情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について、2025年10-12月期がまとまりましたのでご報告いたします。
【2025年10-12月期のポイント(前年同期比)】
2025年10-12月期のICT経済は、総合指標が前年同期比5.5%増と前期と同様のペースで成長を維持した。生成AIの普及によってデータセンター需要が拡大し、半導体生産が増加したことに加え、企業のDX投資を背景にICTサービスも堅調に推移したことが主因である。一方、半導体製造装置の生産は減少に転じ、ICT財生産の回復はばらつきがみられた。財・サービス別にみると、ICT財生産は前年同期比4.1%増と7期連続で増加し、7-9月期の同2.6%増から増加幅は1.5ポイント拡大した。ICTサービスは同5.9%増と21期連続でプラス成長を維持し、7-9月期の同6.3%増から0.4ポイント縮小した(図表1)。
供給サイドでは、ICT財生産の増加幅拡大の主因は集積回路の増産である。生成AIの普及によるデータセンター需要の拡大や、熊本のTSMC第1工場での量産開始が寄与したと考えられる。一方、電子計算機は法人向け需要が底堅いものの増加幅は縮小した。また、半導体・フラットパネル製造装置は半導体投資の調整局面を反映して減少に転じた。なお、ICT財の在庫の増加幅は前年同期比10.5%から同9.3%へ縮小した。集積回路は特に産業用機器や自動車に使われる混成集積回路の在庫の増加幅が拡大したものの、電子デバイスの減少幅が縮小した(主な要因はトランジスタ[1]の在庫の減少)。
ICTサービスは、通信業、インターネット付随サービス業の増加幅が縮小したもののソフトウェア業は増加幅が拡大し、21期連続で増加した 。背景には、省人化投資や生成AI関連サービスの拡大がある。さらに、行政デジタル化(マイナンバー、ガバメントクラウド)、インボイス制度・電子帳簿保存法等の法制度対応も下支えした。
需要サイドでは、ICT消費は7期連続で増加した。テレビゲームは新型機発売や年末商戦により伸びた一方、パソコンは、Windows 10のサポート終了による更新需要は一巡した。スマートフォンは、高価格帯モデルの構成比の上昇、円安による輸入端末の価格上昇を背景に増加が続いた。
ICT設備投資(民需)は前期の減少から増加に転じた。電気計算機等(半導体製造装置含む)は、電気機械製造業、金融・保険業向けが増加し、通信機(除携帯電話)は、通信業向けの回復等で増加した。生成AIの普及やDX投資の継続に加え、通信事業者のネットワーク投資が回復したことがあると考えられる。
ICT輸出は、金額ベースでは2期連続で増加した。半導体等電子部品は増加幅が拡大した一方、半導体等製造装置は減少幅が拡大した。数量ベースでは4期連続で減少している。ICT輸入は、金額ベースでは7期連続で増加し、通信機が押し上げ要因となった。輸出は、数量ベースでは減少が続いており、為替や単価上昇の影響が大きいと考えられる。
2026年以降のICT経済は、ICTサービスを中心に底堅い成長が続く可能性が高い。企業のDX投資に加え、生成AIの利活用拡大や政府のデジタル化推進政策により、ソフトウェア業や情報処理サービス業を中心にICTサービスは堅調に推移すると見込まれる。
政策面では、AI、半導体、次世代通信などの重点分野への投資促進や経済安全保障政策の強化が、ICT経済の下支え要因となる可能性がある。半導体の国内生産体制の強化はICT財生産の底上げにつながるとみられるほか、政府・自治体のデジタル化推進はICTサービス需要の拡大に寄与すると考えられる。さらに、重要デジタル基盤の安全性確保を重視する政策の進展は、データセンターや通信インフラへの投資を促進し、ICT設備投資の底堅さにつながる可能性がある。
一方、米国の関税政策の拡大や中国経済の減速、中東情勢の不安定化は下振れ要因となる可能性がある。
【2025年10-12月期の動向】
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比5.5%増と9期連続で増加し、前期(7-9月期)と同じ増加幅となった(図表1)。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比4.1%増と7期連続で増加し、前期(7-9月期)に比べて1.5ポイント拡大した(図表1)。
- 集積回路は増加幅が拡大したものの、電子計算機は増加幅が縮小し、半導体・フラットパネル製造装置は減少に転じた(図表3)。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比9.3%増となり、前期(7-9月期)に比べると増加幅が1.2ポイント縮小した(図表4)。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比5.9%増と21期連続で増加した。前期(7-9月期)に比べて0.4ポイント縮小した(図表1)。
- ソフトウェア業は増加幅が拡大し、通信業、インターネット付随サービス業は増加幅が縮小した(図表5)。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比5.3%増と7期連続で増加し、前期(7-9月期)に比べると0.1ポイント縮小した(図表1)。
- テレビゲームは増加幅が拡大したが、スマートフォン・携帯電話・PHSの本体価格、パソコンは増加幅が縮小した(図表6)。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比7.1%増と増加に転じた。前期(7-9月期)に比べて17.4ポイント拡大した(図表1)。
- 電気計算機等と通信機はいずれも増加に転じた(図表7)。
- 官公需は同15.3%増と4期連続で増加した。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比6.9%増と2期連続で増加した(図表1)。半導体等電子部品は増加幅が拡大し、半導体等製造装置は減少幅が拡大した(図表8)。数量ベースでは同2.9%減と4期連続で減少した。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比9.3%増と7期連続で増加した(図表1)。通信機は増加幅が拡大し、半導体等製造装置は増加に転じた。電算機類(含周辺機器)は増加幅が縮小した。数量ベースでは同4.1%増と5期連続で増加した(図表9)。
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【関連サイト】ICT経済分析
[1] トランジスタは電子部品の一種で、電流を制御するために使用される。電子機器やコンピューターに欠かせない部品。
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