2021年3月1日掲載 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

117回の掲載、ありがとうございました。


2009年4月に初投稿した「ICR View」画面

この「風見鶏」をお読み下さり誠にありがとうございます。本欄は2009年4月から「ICR View」と題して、2013年9月からは「風見鶏」として今回まで合計117回掲載して、その時々に思いつく身の回りに起こる事柄をICTに絡めて取り上げ、私の見方や考えを述べてきました。拙い文章に長年お付き合いを頂き申し訳なく存じております。昨年からのコロナ禍の中、体力・気力が低下するとともに、ステイホームが続いて身辺の話題の種も乏しくなりましたので、これが潮時と思い今月の掲載を持って最後とすることに致します。

思い返せば、2009年4月にICR Viewを初めて掲載する時に「直近のさまざまな動きを取り上げ、議論の種を提起する試みを続けたいと思っています。‐‐‐中略‐‐‐角度を変えた(臍曲りな)複眼的な視点での提起を心掛けて参ります。」と述べて、本欄の狙いを明らかにしています。初めの頃はICR Viewの名前のとおり、情報通信に関係するテーマを多く取り上げてきましたが、その後話題選定に苦労するのに従って身辺の出来事や私個人の嗜好や趣味に基づくものが多くなってしまいました。このことも終了する潮時と思い定めた理由です。情総研社長在職中に定めた経営理念と行動指針に“情報通信サービスの提供者・利用者両サイドから複眼的アプローチ”を取り入れたことを思い出します。

情総研はNTTグループのシンクタンク、リサーチャーの役割を担い、情報通信分野を中心に調査研究活動を行っています。事業活動ではそのほとんどが受託業務なので、視点はどうしても発注者側に傾くことになってしまい勝ちです。そこでシンクタンク、リサーチャーの役割を高め機能を発揮するためにユーザー(利用者)の目線を大切にしたいと思い、複眼的な視点を強調したものです。政治、経済、法律、制度、経営、技術動向など多面的な調査研究を行うにあたり、どうあれユーザー(利用者)の目線は避けられません。しかし実際に複数の目線、複眼的な視点を持つことはとても難しいことを思い知りました。今もその思いは変わっていません。

例えば最近の事例で言えば、リモートワークやリモート授業に適した通信サービスのあり方、料金の仕組み、プラットフォームの機能など通信キャリアの出番は多くなっていますし、5Gの普及拡大を進めるためにユーザー(利用者)の視点を強化する必要があると感じています。さらに、現在議論が続いている6GやIOWNなどもまだ開発者目線なので複眼点な見方を取り入れることが求められます。

通信キャリアの顧客接点はどうなるのか、いわゆるBtoBtoCでは最後のC、即ち直接の利用者の意向や動向を最初のBである通信サービス提供者やプラットフォーマーはどうやって取り入れるのかが課題となります。中間のBとなるサービス提供事業者に委ねることで済むのかどうか新しい課題です。新興のベンチャーとの付き合いや提携の重要性も、技術領域だけでなく顧客意向の把握・分析など複数の見方をもたらすことにあるし、人材の多様性にも繫がることにあります。特にサービス業ではそのユーザー(利用者)の過半は女性であり若者であることを強く意識しなければ複数の目線の重要性は分かりません。つまり、目線・視点の複数化には人材の多様性が伴って本物になると思い知った次第です。多様な人材によるハイブリッドこそ将来に備える近道です。情報通信の世界は今後ますます各種産業・サービスの根幹をなして行くことでしょう。国の政策にもデジタル化とグリーン化が大きく取り上げられ、またESGやSDGsが投資家や消費者の動向を左右する時代を迎えています。複眼的にものごとを捉える重要性はさらに高まっていきます。

最後に改めて、12年に渉り拙稿にお付き合い下さり本当にありがとうございました。読者の皆様の御発展と御健勝をお祈りして本掲載を終了致します。これまでの御厚情に感謝します。

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