2018年11月9日掲載 ITトレンド全般 ICR View

デジタル通貨を考える



消費税増税に合わせ、軽減税率の適用や商品券の配布、ポイント還元によるキャッシュレス決済の推進などの議論が始まっている。

一方で、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC : Central Bank Digital Currency)の導入に向けた検討も世界各国で進んでいる。日本銀行も欧州中央銀行と共同で「分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)と呼ばれる新しい情報技術に関する調査(プロジェクト・ステラ)」を実施している。

ただ、各国の検討はどちらかというとブロックチェーン技術に代表されるDLTの有効性や技術的評価が中心で、紙幣からCBDCへ切り替えることを前提とした検討をマイルストーンを置いて実施しているところはまだないようである。何のためにCBDCを導入するのかがはっきりしていないこともあるだろう。

単なる送金や決済であれば、既存のプラットフォームや仮想通貨を使っても実現可能であり、透明性の確保による資金洗浄防止、についても、CBDCを導入したからといって100%防ぐことはできない。通貨発行・管理コストの削減にしても、キャッシュレス決済がさらに広く普及すれば流通する紙幣そのものは減ることになる。

結局、今の通貨では実現できない、名目金利のゼロ制約をなくすことが一番のメリットに他ならないと考えるのだが、円のようなハードカレンシーがCBDCに置き換わった時、これまでの金融政策では想像もできないような影響を世界経済にもたらす可能性があり、慎重な検討が必要、という結論になってしまうのだろう。

量子コンピュータが使われるようになると、耐性のない仮想通貨(そもそも量子コンピュータ耐性の定義自体あいまいだが)は改ざんや窃取のリスクが出てくると言われている。実際、量子コンピュータではないが、今年の5月には計算能力が高いマイナーによりモナコイン(他のメジャーコインに比べるとノード数が少なく攻撃を受けやすい)が攻撃されてブロックチェーンが巻き戻され、これにより取引を消滅させて別のコインを詐取する被害が発生している。

戦後の日本で発行された紙幣は、デザインが変わるまでおおむね20年以上使われてきている。しかし、CBDCに代わると、DLTも暗号技術をベースとしていることもあり、こうした技術の進歩に対抗するセキュリティの確保のため、常にシステムをアップグレードする必要がある。結局、意外と紙幣が一番安全だったりするのかも知れない。

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