2021年10月14日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:映画の聖地巡礼~サンフランシスコ編



「シリコンバレー」という名称は、サンフランシスコ湾の南側に多くの半導体メーカーが集まっていたことに由来している。最近は、半導体メーカーだけでなく、Google社、Facebook社、Salesforce社などのネット企業がシリコンバレーを支えている。半導体製造には広い敷地が必要であるが、ソフトウェア開発はパソコンがあればどこでもできるため、サンフランシスコ市内には優秀なソフトウェアエンジニアが集まってきている。

日本でも知名度が高いTwitter社、Uber社、Airbnb社の本社もサンフランシスコ市にある。「革新的なサービスの震源地」というイメージが強いサンフランシスコ市であるが、エンターテインメントでも大きな存在感がある。今回は、映画やドラマの聖地にもなっているサンフランシスコの別の一面を紹介する。

【図1】サンフランシスコ市近郊の聖地

【図1】サンフランシスコ市近郊の聖地
(出典:Google Mapsを利用して筆者作成)

コロナ禍での観光事情

観光が基幹産業の一つであるサンフランシスコ市も例外なく新型コロナの影響を受けた。2021年3月24日のSan Francisco Travel Associationの発表によると、サンフフランシスコ市の観光業界は10年連続で成長していたが、2020年は訪問者数も訪問者からの収入も、過去最高を記録した2019年と比べると大幅に減少した。

しかし、San Francisco Travel Associationには希望の光が見えているようだ。2019年レベルに戻るのは2025年とした上で、ワクチン接種の効果で、2021年は復調の兆しがあると発表した。San Francisco Travel Associationは、「サンフランシスコ市は、新型コロナウイルスの感染をコントロールできている都市の一つで、ホテル、空港、航空会社、旅行関連業社と連携して安心・安全に努めているので、ぜひサンフランシスコに来てほしい」と伝えている。

【図2】訪問者数の比較

【図2】訪問者数の比較
(出典:San Francisco Travel Associationの発表をもとに筆者作成)

9月の第一月曜日のLabor Day(労働者の日)という米国の祝日にサンフランシスコ市を訪れてみた。かつての賑わいにはほど遠いものの、多くの観光客が観光バス、セグウェイ、ケーブルカーなどで観光スポットを巡っている姿を目にした。

【写真1】サンフランシスコ市の観光スポットを巡る観光客

【写真1】サンフランシスコ市の観光スポットを巡る観光客
(出典:文中掲載の写真は、一部記載のあるものを除きすべて筆者撮影)

ゴールデンゲートブリッジ

サンフランシスコ湾の南北を結ぶゴールデンゲートブリッジは1937年に完成した全長約2.7kmの吊り橋で、サンフランシスコ市で一二を争う観光スポットである。多くの観光客がサンフランシスコ市側から自動車、徒歩、自転車でゴールデンゲートブリッジを渡り、対岸にあるビューポイントからゴールデンゲートやサンフランシスコ市をバックに写真を撮る姿をよく見かける。
観光客に大人気のゴールデンゲートブリッジは映画の舞台としてもよく登場している。

例えば、Terminator Genisys(邦題『ターミネーター:新起動/ジェニシス』)では、映画の冒頭でゴールデンゲートブリッジやサンフランシスコ市内が登場する。
他にもX-Men: The Last Stand(放題『X-MEN: ファイナルディシジョン』や『ダーティハリー』でも重要なシーンでゴールデンゲートブリッジが登場する。DisneyアニメのInside Out(邦題『インサイド・ヘッド』)でも主人公がサンフランシスコに引っ越しをする時、ゴールデンゲートブリッジを渡るシーンが描かれている。ゴールデンゲートブリッジが見下ろせる“Golden Gate View Point”はUberなどのRide Shareを使ってアクセスできるので、機会があればぜひ訪れてみてほしい。

