2021年4月15日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

SNS × ECで広がるソーシャルコマースとは



オンラインショッピングの利用世帯は50%超へ

2020年1月15日に日本で初めて新型コロナウイルスが確認されてから既に1年が経っている。この間、2度の緊急事態宣言、外出自粛、ソーシャルディスタンスの徹底等、日常生活に様々な変化がもたらされているが、その中でオンラインショッピングの利用は急拡大している。総務省の「家計消費状況調査(二人以上世帯)」によると、ネットショッピング利用世帯の割合は、直近2021年1月には51.9%(対前年同月比で9.1%増)と大きく増加している(図1)。

【図1】家計消費状況調査

【図1】家計消費状況調査
(出典:総務省)

現在、サイトの利用者間で行われる商取引(=ショッピング)が活況を呈しており、いくつかの種類があるが、ソーシャルコマースと呼称されている。馴染みのありそうなところで言うと、Yahoo!オークションやメルカリ/ラクマなどのフリマサービスなどがこれにあたるが、昨今では今まで商品の売買などに使われてこなかったソーシャルメディア(SNS)上でも行われてきている。

EC市場は、楽天やAmazonなど企業が運営するショッピングサイト等から購入するBtoC型と、利用者同士の売買を成立させるサービスを経由するCtoC型に分けることができる。本稿では現在注目を集めているCtoC型(=ソーシャルコマース)で起きている変化についてお伝えしたい。

ソーシャルコマースが発展する中国EC市場

現在世界でEC市場が最も大きいのは中国(1兆9,894億ドル/2020年)で、2位米国(6,006億ドル)の実に3.5倍の規模がある。その中国EC市場の11.6%(2020年/242,41億ドル)をソーシャルコマースが占めているとのデータもある(図2)。

【図2】中国のソーシャルコマース市場

【図2】中国のソーシャルコマース市場
(出典:emarketer.com)

中国でのソーシャルコマース急拡大の背景としてはソーシャルバイヤーの存在が小さくないとみられている。ソーシャルバイヤーとは、中国にいる消費者向けに海外から商品を購入してきて売る転売者(取引の際の差額を収益として手にする)のことを指し、数年前、日本でも話題に上った“爆買い”にも少なからず関係していたと言われている。ソーシャルバイヤーは、学生から主婦、法人企業にまで広がっており、中国では既に3億5,720万人に達し、2023年には4億4,468万人にまで拡大するとみられている。

中国では海外製の商品が手に入りづらく、また通常のECサイトでも偽物が含まれるケースも少なくないことから、身元がはっきりしていて信頼がおければ個人からでも購入したい、というニーズが少なからず存在している。そんな中、CtoCの取引を専門とする「淘宝(タオバオ)」をはじめとするショッピング系サービスが多数登場していった。そうしたサービスで活動するソーシャルバイヤーの中には数十万人のフォロワーを持つインフルエンサー的人物として育った者も多く、ソーシャルコマース市場が発展していったと言われている。

巨大IT企業が次々とソーシャルコマースを強化

このように、中国内の動向として伝え聞いていたソーシャルコマースであったが、2020年ごろよりFacebook、Amazon、Googleをはじめとする巨大IT企業やソーシャルサービスがソーシャルコマースへの取り組みを次々に発表したことにより、今後世界的な動きに発展していくとみられている。

Facebookは、2020年6月に誰でも簡単にオンラインストアを開設できる「Facebookショップ(図3)」を、翌7月にはInstagramでも同様の機能を持つ「Instagramショップ」の提供を開始している(日本版ではFacebook内での決済機能はなく、外部の決済手段を持つサイトへの誘導となっている)。なお、実はFacebookでは数年前から、“BUYボタン”をはじめ“Facebook Marketplace”、“メッセンジャーチャットボット”による決済機能の追加など、ソーシャルコマース的ショッピング機能のテストが行われてきていた。

【図3】Facebookショップ

【図3】Facebookショップ
(出典:Facebookの公式HPより)

今回は満を持しての公開となるが、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は「(Facebookショップは)コロナウイルス対策による外出自粛等で困っている中小企業を支援する取り組みであると考え、自らも機能開発に数カ月関与していた」とその思い入れを語り、機能を無料で使うことができる点を強調した。

