2019年7月12日掲載 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

ますます家庭にも浸透するフードデリバリー



2022年、フードデリバリー率は11%へ!?

先日米国Morgan Stanley社より、フードデリバリーに関する興味深いレポートが発表された。「(世界で)2022年までにフードデリバリー率が11%まで拡大する」と予測するものだ。フードデリバリー率とは、外食産業の取引金額に対するフードデリバリー取引金額の割合のことと推測される。例えば、EC(電子商取引)率でいうと2016年が11%にあたり、2016年当時、既にECが当たり前に利用されていたことを思い返してみると、11%という数値がどれほど一般家庭に普及している数字なのかがイメージし易いかと思う。つまりフードデリバリーは、今後数年で私達の生活にかなり浸透していくと予想されているのだ。

実際、フードデリバリー市場については、2023年には、2018年のおよそ1.5倍の1,452億8,200万米ドルまで拡大すると予想されている(図1)。図1のグラフの構成要素を見ると、“出前”(グラフでは、「Restaurant-to-Consumer Delivery」)の引き続き大きな成長と共に、それ以上の成長率で拡大をするフードデリバリープラットフォーム(グラフでは、「Platform-to-Consumer Delivery」)も、このフードデリバリー市場を牽引している様子が分かる。本稿では、特に急拡大を続けている“フードデリバリープラットフォーム”に注目をして、現状と今後についてお伝えしたい。

フードデリバリー市場のマーケット予測

【図1】フードデリバリー市場のマーケット予測(単位:百万 米ドル)
(出典:Morgan Stanley)

フードデリバリープラットフォームとは

江戸時代が発祥で300年以上の歴史があるといわれる「出前」と、現在急速にその存在感を高めている「フードデリバリープラットフォーム」はどのような違いがあるのだろうか。以下の表1、図2に両者の違い、およびその代表的なビジネスモデルをまとめてみた。

出前とフードデリバリープラットフォームの整理

【表1】出前とフードデリバリープラットフォームの整理
(出典:情総研にて作成)

フードデリバリープラットフォームのビジネスモデル

【図2】フードデリバリープラットフォームのビジネスモデル
(出典:情総研にて作成)

このように、フードデリバリープラットフォームは、従来の「出前」の料理を除く“注文受付-配達-集金”をトータルでサポートすることにより、今まで出前に対応できなかった飲食店にも“デリバリー“という新しい販路を獲得する手段を提供している。

一方、注文者(利用者)としては、“欲しいものを注文して受け取る”というサービス体験は馴染みのある「出前」と大きく変わらないが、実はその“配達側の仕組み”には、今のICT環境だからこそできる技術が多く利用されている。以下では、フードデリバリープラットフォームの代表的企業「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を例に、その配送側の仕組みや特徴を取り上げてみたい。

  • AIの利用:注文(オーダー)管理センターからの配送指示(オーダー)は、配達員の位置把握、配達実績、利用者からの評価等、様々な指標をもとに、各配達員へ割り当てられる。
  • ダイナミックプライシングの活用:悪天候や依頼が殺到する時間帯・地域などでは、配達員が手にできる賃金に、適宜ボーナスフィーが設定される。
  •  評価制度によるクオリティ管理:オーダー受付から配送までの時間、利用者からのフィードバック、オーダー拒否率など、様々な指標で配達員は評価される。
  • GPSデータの共有:配達員の位置はGPS情報にて、管理センター、注文者に共有される。
  • 決済機能:アプリで決済を行うため、商品の配達時に金銭の授受の必要がない。

もちろんすべてのフードデリバリーサービスプラットフォームが、同様の機能を備えているわけではないが、AIやIT、そしてスマホ/GPSなどのデバイスを使うことで実現する、実はとてもハイテクなサービスであると言える。 

出前館、Uber Eatsなど、日本にも事業者が続々参入

外食・中食市場について調査分析を行っているエヌピーディー・ジャパン株式会社の調査によると、日本のレストラン業態(小売店、自販機、社員食堂、学生食堂を除く、宅配ピザを含む)にお
ける出前市場は、2018年(1~12月計)で4,084億円、対前年比5.9%増と発表されている(図3)。
フードデリバリープラットフォームサービスを提供する代表的なプレーヤーには、「出前館」、「Uber Eats」、「ファインダイン」、「楽天デリバリー」等が挙げられる(dデリバリー、LINEデリマは、出前館のプラットフォームサービスを利用していることから、省略)。

国内出前市場規模推移

【図3】国内出前市場規模推移(億円)
(出典:NPD Japan, エヌピーディー・ジャパン調べ)

このサービス、表向きのサービスがシンプルなだけに、各社ともそれぞれの配送の仕組み強化に工夫を凝らしている。例えば出前館は、自社の配達員のみならず朝日新聞との提携で、新聞配達員を巻き込んだデリバリーシステムを全国に展開しているし、Uber Eatsは、親会社の米国Uberの配車事業のノウハウと先進的システムをデリバリーに応用して、個人事業主の配達員によるシェアリングデリバリーを行っている。またファインダインは、自社の既存事業である「銀のさら」のデリバリーネットワークを利活用、楽天デリバリーは、親会社「楽天」の配送ネットワークやノウハウを生かしてビジネスを展開しているようだ。

