2018年9月27日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:南十字星の輝く日本の南国リゾート、小浜島



本コーナーでは、出張や旅行で訪れた海外の都市についてのレポートがほとんどだが、たまには国内の旅先を扱ってみてはどうかということで、今回は筆者が夏季休暇に滞在した小浜島について紹介したいと思う。

筆者がこの「世界の街角から」のコーナーを担当するのは4年ぶりだ。前回は家族旅行で行ったケアンズ(豪州)についてレポートした。そこでも記したのだが、数ある海外旅行先の中からケアンズを選んだのは、当時3歳と1歳の幼い子ども連れという事情があったからだ。より具体的に言えば、時差についての懸念があった。ケアンズは日本よりも僅かに1時間早いだけで、子どもたちへの負担が少ないと考えた。あれから4年経って、彼らもそれぞれ7歳と5歳に成長したとは言え、まだまだ大人と同じような体力はない。そのようなことも考慮し、時差がなく、子どもたちが夏休みを満喫できる候補地を探しているうちに小浜島に行き着いたというわけだ。

小浜島を選んだ理由は、実はもう一つある。それは、卒業以来1度も再会できていなかった大学時代の友人の存在だ。小浜島に行くには、すぐ東にある石垣島を経由する必要がある。すなわち、東京からはまず空路で石垣島に入り、そこからフェリーに乗り換え、海路で小浜島に向かうことになる。友人はその経由地となる石垣島に住んでおり、行き帰りのタイミングで落ち合う約束を交わした。

【図1】石垣島と小浜島 (出典:Google Maps)

【図1】石垣島と小浜島
(出典:Google Maps)

日本のほぼ最南端かつ最西端

日本の最南端が沖ノ鳥島、最西端が与那国島というのはよく知られている。国土地理院によれば、最南端の緯度は20.25度、最西端の経度は122.56度となっている。では、小浜島の緯度・経度はどれくらいだろうか。Wikipediaによれば、北緯24.20度、東経123.58度とある。これらのデータから分かるとおり、小浜島は日本のほぼ最南端かつ最西端だ。

次は地図上で小浜島の位置を確認してみよう。すると、東京からは遠く離れていることが一目瞭然だ。同じ沖縄県の県庁所在地である那覇でさえかなりの距離があり、むしろ外国である台湾・台北の方が遥かに近い。これだけの距離があれば、海外に出ずとも何かと忙しない日常を忘れるには十分過ぎるだろう。

石垣島や小浜島を含む八重山諸島の位置

【図2】石垣島や小浜島を含む八重山諸島の位置
(出典:Google Maps)

とは言え、小浜島は亜熱帯気候だ。筆者が小浜島に滞在していたのは1年の中でも最も暑い8月上~中旬で、例年を超える猛暑が続いた東京と比べると気温こそやや低かったものの、日差しは相当に強烈だった。この日差しと、島の周辺に広がるエメラルドグリーンの海が南に来たことを感じさせる。一方、西にいることを実感できるのはサンセットだ。日本のほぼ最西端であることから、8月の日の入りは19時半前後になる。ただでさえ夏の間は日中の時間が長いが、小浜島ではさらに長くなる。そのため、すぐ西にある西表島に隠れるように沈んでいく夕陽を、ゆっくりとディナーを楽しみながら眺めることができる。

対岸に望む西表島(小浜島)

【写真1】対岸に望む西表島(小浜島)
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)

天然のプラネタリウム

突然だが、ここで簡単なクイズを出してみたい。沖縄方言で東西南北を何と言うだろうか。持っている知識をフル活用して考えれば、西と南は分かるかもしれない。特に西については、ヒントとなる地名が本稿内に既に出ている。

答えは「あがり・いり・はい(ふぇー)・にし」だ。「あがり」と「いり」は太陽の運行をもとにした方角の呼称で、太陽の昇る東が「あがり」、沈む西が「いり」というわけだ。西表島の「西」を「いり」と読むのはここから来ているという。「はい(ふぇー)」については、南風を沖縄方言では「ぱいかじ(ふぇーかじ)」と読むことから想像できるだろう。最後の「にし」は「西」と混同しそうで紛らわしい上に、なぜ沖縄方言で北が「にし」と言われているかについては諸説ある。一説によれば、昔、中国大陸の人々が来た方角を指して「にし」と言っていたことに由来するという。確かに地図で見ると、洛陽や長安は、京都からすると西にあるが、緯度の低い小浜島が属する八重山諸島からは北西に位置している。「あがり」と「いり」が共に太陽の運行をもとにした方角の呼称であることを考えると、当時の人々が「にし」を北のことだと解釈したのには一定の合理性があるように思う。

ところで、筆者が今回宿泊したのは「はいむるぶし」というリゾートホテルだ。方角に関する沖縄方言の知識を持つと、この「はいむるぶし」が何を意味するのかが分かってくる。先述のとおり、「はい」は南だ。「むる」は群、「ぶし」は星をそれぞれ意味する。これらを組み合わせると、南群星という語になる。これはより具体的には、南十字星のことを指している。