【写真2】登場シーン付近から撮影したゴールデンゲートブリッジ

【写真2】登場シーン付近から撮影したゴールデンゲートブリッジ

アルカトラズ島

アルカトラズ島は、ゴールデンゲートブリッジと同じくらい人気のサンフランシスコ市の観光スポットである。元々は軍事的な拠点として活用されていたが、おそらく多くの人は凶悪犯を収監する連邦刑務所というイメージを持っていると思う。実際にアルカトラズ島の連邦刑務所にはアル・カポネなどの凶悪犯が収監されていた。アルカトラズ島に上陸すると音声ガイドが渡されて、ガイドに合わせて施設内を見学できる。個人的に印象に残っているのは、高い塀に囲まれた屋外の運動場と窓から見える賑やかなサンフランシスコ市の様子だ。アルカトラズ島はサンフランシスコ湾の中にあるが、対岸のフェリーターミナルまでは約2kmしか離れておらず、時には潮風に乗ってサンフランシスコ市内から賑やかな音楽や人々の楽しそうな声が聞こえてくることもあったそうだ。
アルカトラズ島を舞台にした映画といえば、Clint Eastwoodさん主演のEscape from Alcatraz(邦題『アルカトラズからの脱出』)は外せないと思う。『アルカトラズからの脱出』が脱獄劇を描いた映画であるのに対し、テロリストと戦うためにアルカトラズ島への潜入を描いたThe Rock(邦題『ザ・ロック』)も一見の価値がある。 『ザ・ロック』ではSean Conneryさん演じる主人公が、展示会や結婚式などで利用される“The Palace of Fine Arts”やサンフランシスコ市内の高級ホテルを舞台に、渋い演技を見せている。

映画ではないが、2014年に放送された刑事ドラマでは、部下が命令を無視して無茶な捜査をしようとしているシーンで「失敗したらアルカトラズ島のセキュリティに飛ばされるぞ」という比喩に“アルカトラズ”が使われていた。日本のドラマだと“運転免許試験場”となるところだと思うが、こういう表現でも地元ならではのフレーズが使われている。
アルカトラズ島はフェリーを使って上陸できるが、1〜2カ月先までフェリーの予約が取れないほど人気なので、アルカトラズ島に行く場合は早めの予約をお勧めする。

【写真3】アルカトラズ島(左)とThe Palace of Fine Arts(右)

【写真3】アルカトラズ島(左)とThe Palace of Fine Arts(右)

Coit Towerとピア周辺

Coit Towerはサンフランシスコ湾を一望できるPioneer Parkという小高い丘の上にある。Coit Towerは消防士だったLillie Hitchcock Coitさんが、遺産の3分の1をサンフランシスコ市に寄付し、彼女が亡くなった3年後の1932年に建築された。Coit Towerの高さは64mだ。あまり高く感じないかもしれないが、小高い丘の上にあるため、最上階にある展望台からは眼下のアルカトラズ島、遠くにはゴールデンゲートブリッジなど、サンフランシスコ市の街並みを360度のパノラマビューで楽しめる。

Coit Towerはサンフランシスコ湾を見渡せる場所にあるため、多くの映画で登場する。地殻変動によるパニック映画のSan Andreas(邦題『カリフォルニアダウン』)では、家族の待ち合わせ場所として使われていた。また、先述した『ザ・ロック』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『X-MEN: ファイナルディシジョン』でもサンフランシスコ湾の空撮シーンにCoit Towerが登場する。

9月14日のカリフォルニア州知事のリコール選挙の立候補者の一人であるJohn CoxさんがTreasure Islandというサンフランシスコ湾に浮かぶ島で演説を行ったのだが、そのバックにもSalesforce社の本社ビルなどと一緒にCoit Towerが映っている。

Coit TowerがあるPioneer Parkからサンフランシスコ湾側に丘を下ると、Fisherman’s Wharf、Pier39、Ferry Buildingなどの観光スポットが数多く点在している。Fisherman’s Wharfではコロナ禍の2020年5月に火災が起きたが、今ではすっかり元通りになっている。

