2024.11.27 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:日本の最西端に位置する与那国島

【図1】与那国島の位置 (出典:与那国町 https://www.town.yonaguni.okinawa.jp/docs/2018042500011/about.html)

本誌のこのコーナーでは、筆者が出張で訪れた日本国内の離島の紹介を幾度かさせてもらっているが、今回の出張島巡りは、沖縄県八重山諸島の一部として台湾に最も近い日本最西端の島、与那国島である[1]。東京から1,900km、沖縄本島から南西に約500kmの位置にあり、人口はおよそ1,700人と小さな島だが、地理的、文化的にも魅力にあふれており、手つかずの自然も多く、多くの観光客に人気がある。

日本の最西端に位置する島

与那国島は沖縄県八重山諸島に属し、面積は約29㎢と山手線内側の半分ほどの大きさで、島の周囲は約28kmである。車だと1周1時間、起伏があるが自転車でも3〜4時間ほどで一周できる島である。

与那国島へのアクセスは、プロペラ機による定期便とフェリーの運航が基本となる。プロペラ機は石垣島から1日2~3便(片道所要時間約30分)、沖縄本島(那覇空港)からは1日2便(同約1時間30分)運航している。フェリーの運航は石垣島から週2便の往復(同4時間)となる。フェリーについては、天候に左右される移動手段のため、スケジュールに余裕があるほうが望ましい。

今回は石垣島から空路で与那国空港に降り立った。空港から宿舎までの移動にはレンタカーを利用した(写真1~3)。

【写真1、2、3】与那国空港

【写真1、2、3】与那国空港
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)

与那国島の神秘的な自然

与那国島は亜熱帯気候に属し、暖かくて湿潤な気候(年間平均気温は約24度)が特徴である。島の周囲はサンゴ礁と岸壁にて構成されており、透明度の高い美しい海は「与那国ブルー」とも称され、ダイバーたちの人気のスポットとなっている。

【図2】与那国島の地図

【図2】与那国島の地図
(出典:与那国町 https://www.town.yonaguni.okinawa.jp/docs/2018042500011/about.html)

与那国島は大きく分けて「祖納(そない)」、「比川(ひがわ)」、「久部良(くぶら)」という3つの地区から構成されている。これらの地区には独自の自然環境や文化が根付いており、それぞれについて紹介していく。

最初に「祖納(そない)」地区にある景観の中でも特に目を引くのが、「ティンダバナ」と「立神岩(たちがみいわ[2])」である。

ティンダバナは、隆起した珊瑚で形成された自然の岩山であり、珊瑚が化石化するほどの長い年月をかけて作られたとされている。その岩肌は独特な形状をしている(写真4~6)。

【写真4、5、6】ティンダバナの岩肌

【写真4、5、6】ティンダバナの岩肌

【写真7】立神岩(展望台から

【写真7】立神岩(展望台から

次にティンダバナから南側の海岸に向かうと「立神岩」が見えてくる。波による浸食で形成された高さ約30メートルの巨大な岩である。神聖視されており、与那国島のシンボル的な存在だ(写真7~9)。

さらに海岸沿いを走ると「与那国島海底地形(海底遺跡)」がある。この海底地形は海中、海底に階段状の巨大な岩や直線的に切り立つ岩が神殿の構造物のように並んでおり、人工的に造られた過去の文明が残した遺跡であるとしたらロマンをかき立てるが、実際は自然現象である可能性が高いとされている[3]。今回、海中探索はできなかったが、海の透明度も高く、はっきりと構造物を観察することができるため、ダイビングや観光船での水中探索を楽しめるポイントである。

 

【写真8、9】立神岩

【写真8】立神岩

【写真8、9】立神岩

【写真9】立神岩

撮影地と半野生の与那国馬

さらに海岸線を西へ向かい「比川(ひがわ)」地区に入ると、テレビドラマ『Dr.コトー診療所』のセットが見えてくる。撮影地となった比川地区の海岸には、セットがそのままの形で残されており、観光スポットとなっている(写真10~13)。

【写真10、11、12、13】ドラマ『Dr.コトー診療所』のセット

【写真10、11、12、13】ドラマ『Dr.コトー診療所』のセット

比川地区を抜けてさらに西の「久部良(くぶら)」地区へ向かうと、今度は野生の馬である与那国馬(よなぐにうま)が突然現れた。海岸沿いの斜面などにも与那国馬の姿があり、草を食んでいる姿には驚いた(写真14)。

【写真14】斜面にいる与那国馬

【写真14】斜面にいる与那国馬

与那国馬は体高約120〜130㎝の体格で穏やかな性格の小型馬であり、観光慣れしている馬ともいえるが、人間が近づいても怖がらずなついてくる。なお、沖縄県の天然記念物に指定されており、保護活動の対象となっている(写真15~19)。

【写真15~19】与那国馬(たまに牛もいる)

【写真15~19】与那国馬(たまに牛もいる)

与那国馬の保護活動として興味深いのが、「テキサスゲート」を活用した半野生環境での保護である。テキサスゲート(Texas Gate)(写真20、21)は、その名前のとおり米国テキサス州で広く使用されていたことが由来とされている。一般的には、放牧の際に家畜が逃げたりしないようフェンスで囲うことが想定されるが、人や車両が頻繁に通行する場所では毎回フェンスの開閉に手間がかかる。テキサスゲートは、地面や道路に格子状の鉄柵を設置したもので、家畜はその上を歩くと脚が格子の隙間に落ちてしまう可能性があるため恐れて渡らないが、人や車両はその上を問題なく通行できる仕組みになっている。

【写真20,21】テキサスゲート   

【写真20,21】テキサスゲート

与那国島にはこのテキサスゲートが至るところにあり、この装置を使うことで土地を広く使い、効率的な野生飼育を実現している。

日本の最西端

与那国馬の隊列をあとにし、さらに久部良地区の西を目指すと見えてきたのが、「与那国島灯台(西崎灯台)」(写真22)および「日本最西端の碑」(写真23、24)である。

【写真22~24】西崎灯台と日本最西端の碑

【写真22~24】西崎灯台と日本最西端の碑

西崎灯台は、日本最西端に位置しており、本来は船舶の安全を守る重要な役割を果たしているが、観光スポットとしての役割も担っている。特に、「日本で一番遅く見ることができる夕日」を水平線を望む壮大な景色のなかに見ることができる。さらに、台湾まで111㎞の距離であることから、水平線の向こうにその島影が見えることもある。

筆者が訪れた日は、あいにくの天候で残念ながらきれいな景色を見ることができなかったが(写真25)、この天候のおかげか、周りに観光客は誰もおらず、日本の最西端をゆっくり堪能することができた。

【写真25】西崎灯台から台湾方面を撮影

【写真25】西崎灯台から台湾方面を撮影

[1] 2023年5月の与那国島への出張訪問記録。

[2] 「みんなみいわ」とも呼ぶ。与那国島の南(みんなみ)に位置する岩(いわ)との呼び名。

[3] 詳しくは、https://welcome-yonaguni.jp/guide/1282/ https://www.jtb.co.jp/kando/detail/198.asp

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