「はいむるぶし」のプライベートビーチ(小浜島)

【写真2】「はいむるぶし」のプライベートビーチ(小浜島)

筆者が小浜島で子どもたちに見せたかったものとして、遠浅でどこまでも続いているかのような珊瑚礁の海に加えて、南天の夜空がある。美しい満天の星空が見られる場所としてはニュージーランドのテカポが有名で、International Dark-Sky Association(IDA:国際ダークスカイ協会)によって「星空保護区」として認定されている。実は、小浜島も2018年4月に日本で初めてその「星空保護区」に認定されたばかりだ。厳密に言えば、石垣島北部地域と竹富町全域に跨る西表石垣国立公園が「星空保護区」となっている(小浜島は行政区分上、竹富町に属している)。

専用の撮影機材を持って行ったわけではないので、写真で伝えることができないのが残念だが、小浜島のビーチに寝そべって眺める星空は圧巻の一言だった。まさに天然のプラネタリウムといった感じで、周囲に大きな街の明かりもなく、雲もほとんどなかったため、ほぼ最高の観測条件が揃ってい

た。日没直後には惑星の存在感が際立つ。西の空に金星が、南西の空に木星と土星が、東の空には火星がそれぞれ固有の色の輝きを主張していた。20~21時頃には、夏の代表的な星座であるさそり座が南の空にくっきりと見え、ベガ(織姫星)、アルタイル(彦星)、デネブで構成される夏の大三角も頭上の高い位置に見ることができた。この星空をより美しく見るために、より明かりの少なくなる新月のタイミングをわざわざ狙ってやってくる旅行客も多いそうだ。

また、幸運なことに、ペルセウス座流星群の見頃にも恵まれ、いくつもの流れ星を発見できた。家族全員が星にそれぞれの願いをかけ、海面を伝って顔を撫でる涼やかな夜風に吹かれながら、天体ショーの余韻に浸ることができた。仕事を終えた後の東京の夜空ではまず見られない(そもそも落ち着いて天体観測をしようという精神的余裕もない)光景で、それだけでも小浜島を訪れる価値は大いにあると感じた。

ちなみに、オチというわけではないが、今回「はいむるぶし」を見ることは叶わなかった。ホテルに「はいむるぶし」という名称を付けるほどだから、当然、小浜島から南十字星を見ることはできる。しかし、問題は時期だった。観測に適しているのは1~5月だそうで、夏から秋にかけては地平線の上に姿を現さない。

日本一遅い日没と宵の明星(小浜島)

【写真3】日本一遅い日没と宵の明星(小浜島)

早朝ランニングで島を半周、のはずが……

日中は、他の多数の旅行客がそうしているように、筆者家族も海でのシュノーケリングやプール遊び、野外BBQなどで思いっきり楽しんだ。個人的に楽しみにしていたのは、早朝ランニングだ。小浜島は日本のほぼ最西端であることから日の出が遅く、それほど大きな島ではないため徒歩でも半周する程度のことは簡単にできる。そういうわけで、前日に遊び疲れて寝静まっている家族をよそに、筆者だけがいそいそと起き出し、ウェアとシューズを身に着けてランニングに出掛けた。5時半頃のことだ。

夜明け直前特有の薄明の中、気持ちよく走り出した。信号は一切なく、人も車も通っていない。道のところどころで白ヤギがこちらに怪訝そうな視線を送っているくらいだ。背の高いさとうきびが道路の両端に広がる通称「シュガーロード」を抜けると、NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」の舞台となった「こはぐら荘」がある集落に到着する。この後は標高100メートルほどの大岳(「うふだき」と読む)に登り、360度パノラマが広がる絶景ポイントから朝日を拝む予定だった。しかし、そこはやはり南国。暗雲が垂れ込んだと思ったら、一気に激しいスコールに見舞われた。仕方なく大岳は諦め、民家や石垣牛を飼育している厩舎の軒先、葉の生い茂っている大きな樹の下でやり過ごしながら、雨と汗にまみれてホテルの部屋に戻った。滞在中、基本的に雨に降られることはなかったにもかかわらず、なぜか早朝ランニングのときだけスコールに遭遇するあたりは運がない。

スコールが上がった後の朝日(小浜島)

【写真4】スコールが上がった後の朝日(小浜島)

観光人気が上昇中の石垣島

友人夫妻に案内してもらった石垣島についてもレポートしておきたい。石垣島での滞在時間は到着日と出発日の合計僅か5~6時間ほどだったが、友人夫妻の素晴らしいガイドぶりのおかげで効率的に楽しむことができた。

