示を行っていた。

 Web 3、Blockchain(Crypto/NFT)に関する展示が多くあった。それは、その領域がStartupにとって魅力があるということの証だろう。Web 3のセッションがほぼ満席であることを考えても、Web 3は注目の領域であることは間違いないが、まだBuzz Wordとして踊らされている印象は拭えない。

 私がStartup展示で興味を持ったStartupのカテゴリーは、Healthcare、Smart Tech、Sustainability、eCommerce、5Gの5つだ。ここでは、Sustainabilityと5GのStartupについて紹介する。

【図5】数字に見るCollision 2022の概要

【図5】数字に見るCollision 2022の概要
(出典: Collision 2022)

(1) Sustainability - Flaura社

 Sustainabilityで気になったStartupは、リンゴジュースを作ったリンゴの搾りかすからバイオ技術を使って擬似皮革を製造する技術を開発しているFlaura社。廃棄食材からバイオ技術を活用して繊維を製造する技術は少しずつブームの兆しを見せ、大手アパレルメーカーやスポーツブランドなどが廃棄食材から製造した繊維を使った洋服などを販売して話題になっている。日系の素材メーカーに聞いたところ、大量生産や強度に課題があるが、注目の技術であることは間違いないそうだ。

【写真3】廃棄食料から人工皮革を開発しているFlaura社

【写真3】廃棄食料から人工皮革を開発しているFlaura社
(出典: 筆者撮影)

(2) 5G - Zing 5G社 / LatenceTech社

 5Gで気になったStartupはSub 6に対応した5Gホームルーターを開発しているZing 5G社と通信プロトコルを含めた遅延を計測する技術を開発しているLateceTech社の2社。

 Zing 5G社のホームルーターはVerizon社のVerizon Homeのように宅内の無線環境を5Gにすることができる。Zing 5G社のCo-founder & CEOのPerry ChappellさんがZing 5Gのホームルーターの中を見せてくれた。中にはQualcomm社のSnapdragonと極薄のSub 6のアンテナが複数配置されていた。Sub 6のアンテナ付近のフレームは信号のパフォーマンスを最大化するために薄くなっている。Perryさんは、日本のIT企業、通信機器メーカーとのビジネス経験があり、日本市場への参入にも積極的だった。

【写真4】Zing5G社のSub6ベースの5Gホームルーター

【写真4】Zing5G社のSub6ベースの5Gホームルーター
(出典: 筆者撮影)

3-4. Startup Pitch

 Collision 2022では56社が6つのグループに分かれて初日に予選を行った。その中から13社がSemi-Finalに進み、さらに3社が最終日のGrand Finalに臨んだ。Finalistsの3社は、簡単に脳波を測定して精神疾患を簡単かつ早期に発見できるデバイスを開発しているDot Mind Unlocked社、2Dの写真や絵画を簡単に3Dに変換するツールを開発しているModu社、クレジットカードを家族や知人と簡単に共有できるモバイルアプリを提供しているXare社だ。

【写真5】Startup Pitch Semi-Finalists

【写真5】Startup Pitch Semi-Finalists
(出典: 筆者撮影)

 優勝したのはDot Mind Unlocked社。Dot Mind Unlocked社のCo-founder & CEOのYishel Khanさんによると、製品開発は順調に進み、次のステップとしてFDAなどから医療機器としての承認を得るための資金調達の機会を探しているそうだ。

 Finalistにはなれなかったが、ネイルの色をモバイルアプリを使って自由に変更できるデバイスとモバイルアプリを開発しているAIM Colours社のソリューションは他では見たことがなく、Nail愛用者からのニーズが高いと思った。

3-5. おわりに

 Collision 2022はリアルなイベントを待ち侘びていたイノベーター達で溢れていた。例年だと5月の中旬に開催されるのだが、新型コロナの影響でCollision 2022はSummer Vacation真っ只中の6月の後半に開催された。Toronto市内はそれほどもなかったが、空港は大混乱していた。新型コロナの影響によるクルー不足はCanadaも例外ではなく、チェックインカウンターは素人集団で発券に時間がかかり、パイロット不足でフライトの直前キャンセルが続出。荷物係も不足していて、Luggage Claimのベルトコンベーは荷物で溢れ、床に落ちたスーツケースもそのままというありさま。Toronto在住の日本人は「2年ぶりの日本への一時帰国を楽しみにしていたけれど、スーツケースを預けるとロストするので、キャリーオンだけで行く。」と話してくれた。私たちの生活における新型コロナの後遺症はまだまだ続きそうだ。

