2022年2月25日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

GIGAスクールの進展とこれから



はじめに

GIGAスクール構想の推進により、小中学校における教育ICTは大きな転換期を迎えた。本稿はGIGAスクール構想の進捗状況や学校における変化の兆しなどを概観しながら、今後の教育ICTにおける注目ポイントについて整理する。

GIGAスクール構想の進捗状況

GIGAスクール構想では様々な施策が展開されているが、その中核をなしているのが「国公立小中・特別支援学校の児童生徒1人1台の情報端末(学習者用端末)の整備」と「学校内の通信ネットワークの整備」の2つである。まずは、これらの整備状況についてみていくこととする。

(1)学習者用端末の整備

2021年7月末時点において、すべての児童生徒が学習者用端末を活用できる環境の整備を完了した自治体等は1,742であり、全体に占める割合は96.1%に達している(図1参照)。

【図1】すべての児童生徒が学習者用端末を 活用できる環境の整備状況

【図1】すべての児童生徒が学習者用端末を
活用できる環境の整備状況
(出典:文部科学省「端末利用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(速報値)」(2021年8月))

当初、学習者用端末の整備は3カ年の段階的整備とする計画であったが、GIGAスクール構想の実施に際し、小・中学校および特別支援学校の義務教育段階のすべての児童生徒について1年間で整備するという前倒しが行われた。このため、実行性を不安視する声が一部からあったものの、結果的にはほぼ達成することができた。

(2)校内ネットワークの整備

校内ネットワークに関するデータ(2021年6月末見込み)をみてみると、GIGAスクール構想でネットワーク整備に取り組んだ学校の98.0%にあたる31,949校において既に供用が開始されている(図2参照)。

【図2】校内ネットワークの供用状況

【図2】校内ネットワークの供用状況
(出典:文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けた校内通信ネットワーク環境等の状況について」(2021年8月))

また、学校からのインターネット接続環境については、「固定回線+校内Wi-Fi」型と「LTE」型の2つの方式が主として想定されていた。実際のインターネット環境の状況についてみてみると、「LTE」型を採用した自治体は全体の3.0%、学校数ベースでも全体の3.5%となっており、主流は「固定回線+校内Wi-Fi」型となっている[1]

GIGAスクール構想での学習者用端末整備がもたらした2つの変化

GIGAスクール構想の進捗によって、著しく急伸したのが学習者用端末の整備であろう。ここではGIGAスクール構想の進捗状況についての整理のまとめとして、学習者用端末整備がもたらした2つの大きな変化を指摘する。

(1)教育ICTは「普及促進」から「利活用」のフェーズへ

文部科学省では学校における教育ICT環境について様々な統計数値を公表しているが、その中のひとつに「学習者用端末1台あたりの児童生徒数の推移」がある(図3参照)。これは指標名のとおり、学習者用端末1台あたりの児童生徒の人数をあらわしたもので、学習者用端末が普及するにつれて、その値は小さくなり、1人1台整備されると、指標は1となる。

【図3】学習者用情報端末1台あたりの児童生徒数の推移(義務教育段階)

【図3】学習者用情報端末1台あたりの児童生徒数の推移(義務教育段階)
(出典:文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」
「端末利用状況等の実態調査(令和3年7末月時点)(速報値)」をもとに情総研作成)

以前からも学習者用端末の整備は進められていたものの、掲げられていた整備目標は「2022年までに3人に1台の整備を目指す」にとどまっていた。このため、この指標の進捗は緩やかなものであり、GIGAスクール構想前の2020年3月時点では児童生徒5.4人に1台という状況であった。

ところがGIGAスクール構想による学習者用端末の急速な普及に伴い、2021年3月時点では1.4人に1台に急伸した。さらに2021年7月にはついに1.0人に1台に到達し、統計データ上でも児童生徒1人1台の端末環境整備が実現したことが示された。

このことは教育ICTにおける「ハードの普及促進」フェーズの終焉を迎えたといっても過言ではないだろう。今まではいかにしてICT環境の整備を行うかについて議論や模索が続いていたが、これからは整備されたICT環境をどのように有効に活用していくのかといった「利用促進」フェーズへと移行したのである。

(2)学習者用端末の多様化

2つ目の大きな変化は「端末の多様化」である。

GIGAスクール構想以前は、学習者用端末のほとんどはWindows端末であった。ところが、GIGAスクール構想によって導入された学習者用端末のOS別シェアをみると、Chrome端末が約4割のシェアを占めトップを獲得、次いでWindows端末とiOS端末が3割ずつという結果になったのである(図4参照)。

【図4】GIGAスクール構想による整備端末におけるOS割合(台数ベース)

【図4】GIGAスクール構想による整備端末におけるOS割合(台数ベース)
(出典:文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」(2021年8月))

この背景としては、学習者用端末の補助額上限が4.5万円/台であったことや自治体によっては小学校と中学校で異なる端末を採用したことなどが影響していると考えられる。

こうした端末の多様化は、デジタル教科書・教材やアプリなどのコンテンツ開発にも影響を与えていくことは明白である。今後の教育ICTを考えていくにあたっては、Windows端末のみならず、Chrome端末やiOS端末も加えた「マルチOS環境」を前提とすることが求められるであろう。

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※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

[1] 文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けた校内通信ネットワーク環境等の状況について」(2021年8月)

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