インターネット上のマッチングサービスを利用することによって、モノやサービスを個人間で貸し借りしたり、企業から借りたりするシェアリングサービスが拡大している。
シェアリングサービスは、個人が持つ遊休資産を活用できるという利点があるが、さらにピーク需要への柔軟な対応や人手不足の解消、社会的費用の削減といった利点もあり、人口減少・少子高齢化が進む日本において重要な役割を果たすことが期待される。
しかし、シェアリングサービスによって、実際にどの程度のモノ・サービスの取引が行われ、どの程度の市場規模となっているのかは分かっていなかった。
そこで、情報通信総合研究所では、以下の5つのカテゴリーを設定して、モノやサービスを提供する側と利用する側でどの程度の金額がやり取りされているのかを市場規模と捉えて計測した。

シェアリングサービスのカテゴリーと対象サービス
市場規模は2016年のアンケート調査結果を活用して算出しており、将来どの程度まで市場規模が拡大しそうかという潜在市場規模も合わせて算出した。
2016年の計測結果をみると、提供側が得ている収入は約1兆1,800億円、利用側が支出している金額は約4,400億円となった。収入が支出に比べて大きい要因についての詳述は割愛するが、その主要因は日本国内で実施したアンケート調査に基づいて計測した金額であるため、提供側には観光客等の一時滞在の外国人からの収入が含まれるのに対して支出側にはそれらの外国人の支出が含まれないことである。
また、将来のシェアリングサービスの利用意向を踏まえて、潜在市場規模を推計した結果、提供側が約2兆6,300億円、利用側が約1兆1,100億円となった。2016年の市場規模と比べると、提供側は2倍以上、利用側は3倍弱まで拡大するポテンシャルがあるといえる。
以上でみたように、シェアリングサービスの市場規模は大きいが、一方で、モノやサービスをシェアするようになると自分で所有する必要がなくなるため、既存のモノやサービスの市場規模が縮小することも考えられる。シェアリングサービスの拡大は経済全体の成長に貢献するのだろうか。それを評価するためには、GDP統計においてシェアリングサービスがどう扱われるべきかが問題になる。また、シェアリングサービスは、モノ・サービスの提供者と利用者の間の文化交流といった、そもそもGDP統計には含まれない(金額では評価できない)価値も生み出す。このような金額では評価できない価値も含めて、シェアリングサービスが人々の生活を豊かにするのかを考えてみることも必要だ。
本レポートの詳細版は、「InfoCom T&S World Trend Report」(https://www.icr.co.jp/wireless/WTR/index.html)2017年9月号(No.341)(8月末発行)に掲載予定ですので、ご興味のある方はご覧ください。
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