ICT雑感:クッキーの行方
日本では、Go To~キャンペーンもいくつか始まり、コロナ禍以前の生活を少しずつ取り戻してきているようだ。週末の街の人出も、ほぼ全員マスクを付けているという違いはあるものの、随分と増えてきたように思う。観光客と思しき外国人の姿はほとんど見かけることはなくなってしまったが。一方、欧米では再び感染が拡大して夜間外出禁止になったりしているらしい。早くワクチンなり特効薬なりができて欲しいものである。
働き方も大きく変わった。朝夕の通勤電車に乗ると、以前ほど混んでいることもなく、まだ在宅勤務している人がそれなりにいることを痛感する。在宅勤務の良さはなんといっても通勤による時間と体力のロスがないということなのだが、筆者にとっては困ることもある。その一つがつまみ食いだ。家で仕事をしていてちょっと小腹が空くと、家人が買い置きしていた甘いものについつい手が出てしまう。そして、通勤で歩くこともないので、ダイレクトに腹回りに効いてくる。バターがたんまり入ったクッキーなどが置いてあったりすると、手が止まらなくなってしまう。
そういえば、先日、クッキーとビスケットは何が違うか、というクイズをテレビでやっていた。元来両者は同じ物らしい。ただ、日本では“ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則”において、クッキーとは、「ビスケットのうち『手づくり風』の外観を有し、糖分及び脂肪分の合計が重量百分比で40パーセント以上のもので、嗜好に応じ、卵製品、乳製品、ナッツ、乾果、蜂蜜等により製品の特徴付けを行って風味よく焼きあげたもの」と細かく決められている(英国では両方ビスケットで、米国では両方クッキー、と呼ばれる)。世の中には知らないことが多いものだ。
クッキーと言えば、インターネットの世界でも「クッキー」という名前を聞くことがあるかと思う。インターネットで使われているクッキーは、正式にはHTTP Cookieという名前で、由来は(コンピュータの世界で使われる)マジッククッキーとか、フォーチュンクッキーとか、諸説あるようだが、真相はよくわからない。その正体はテキストファイルで、端末(正確にはブラウザだが)を識別したり情報を保存して、ウェブサイトでログインをしたり、ネットショッピングでカートに商品を追加したりする時などに使われている仕組みである。
このクッキー、インターネットを便利に使うためには重要な役割を果たしているのだが、個人情報保護の観点から、ある種類のクッキーをなくそう、という動きがある。サードパーティクッキーと呼ばれるものである。ネットで何かを買おうとショッピングサイトなどで品物を検索した後、全く関係ないサイトを開くと、そこのバナー広告に以前検索した商品ばかりが表示されていた、というような経験をされたことはないだろうか。ここで使われているのがサードパーティクッキーである。
オンライン広告の世界では、こうしたターゲティング広告は当たり前になっているのだが、個人情報保護の流れの中で、今年の1月にブラウザのシェアトップであるGoogle Chromeが、サードパーティクッキーのサポートを段階的に止めていく、と発表したことが話題となった。そうなると、オンライン広告のスキームも変わることになるだろう。情報銀行とか、信用スコアといったような、個人が能動的に情報を提供して適切な広告を受け取る、という仕組みがさらに進むことになるかも知れない。
ネットでの自分の行動を見られているようでいやだ、とか、ブラウザを開くと、既に変な(?)バナー広告ばかり表示されて困っている、という方、ご安心を。今でもブラウザの設定を変えればサードパーティクッキーをブロックすることは可能で、シークレットウィンドウとか、プライベートウィンドウと呼ばれているモードにすれば、ブラウザを終了するとすべてのクッキーが消去される。
ここまで書いて、またクッキーをつまんでしまった。こればかりは設定を変えて食べたクッキーを消去するということもできない。クッキーを止めて、せめてビスケットにしないとズボンがはけなくなりそうだ。
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