近年、石垣島への観光客は増加傾向にあり、それに伴って現地の観光業も活気付いているとのこと。というのは、2013年3月に新石垣空港が島の東側に開港し(島の南側にあった旧石垣空港は廃止)、長い滑走路ができたことでより大型の航空機が離着陸可能になったからだ。さらに、東京や大阪などからの直行便も就航するようになったため、観光客の石垣島への心理的な距離も一気に縮まった。台湾からの観光客も増えているとのこと。彼我の距離は僅か277キロメートルであり、互いにとって最も近い外国というわけだ。ちなみに新石垣空港の愛称は「南ぬ島石垣空港」という。本稿をここまで読み進めていれば、「南ぬ島」は正しく読めるはずだ。そう、「ぱいぬしま」だ。

市街地は旧石垣空港に近い島の南側にあり、そこに小浜島を含む八重山諸島に向かうフェリーが出入りする離島ターミナルもある。主なリゾートホテルも市街地にあり、逆に新石垣空港の周辺にはほとんど観光施設が見当たらない。幹線道路も国道390号線が1本あるのみで、友人曰く、今後は新石垣空港の周辺の観光開発が急速に進んでいくだろうとのことだった。

石垣島は正方形に近い形をしており、その北東の端から細長い半島が突き出ている。友人宅に立ち寄った後、そこから車で10分ほどの玉取崎展望台に案内してもらった。ここは非常に見晴らしが良く、周囲の海や北に伸びる平久保半島を一望できるポイントだ。玉取崎という地名に関しては、友人の話では付近で多くの人が「魂を取られた」ことに由来するということだったが、あるブログでは単に昔から真珠の養殖が盛んだったからだと説明されている。どちらが正しい説なのか、筆者には全く見当もつかない。ただし、石垣島で真珠の養殖が行われているのは事実で、そのエリアにも立ち寄った。また、平久保半島のくびれている部分は200メートル程度の幅しかないそうで、船越という地名が付いている。読者のご想像のとおりかもしれないが、東側の海での漁が不調のときには船を担いで西側の海に出るといったように、両岸の往来が容易だったということのようだ。

玉取崎展望台付近からの眺望(石垣島)

【写真5】玉取崎展望台付近からの眺望(石垣島)

その他、友人の知り合いの店を巡り、八重山そば、アイスクリーム、パイナップルジュースなどをご馳走になり、石垣島グルメを堪能した。最後は友人夫妻に見送られ、帰りの便に乗り込んだ。友人夫妻をはじめ、小浜島と石垣島で出会った人々の温かさに感謝しつつ、石垣島を後にした。

なお、今回は最終目的地が小浜島だったためチャレンジできなかったが、石垣島を拠点にすれば、周辺の八重山諸島にも簡単に足を延ばすことができる。石垣島からフェリーで、西表島へは約40分、有人島として日本最南端の波照間島へは約60分、水牛車で有名な竹富島へは約10分で行ける。西表島以外は小さい島であるため、半日~1日で一通りの島内観光ができてしまう。再訪の際にはぜひトライしてみたい観光コースだ。

真珠の養殖場(石垣島)

【写真6】真珠の養殖場(石垣島)

国内線は無料化された機内Wi-Fi

取って付けたような形で恐縮だが、最後に今回の旅行中に利用したICTについても触れておく。今回、小浜島に行くにあたっては、東京からまず空路で石垣島に向かったことは既に述べた。フライト時間は3時間弱であるため、機内の過ごし方としては、映画が好きな人なら1本を観るのにちょうど良い。しかし、筆者はスマートフォンを使って滞在中のプランをあれこれ考えていた。というのも、機内Wi-Fiが無料で利用できたからだ。今回搭乗したのはANAで、2018年4月1日から国内線の機内Wi-Fiについては無料で提供されるようになっていた。競合であるJALが先駆けて機内Wi-Fiの無料化に踏み切っていたため、対抗する必要があったのだろうと思われる。

おかげで、旅行の前日までろくにプランを練れていなかった筆者だったが、フライトの間に大体の当たりを付けることができた。加えて、空港で出迎えてくれる友人ともタイムリーに連絡を取り合うことができた。

機内Wi-Fiは地上からの電波を人工衛星経由で航空機が受けることで実現されているわけだが、ANAの国内線ではパナソニックの米国子会社であるPanasonic Avionics Corporationの“eXconnect”というソリューションを採用することでこの仕組みが実現されている。JALも国際線では、この“eXconnect”を利用している。

このように、機内Wi-Fiの無料化が当たり前になってきた国内線ではあるが、国際線ではなかなか難しいようだ。ANAは2018年6月からファーストクラスを対象に無料化しているが、これを除けば両社とも国際線の機内Wi-Fiは基本的に有料のままだ。とは言え、世界中の航空各社はフライトが長くなりがちな国際線の機内エクスペリエンスの向上を大きな経営課題だと認識していると考えられるため、機内Wi-Fiを気軽に利用できるようになる日もそう遠くはないのかもしれない。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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