ピア周辺も多くの映画の撮影スポットとして登場している。Eddie Murphyさん主演の1998年版のDoctor Dolittle(邦題『ドクタードリトル』)では、サンフランシスコ湾のフェリー交通の要のFerry Building内のレストランで撮影が行われた。他にもベイブリッジを一望できるレストランのテラス席でのディナーシーンなど、ピア周辺は映画、ドラマに欠かせない撮影スポットになっている。

【写真4】Lombard Streetから見るCoit Tower(左)とピア周辺(右)

【写真4】Lombard Streetから見るCoit Tower(左)とピア周辺(右)

映画スタジオ

ベイエリアには有名な映画スタジオが2つある。ひとつは皆さんもよく知っているPixar Animation Studios(以下、Pixar)だ。Pixarは1986年にApple社の創業者Steve Jobsさんが設立したアニメーションスタジオである。Pixarは、Toy Story(邦題『トイ・ストーリー』)など、数々のDisney映画をヒットさせてきた。Pixarの本社は、サンフランシスコ湾の東側のEmeryville市にある。残念ながら、社員のアテンドがないと敷地内には入れないが、知人によると建物内のあちこちにPixar映画の冒頭で必ず登場するランプのLuxo, Jr.やPixarが手がけたアニメのキャラクターが飾ってあるそうだ。

そして、もうひとつがLucasfilmとIndustrial Light&Magic(以降、ILM)だ。George Lucasさんが立ち上げたLucasfilmとILMはStar Warsシリーズ、Indiana Jones(邦題:インディ・ジョーンズ)シリーズなどの映像制作を行い、映画業界における特殊撮影、音響、コンピューターアニメの発展をリードしてきた。

LucasfilmとILMは“Presidio of San Francisco”という国立公園の一番東の“Letterman Digital Arts Center”の中にある。Presidio of San Franciscoは元々は軍事基地として開発され、Letterman Digital Arts Centerがあった場所には“Letterman Hospital Complex”という軍の病院があった。Letterman Hospital Complexは、1899年から1902年の2年間で建設され、その当時の技術の粋を集めた最先端の病院だったそうだ。Letterman Hospital Complexは、1906年のサンフランシスコ大地震、第二次世界大戦、ベトナム戦争などの患者を手当てしてきた。Letterman Hospital Complexは、その後も退役軍人のケアを続けてきたが、一部の歴史的建築物を残して取り壊され、1995年に病院の役目を終えて国立公園の一部となり、残った建物をLetterman Digital Arts Centerが引き継いだ。Letterman Digital Arts Centerの建物の外観から病院のような雰囲気を感じるのはそのためだろう。

Letterman Digital Arts Centerも一般の人は建物の中には入れない。私はLetterman Digital Arts Centerでブロックチェーンの会議が開催された時、幸運にも建物の中を案内してもらった。案内してもらった建物のロビーには、Star Warsのキャラクターが置かれ、建物内にはStar Wars関連のグッズが買えるショップもあった。建物の中には入れないが、キャンパスは公開されているので、自由に立ち入りができる。私が最近訪れた時は、犬の散歩をする人や芝生にシートを敷いて寝そべっている人たちがいた。長時間の駐車はできないが、ゲートで警備員に「ヨーダ像の写真を撮りたい」とお願いすると中に入れてくれて、ヨーダ像の場所も教えてくれる。

【写真5】Lucasfilm社のキャンパス(左)とStar Warsのキャラクター(右)

【写真5】Lucasfilm社のキャンパス(左)とStar Warsのキャラクター(右)

おわりに

今回は先端技術とは違った側面のサンフランシスコ市を紹介した。本稿で紹介した場所以外にも多くの場所で映画やドラマが撮影されている。

サンフランシスコ市は屋内でのマスクの着用やスポーツ観戦でのワクチン接種の完了が求められているが、ハイウェイでは毎日、朝晩の通勤ラッシュが発生するほど経済は活発になり、多くの人の訪問を待ち望んでいる。機会があれば、ぜひここで紹介した場所や自分だけの特別な場所を訪れてみてはどうだろうか。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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