4. PNP Summit 2022

4-1. はじめに

 PNP社は4半期毎にSummitを開催している。今年は新型コロナの影響を最小化したリアル開催を目指し、Spring SummitとSummer Summitを併せての開催となった。そのため、通常であれば、3日間で6つのカテゴリーについてKeynote、Panel、Startup Pitchが行われるが、今回は17のカテゴリーについてKeynote、Panel、Startup Pitchが行われた。

 初日には49ersの黄金期を支えた伝説のWide ReceiverのJerry Riceさんが参加し、PNP Summitの注目度の高さがうかがえた。

4-2. Keynote

 PNP Summitで参加したKeynoteで興味を持ったテーマはEnergy、Sustainability、Food & Beverage。

(1) Energy

 EnergyのKeynoteはSiemens社のeMoblity Strategic PartnershipsのSVPのChris Kingさんが務めた。Chrisさんは、「投資家にとってCleanTechは注目の分野で、CleanTechへの投資は年々増加している。」と説明した。日本ではあまり積極的でない印象を受ける自然再生エネルギーは、世界では徐々に増え、2050年には2020年の倍になるという調査結果もある。

 EVの普及にはDER(Distributed Energy Resources、分散型発電)、Micro Gridが必要不可欠だが、信頼性、コスト、管理など、解決すべき課題があるそうだ。

 Greenな水素は、一般車だけでなく、トラックや飛行機での利用が見込まれているが、2050年でも普及率は30%以下にとどまるという。誰もが水素に期待していると思うが、普及までの道のりは遠い。Collision 2022の会場でDelta社の説明員と話をしたが、「Electric Aircraftの開発は検討しているが、飛行距離、コスト、安全性など、クリアしなければならない課題が山ほどある」と言っていた。

【写真6】Siemens社によるKeynote

【写真6】Siemens社によるKeynote
(出典: 筆者撮影)

(2) Sustainability

 SustainabilityのKeynoteではPNP社のSustainability ProgramのDanae Robertさんが、今回のテーマであるSustainability Trends、Carbon Neutrality、そしてEnding Plastic Waste Value Chainについて説明した。

 DanaeさんもSustainabilityへの投資が増えていて、投資会社だけでなく、CVCと呼ばれる企業の投資部門が、Climate Fundを立ち上げていると説明した。Danaeさんは、「今後は、業界に依存しない技術、建築、金融、交通などの業界で追跡機能を持ったClimate Techへの投資が進むであろう。」と今後の展望を説明した。

【写真7】PNP社によるKeynote

【写真7】PNP社によるKeynote
(出典: 筆者撮影)

(3) Food & Beverage

 Food & BeverageのKeynoteは、Food System Innovations社のCEOのDavid Meyerさんが務めた。Davidさんは20分の持ち時間で、食品業界の課題やFood Techのトレンドなどを余すことなく話してくれた。

 Davidさんは、代替え肉の一番の目的は世界的にスケールしない既存の複雑な食肉流通システムの改善と食糧不足の解消だという。カロリーの観点でいうと、鶏も牛も生産効率が非常に悪く、鳥インフルエンザや狂牛病などで多くの家畜が殺処分になったように、常にパンデミックリスクを抱えている。また酪農は家族経営が多く、重労働、高コストの割に利益が少なく、経営と継承いう観点でも課題を抱えている。

 移動に馬を使わなくなったように、インスリンに豚を使わなくなったように、食肉業界にもInnovationが必要で、今時点ではAlt-Proteinが最有力候補となっている。

 Davidさんは、「長い間の習慣をすぐに変えることはできないが、それでもリアルなミートからAlt-Meatへの"Change"が必要だ。」と言う。さらに、「Alt-Protein業界は新たな雇用を生み出すなど、社会貢献の側面があるため、ESG活動の一つと捉えて政府や企業が支援すべき」と訴えた。

【写真8】Food System Innovations社によるKeynote

【写真8】Food System Innovations社によるKeynote
(出典: 筆者撮影)

4-3. Startup Pitch

 今回は3日間で17のカテゴリーが開催されたため、各カテゴリーのStartup Pitchはいつもより数が少なかったように思う。期間中にStartupや投資家との打ち合わせがあったため、全てのStartup Pitchは見れなかったが、興味を持った4社を紹介する。

