世界の街角から:初めての母娘旅~大阪USJ・京都嵐山~
「夏休みどこ行く?」
コロナ禍前までは毎年沖縄だった。万が一を考えすぎてしまう私の性格と、長年海なし県で過ごしているがゆえの、どこまでも続く広い水平線が見える大きな青いきれいな海への憧れのせいかもしれない。海を前に時間を気にせずぼうっとするのが幸せであった。
しかし、今年は違った。
娘から「ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン:USJ)と京都に行きたい」と何度も何度も言われた。なぜそんなに行きたいのか。実はここ数年の彼女の情報源はTikTokやYouTubeなどのSNSで、娘が言うには、大好きな女子小中学生に大人気のYouTuberがUSJと京都へ行って紹介していたからとのことだ。しかも、彼女が行った場所、コースと全く同じ場所、コースをたどり、同じことをしたいのだという。そのコースは、大阪のUSJで遊び、その後京都へ移動、着物を着て人力車で観光するというもの。突拍子もない内容でもないので、娘の笑顔が見られるならと、今年の夏休みの旅行は3泊4日の大阪京都に決定した。旅行を予約して以降、娘は数えきれないほど「ユニバの夢を見た」「楽しみ」「ユニバがあるからがんばる」と楽しそうに話し、私はそんな娘がかわいくてしょうがなかった。
大阪 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
1、2日目。USJは大阪にある有名なテーマパークであるため、知っている人も多いだろう(写真1)。
私たちは、連続した2日間パークを楽しむことができる「1.5デイスタジオ・パス」と待ち時間を短縮して複数の人気アトラクションを体験できる「ユニバーサル・エクスプレス・パス」の中の「スーパー・ニンテンドー・ワールド」エリア入場確約券が付いた「ユニバーサル・エクスプレス・パス4~ミニオン・ハチャメチャ・ライド~」を事前に購入。お昼過ぎにパーク近くに到着したため、宿泊するホテルにチェックイン後、セサミストリートのカチューシャなどのグッズを購入し、近くのレストランで腹ごしらえをしながら15時の入場開始時間を今か今かと待ち続け、ようやく入場。
地図を読むのが苦手な私たちは、パークの地図をくるくると回しながら、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン公式アプリで確認できるアトラクション待ち時間を参考にたくさんのアトラクションを体験した。今回はその中から、2021年3月18日にグランドオープンした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をご紹介しようと思う(写真2)。
エリアの中では任天堂のキャラクターやゲームの世界が再現され、まるで本当にゲームの中にもぐりこんだような気分になる。ここでは、パワーアップバンドを購入、装着することで、リアルに現れたマリオの世界を全身で体験、楽しむことができる(写真3)。さらに、アプリと連携すると、集めたコインやスタンプなど自分のスコアを確認することができたり、友達と競い合ったりすることができるのだ。あまりゲームをしない私たちであったので、購入したパワーアップバンドや用意された体験アトラクションを十分に利用できたかは少し疑問だが、「マリオカート~クッパの挑戦状~」や「ヨッシー・アドベンチャー」のアトラクションを楽しんだり、「ハテナブロック」をゲームと同じように下から押してコインをためたりとマリオの世界を楽しむことができた(写真4、写真5)。
大阪海遊館
3日目。この日は京都へ移動する日であったが、その前にホテルの近くから出航しているシャトル船で行くことができる世界最大級の水族館である「海遊館」を訪れることにした。入場するとまずエスカレーターで8階に行き3階まで続く展示を順路に従い鑑賞していく。そして、6階に着くと、この水族館の特徴のひとつであるジンベエザメがいる太平洋を模した大きな水槽を中心にぐるぐると螺旋状に回りながら降りていく。この展示構造は、太平洋をぐるぐると回り、様々な角度から鑑賞しながら水面から深海へ潜っていくイメージとなっているのだ(図1)。そのような構造であるため、ジンベエザメらのシャッターチャンスは何度も訪れ、気づくと私のスマホはジンベエザメの写真だらけになっていた。もちろんジンベエザメのほかにも、マンボウやワモンアザラシ、ペンギンなどを間近で見ることができ、私たちは久しぶりの水族館を満喫した。中でもワモンアザラシの「ゆきちゃん」の表情はあまりにも魅力的で、今では私のLINEのアイコンにもなっている(写真6、写真7、写真8、写真9)。そして、最後に記念として2021年4月1日に産まれたワモンアザラシの「ミゾレ」のぬいぐるみを購入、なんともいえない愛くるしい顔に毎日癒されている。この愛称「ミゾレ」だが、海遊館のワモンアザラシたちの愛称が天気に由来しており、「ミゾレ」の生まれた時の顔が母親のアラレ似であったことから、霰(あられ)に似た天気の霙(みぞれ)となったということらしい(写真10)。
京都
4日目。前日に大阪から京都へ移動し、あっという間に最終日。