フードデリバリープラットフォームの特徴とは

では、実際に注文する場合においては、どのような特徴があるのだろうか。表2のとおり、全国的にチェーン展開を行っている飲食店の主力商品を例に、フードデリバリープラットフォーム上での価格等を整理し、その特徴を考えてみた。

店頭定価とデリバリープラットフォームでの料金調査

【表2】店頭定価とデリバリープラットフォームでの料金調査(地域:東京都中央区)
(出典:各社のHPから情総研にて作成)

まず1点目は、商品価格は店頭価格よりかなり高額なことだ。吉野家の牛丼を例とすると、店頭定価は380円(税込)であるが、Uber Eats、出前館共に商品の値段は570円(税込)と約1.5倍に設定されている。これとは別に、配送料金が設定されている場合もあるため、外食と比較すると一定のハードルがあるように感じる(今回調査した中で、ケンタッキーフライドチキン(KFC)については、店頭金額との差額がなかった。これはKFC自体が、“お届けケンタッキー”(配送料300円)という自社のデリバリーサービスを行っているため、商品の価格を調整したものと考えられる)。

2点目は、各飲食店は複数のフードデリバリープラットフォームと連携をしていることだ。ここから、デリバリーサービス自体のオペレーションには表向き大きな違いがないことが想定される。現在、飲食店側にとってのデリバリーは、今後の可能性を探るためのマーケティング的要素を含んだ取り組みの段階ではないか、ということが推測される。

デリバリー先進国の一つ、米国の状況とは

米国では、Grubhub(グラブハブ)、DoorDash(ドアダッシュ)、Postmates(ポストメイツ)、Uber Eatsが4大デリバリーサービスと呼ばれている。これら4社は創業から数年のスタートアップ企業でありながら、GrubhubとUber(Uber Eatsを運営)は既にニューヨーク証券取引所に上場。Postmatesは近く上場を控えており(2019年5月現在)、DoorDashも来年には上場すると言われているなど、企業規模、業績見通し共に市場からも一目置かれる企業となっている。昨今、市場を1社、2社で独占する産業が多い中で、このように未だ多くの企業が存続し、さらに拡大を続けられる状況にあるということは、つまりそれらを吸収できる巨大な市場が存在することに他ならず、フードデリバリーサービスのポテンシャルの大きさを証明していると言えそうだ。

それらサービスは、配送拠点を増やしたり、業態を広げたり、独自の機能・サービスをリリースしたりと、次のステージに向けた変化を次々と行っている。例えば、DoorDashは、全米最大のスーパーであるWalmart(ウォルマート)との連携を既に実施しており、今後その対象を他のリテール店舗にも拡大する計画としているし、Postmatesは、2019年に入って近所に住む客の注文に相乗り配送を依頼することでデリバリー料金を無料にできる”Postmates Party”という機能をリリースして、新たな顧客層獲得に取り組んでいる。

またその他に、米国Google(グーグル)は、2019年5月よりGoogleのウェブ検索結果やGoogleマップ上に“Order Online”(オーダーオンライン)というリンクを掲載し、シームレスにデリバリー注文ができる連携サービスをスタートしている。オーダー時にはGoogleのアカウントが利用でき、Google Pay(決済)、Googleアシスタントとの連携も実現している※(図4)。

Google検索からのデリバリー注文画面

【図4】Google検索からのデリバリー注文画面
(出典:Google(米国)のプレスリリースより)

日本の食卓を支える便利なサービスへ

令和元年10月1日、消費税が10%に上昇すると言われており(2019年5月末現在)、そのタイミングと同じくして、日本で初めてとなる「軽減税率」が導入される。軽減税率とは「酒類や外食を除く食品全般の税金が現在の8%に据え置かれる制度で、同じ食べ物でも購入の方法や食べる場所によって税率が設定される」というものだが、フードデリバリーについては、その軽減税率適用対象となるため、フードデリバリー市場拡大に期待がかかっている。一方課題はというと、現在日本国内で慢性的におこっている人手不足問題が、特に配送においてネックになってくると 予想されることだ。こちらについては、各社の取り組みを超えて、他の配送システム(宅配便等各種配送サービス)ともうまく連携するなどの対策が必要となりそうだ。

現在日本は、女性の社会進出に伴う家事軽減、外出困難な高齢世帯の増加など、様々な課題を抱えているが、フードデリバリープラットフォームがその一つの受け皿となり、さらなる発展を遂げるよう、今後とも注目していきたい。

※連携されているデリバリーサービスは、DoorDashやPostmatesなどGoogleが別途契約している複数のデリバリーサービス

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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