(1) AI - Truera社

 時代と共に生活スタイルや購買行動などは変化していく。それにも関わらず、いつまでも古いデータや古い学習モデルを使っていると、AIを使っても正しい分析はできない。Truera社は、AIモデルの適切性を評価するサービスを提供している。

(2) FinTech -  Wellthi社

 アメリカでの個人間送金といえば、VenmoなどSocial Paymentが人気だ。Venmoは新型コロナ前の2019年までは毎年加入者が倍増していた。Wellthi社は、革新的なサービスを提供したい銀行などの金融機関が簡単にVenmoのようなSocial Paymentサービスを提供できるようにするPlatformを提供している。

 銀行などの金融機関がWellthi社のPlatformを使う理由は、UXの向上による顧客の囲い込みと顧客の購買行動の把握になる。

(3) New Materials

(3-1) ALT TEX社

 食品ロスは世界的な問題だ。ALT TEX社は社名の通り、廃棄食料からバイオ技術を使って代替えポリエステルを製造する技術を開発している。ALT TEX社のCEOのMyra Arshadさんの説明では、同社はたった1kgの廃棄食料から1枚のTシャツを作ることができるそうだ。

 廃棄食材からバイオ技術を活用して新しい素材を作るというコンセプトは、Collision 2022のパートで紹介したリンゴの搾りかすからバイオ技術で擬似皮革を製造するFlaura社のコンセプトと同じだ。

 これまではプラスチック製品のリサイクルばかりに注目が集まっていたが、これからは食料もリサイクルする時代になるかもしれない。

【写真9】業界の課題とALT TEX社の技術と目指す世界

【写真9】業界の課題とALT TEX社の技術と目指す世界
(出典: 筆者撮影)

(3-2) Solutum社

 「世界の海には5つの大きなプラスチックアイランドがある。」という衝撃的なメッセージでSolutum社のCo-founder & CEOのSharon BarakさんのPitchは始まった。Solutum社は水に溶ける伸縮性がある素材を開発している。Solutum社の素材は単に水に溶けるだけでなく、水に溶ける時間を調整できることも特徴だ。3分しかないPitchでは、Solutum社が開発した素材で作った袋に水を入れて、すぐに水が漏れ出す様子を見せてくれたが、時間を置いて水に溶けるようにすることもできるそうだ。

 Sharonさんは企業連携の事例として、コロナビールを製造している飲料メーカーと提携してパッケージを固定するフィルムを開発したと報告した。私がパッと思いついたのは、空港でスーツケースをグルグル巻きにするフィルムだ。飛行機の昇降に伴い結露が発生するが、溶ける時間を調整できるのであれば、提供の可能性はあると思う。

【写真10】Solutum社が解決したい課題

【写真10】Solutum社が解決したい課題
(出典: 筆者撮影)

4-4. おわりに

 PNP Summitのリアル開催は2019年12月以来ということで、流れを思い出すのに多少時間がかかったが、参加しているうちに感覚を取り戻した。PNP社にとっても久しぶりのリアルイベントの運営なので、Operation Teamは土日返上で深夜まで準備に追われていた。いつもは中日に行われるパーティでOperation Teamは弾けるのだが、疲労困憊という感じで今回は不参加だった。

 リアルなイベントを楽しんだのは参加者だけでなく、KeynoteやPanelに登壇したSpeakerやStartup Pitch、デモ展示を行ったStartupも楽しんでいた。Avatour社のCEOのDevon Copleyさんも展示ブースで楽しそうに、参加者と話をしていた。

 秋にはFall Summitが行われるようなので、ぜひ日本から出張してSilicon ValleyのInnovationのシャワーを浴びてほしい。

【写真11】デモ会場で楽しそうに談笑するAvatour社のDevonさん

【写真11】デモ会場で楽しそうに談笑するAvatour社のDevonさん
(出典: 筆者撮影)

5. おわりに

本稿では6月に開催された注目のカンファレンスについて報告しました。2022年後半にも注目すべきカンファレンスが米国だけでなく世界各地でリアルに開催されます。8月には Berlin市でヨーロッパ最大のコンスーマーテックのIFA 2022が開催されます。また、スタートアップの祭典のSXSWも2023年3月にリアルで開催されます。コロナの影響でエアラインが大混乱していて、移動のことを考えると少し憂鬱になりますが、現地で皆さんと会えることを楽しみにしています。

 

本記事は、NTTコミュニケーションズ イノベーションセンターの小室智昭氏より寄稿いただいた原稿をそのまま掲出しています。

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