楽しみしていたホテルでの朝食、生湯葉と漬物を使用したオリジナルリゾットをゆっくり食べ、嵐山へ移動した。
まずは、着物をと思ったが、季節は夏、着物はあきらめ浴衣を着つけてもらうことに。今回お世話になったのは、レンタル着物「夢京都」さん。たくさんある浴衣から娘はピンク系、私はブルー系の浴衣を選び、ヘアセットもしてもらって、いざ散策へ。しかし、昨日までのUSJの疲れが思いの外、足にきており、近くの野宮神社と竹林で少し写真を撮るだけで、すぐに人力車を探した。ありがたいことにすぐに人力車と出会うことができた。人力車は以前別の観光地でもお世話になった「えびす屋さん」。数多くある嵐山の定番スポットから私たちは、渡月橋と竹林、そして祇王寺を選び、2時間の人力車の旅が始まった。人力車を引いてくれるのは、娘のお友達に少しだけ雰囲気が似ている俥夫さんの「ひかるちゃん」。少し緊張した私たちを和ませようと、楽しくコミュニケーションをとってくれた。彼は私たちを「姫」と呼び、私たちは呼ばれるたびに少し照れながら、これから始まる嵐山の人力車の旅に期待を寄せていた。
嵐山 渡月橋
渡月橋は、嵯峨野と嵐山を隔てて流れる桂川に架かる全長155mの橋で、嵐山を代表する観光名所のひとつである。平安初期の承和の頃に僧の道昌が架橋したのが最初とされており、現在の位置には後年に角倉了以が架けたとされる。現在使われている橋は昭和9年(1934年)6月に完成したもので、嵐山の景勝に溶け込むように設計されているらしい。渡月橋という名前は、鎌倉時代に亀山上皇が、橋の上空を移動していく月を眺めて「くまなき月の渡るに似る」と感想を述べたことから渡月橋と名付けられたという。春は新緑、秋は紅葉と季節によって違った雰囲気を楽しめる。しかし、私たちが訪れた日は残念ながら雲が多く少しどんよりとしていた。多くの観光客が行きかう渡月橋をバックに写真を撮りながら、紅葉が美しい11月頃また訪れたいねと娘と約束した(写真11)。
嵐山 竹林の小径
次に向かったのは、
野宮神社から天龍寺北門を通り大河内山荘へ抜ける約400メートルの道で、手入れされた竹林が道の両脇に続く、京都を代表する観光名所のひとつである。
人力車では、人が歩くところとは違った道を通ることができ、俥夫さんがたくさんの記念写真を撮ってくれた。私たちは言われるがままポーズをとるだけ。そして、できあがった写真を見て私と娘は「すごーい!」と顔を見合わせた。【写真12】と【写真13】を見比べてほしい。【写真12】は散策した時、私が撮影したもの。【写真13】は俥夫さんが撮影してくれたもの。同じスマホで撮影してこれだけ違うのである。私がカメラの機能を使いこなせていないと言えばそれまでだが、俥夫さんはお客さんのいろいろな種類のカメラやスマホを使って、その場の風景にあった最適な撮影方法であっという間にこのような素敵な写真を撮ってしまうのだ。しかも、今回は初めて見る機能があったようで、「この機能使っていいですか?」とどんどん機能を使いこなし、写真を撮っていく。今、この瞬間を、思い出に残してあげたいという思いが伝わってきて、とても嬉しかった。お客様の期待を超える価値の提供とはまさにこのようなことであろうと思った。この竹林での写真は私たちの中でもお気に入りの1枚となった。
嵐山 祇王寺
「ひとつくらいお寺を見ませんか?」という俥夫さんの言葉に、私たちは苔庭で知られる祇王寺を選んだ。祇王寺は竹林や青もみじに覆われた庭園のある草庵で、「平家物語」にも登場する平清盛の寵愛を受けた祇王が清盛の心変わりにより都を追われるように去り、尼となって母と妹とともに移り住んだ尼寺として知られている。俥夫さんが20~30ほどの種類の苔が生えていてとても素敵なお寺ですよと話してくれたとおり、入り口から中に入った瞬間、目の前に広がる青もみじと苔の緑の美しいグラデーションに別世界にきたような気持ちになった(写真14)。
様々な形の苔はどれもずっと見ていたくなるほど美しく、とても丁寧に手入れされ、大切にされているのが伝わってくるものだった。さて、ここでもやはり俥夫さんの写真撮影はとまらない。私たちが喜んでくれるように、よい思い出として残るようにという気持ちが伝わってくる。地面近くに生えている苔はスマホの上下を反対にして撮影、絵葉書にでもなるのではないかというクオリティの写真ばかりとなった。帰りの下りとなる道のりはとても短く感じ、あっという間に俥夫「ひかるちゃん」との2時間がたってしまった(写真15、写真16)。
そして、楽しい旅もいよいよ終焉間近。旅の思い出を口々に語らいながら、母娘二人、嵐山でランチを食べ、帰路につこうといざ京都駅へと向かったのであった。
最後に、今回のタイトルを「初めての母娘旅」としたが、実はうちには息子もいる。これまでの旅行はいつも息子も一緒だった。しかし、部活が忙しく休みがないこと、USJにあるような乗り物が不得意であることから、今回一緒には行けなかった。いや、行ってくれなかったという表現のほうが正しいかもしれない。母としてはさみしかったが、息子はどうだったか。少しでもさみしいと思ってくれていたと信じたい。
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