Amazonでは2017年から展開していた「Amazon Live(アマゾンライブ)(図4)」を2020年7月に大幅にバージョンアップ。Amazon.comのWebサイトおよびアプリにおいて、動画配信可能な機能を提供。ライブ動画を通じて商品を販売したい人に向けて、“アマゾンライブクリエイター”というアプリを介して、自身の商品をアピールするコンテンツをライブ配信できるようにしている。アプリではチャット機能により配信者とリアルタイムにコミュニケーションをすることも可能だ。ライブ動画で紹介される商品が画面(下)に一覧で並び、クリックするとAmazon.com内の当該商品ページに移動し、購入できるようになっている。映像はアーカイブ化もされるので、過去ライブを視聴することも可能だ(現在日本において「アマゾンライブ」の機能は提供されていない)。

【図4】アマゾンライブ

【図4】アマゾンライブ
(出典:Amazon.com)

またGoogleも提供中のサービス「YouTube」において、一部の利用者と連携してYouTube動画内で紹介した商品にタグを付けて商品ページに誘導する機能の試験提供を開始することを明かしており、大きなニュースとして取り上げられた。

その他米国を中心に利用が広がっているSnapchat(スナップチャット)でも一部のトップクラスインフルエンサーに対して「ショップ」ボタンを提供、日本でも大人気のTikTok(ティックトック)ではショッピングプラットフォームサービスのShopify(ショッピファイ)との提携を発表するなど「SNS + EC」は今やトレンドとなってきている。

ソーシャルコマースは日本でも浸透する!?

過去に遡れば、日本でも2017年がライブコマース元年と呼ばれ話題となったことがあった。ディー・エヌ・エーが運営するライブコマース「Laffy(ラッフィー)」をはじめ、メルカリの「メルカリチャンネル」、BASEの「BASEライブ」など、そうそうたるEコマース系企業が、ライブコマースに参入していた。しかしそれらは現在までにサービス継続を断念、撤退した歴史がある。

当時、各社は中国におけるライブコマースの成功事例を参考に、著名人やインフルエンサーを起用し多くの視聴者を集めたが、なかなか購入には至らなかった、と言われている。成功できなかった理由は1つではないと思われるが、そのひとつとして、日本ではテレビショッピングが一定の市場(2017年当時10兆円と言われている)を獲得しており、多くの人がネット版テレビショッピングでも成功するのではないか、と考えていた点があげられる。しかし、冷静に考えてみるとテレビショッピングがお金にある程度余裕がある中・高齢層の視聴者を対象にするサービスであるのに対し、ネットのライブコマースではあまりお金に余裕のない若年層も対象にしなければならない。結果、現在では楽天市場での「楽天Live」、Yahoo!ショッピングでの「Yahoo!ショッピングLive」などが一部行われているが、2017年当時のサービスは終了している状況にある。

では今回のソーシャルコマースの流れはどうだろうか? 世界のインターネット・ユーザーによるソーシャルメディア利用時間は、2020年で1日当たり145分にまで伸びている(図5)。ここ数年は上昇が止まっており、高止まりの状態ではあるが、今回のトレンドのポイントは、日頃よく利用しているSNS(Facebook、Instagram、YouTube、TikTok等)にソーシャルコマース機能が付くということであり、日本においても以前とは違った結果を手に入れることになるのではと思われる。

【図5】ソーシャルメディア利用時間

【図5】ソーシャルメディア利用時間
(出典:statista.com)

ますます「個」が活躍する時代へ

2012年4月、YouTubeで投稿者が広告収益の一部を獲得できる「パートナープログラム」が開始された。この機能の導入は、YouTubeの投稿者とコンテンツのクオリティ、バリエーションを広げ、結果急速なサービス拡大の原動力になったと言われている。

今回紹介したソーシャルコマース機能が、SNSで物を販売して生計を立てる人気FacebookerやInstagramer、TikTokerらを誕生させ、一層「個(人)」が活躍できる時代になっていく契機となること、そしてSNSとEC市場がさらに上質で充実した場所になることにつながっていくことを期待したい。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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