コロナ以前の第三次タピオカブームが到来する前の2017年、初めて台湾を訪れた(2泊3日)。今回は当時の記憶を遡り、印象に残っている訪問先や景色、食体験についてご紹介させていただく。
空港からホテルまで
東京から台湾の首都・台北までは飛行機で4時間程。空港に到着した後、まずはホテルに向かうため、現地の添乗員の指示に従い大型の観光バスに乗り込む。日本ではあまり見かけることのない色調できらびやかに彩られた内装が新鮮だった。そして、小雨降る中バスが出発すると、車窓から年季の入ったコンクリート造りの団地(写真1)や車道に溢れるバイクが見えてきた。やっと異国に来た実感が湧いてきて、少しノスタルジックな光景にワクワクした。
バスは途中でお土産屋さんに立ち寄りながら、周囲のホテルを巡回し、バスの乗客を次々と降ろしていった。土地勘もなく、旅行の申し込みから出発まであまり調べる時間もなかったため、特に考えることもなくこの空港~ホテル間の送迎バスの無料オプションサービスを申し込んでしまったのだが、空港から車で15分の距離にある我々の宿泊先のホテルに着いたときには、およそ2時間近くが経っていた。そのため、ホテルに着くとすぐに、その日の夕方発で申し込んでいた台湾北部の定番観光地、九份へのツアーに出発することとなった。
九份の台湾茶
九份は台北から北東に向かってバスで1時間半ほどの山間の町で、山と海を望むことができる。斜面に建つ古い建物には赤提灯が沢山ぶら下げられ、夜になると辺り一帯をオレンジ色に照らし、レトロな街並みが浮かび上がる(写真2)。映画『千と千尋の神隠し』で、主人公の千尋が迷い込んだ湯屋の世界のような幻想的な風景だ。せっかくなので映画に登場する「油屋」に外観が似ていると言われる有名なお茶屋さん・阿妹茶楼に入り、楽しみにしていた台湾茶をいただく。
店員さんが目の前で正しいお茶の淹れ方を説明しながら1杯目を出してくれる(写真3)。台湾茶では、お茶を味わうための品茗杯(ひんめいはい)と、香りを楽しむための聞香杯(もんこうはい)の2種類の器を使い、お茶を楽しむ(写真4)。最初に縦長の聞香杯にお茶を淹れて品茗杯を被せた後、ひっくり返して品茗杯にお茶を注ぎ変え、空になった聞香杯に残る香りを楽しむ。「香りを聞く」杯という、お洒落な名前に心がときめく。2杯目以降のお茶は自分で淹れてみたが、本格的な茶器と茶楼の雰囲気も相まって、なかなか香り良く、美味しく感じられた。
台北への戻りのバスでは、台北市内の饒河街観光夜市という夜市近くで降車して、賑やかな夜市を覗いてみた。添乗員の若い女性から受けた「(夜市では)油ものが多いから、日本人観光客が屋台の食べ物を食べるとお腹を壊しやすいので気をつけて」という助言と、既に夕飯を済ませていてお腹がいっぱいであったこともあり、食べずに見るだけにとどめたが、どこも人が多く賑やかであった。台湾は屋台文化も進んでおり、手軽に安くて美味しいご飯が食べられるとのこと。気軽に人が集い、楽しく食事ができる文化は「活気があって素敵だな」と思った。夜市の向かいに見えた松山慈祐宮(有名な寺院)も明るくライトアップされ、夜の台北は小雨降る中でも賑やかで華やかだった(写真5)。
国立故宮博物院の「白菜」と「豚の角煮」
私には日本でガイドブックを見た時から気になっていた観光情報があった。ガイドブックを確認すると、台北の観光名所の要、国立故宮博物院には代表的な展示品が2点あり、それは「白菜」と「豚の角煮」と紹介されている。なぜ白菜と角煮なのかという興味と、そこまで人を惹きつける2点の実物はいかなるものなのか、という好奇心もあって国立故宮博物院への訪問を楽しみにしていた。ちなみに「白菜」は白菜の形に掘られた翡翠(ひすい)であり、「豚の角煮」は豚の角煮に模して形作られた碧石(ジャスパー)である。故宮博物院は台北市の北部にあり、宿泊先のホテルから車で20分かからない距離にあった。日本に比べてタクシー料金も安いため、2日目の朝、初めて台湾でタクシーに乗り博物院へ向かった。
故宮博物院前は各国から訪れる観光客で賑わっていた。立派にそびえる入口の門(天下為公牌楼)(写真6)。その奥正面に続く道の先に左右対称の大きな博物院が見える(写真7)。この景観だけでも迫力があり圧巻だ。テンションが上がるのは我々以外の観光客も同じ様で、多くの人が集まり記念写真を撮っていた。この立派な景色も「展示作品」の一部の様に感じられ、思わずカメラで写真におさめる。
故宮博物院には698,856点(2022年9月30日現在)の所蔵品があり、地下1階から4階まである本館の1~3階部分が展示スペースになっている。じっくり鑑賞するのであれば1日あっても足りないという。しかし、滞在時間の限られている我々一行は興味のある展示を中心に回りつつ、お目当ての白菜と角煮を探した。残念ながら「豚の角煮」こと「肉形石」は他の施設へ貸し出しされていたようで見ることは叶わなかった。しかし、「白菜」は実際に自分の目で見ることができた。正しい名称は「翠玉白菜」といい、大きさは18.7センチ×9.1センチの可愛らしいサイズだった(写真8)。よく見るとキリギリスとイナゴが葉の上に乗っており、着色することなく翡翠の原石の色を活かして彫られた作品だという。キリギリスやイナゴは多産、白菜は純潔を象徴するという説もあるようだが、丁寧で細かい細工の仕事が施された、瑞々しく輝く小さな白菜は見ているだけで可愛らしく幸せな気持ちになった。今回はお目にかかることのできなかった「豚の角煮」も、その精巧さから、もしかしたら実物を見たらお腹が空いてきてしまうぐらいに感性を刺激する作品なのかもしれない。次回の台湾旅行のお楽しみに取っておきたいと思う。
ちなみに、故宮博物院のホームページには3Dで展示物を鑑賞することのできる「3D文物鑑賞」(図1)があり、肉形石を360度どの角度からも鑑賞することができるようになっている。次回訪問する前には、しっかりここで予習してから実物と対面したら、より深い気づきを得られるかもしれない。
滞在中の食べ物あれこれ
台湾観光と言えば、食も大事な楽しみである。タピオカミルクティーはもちろんのこと、街中には魅力的な食べ物のお店が至る所に溢れている。滞在中は胃袋の許す限りの食を楽しんだ。
観光の合間に訪れた地元の人で賑わう中華食堂では、中国語表記のメニューを前に固まる我々一行に対し、店員さんや周りのお客さんが親切にフォローをしてくれた。出てきた麺や点心はボリュームも満点で、価格も良心的かつ美味しかった。日本でも有名な「鼎泰豊」の本店(写真9)にも訪れたが、こちらでは小籠包を始めとした様々な点心を楽しむことができた。また、街中を散策しながら見つけたお店の台湾かき氷(雪花冰)(写真10)はマンゴーが沢山入っていて濃厚なのにさっぱりしており、お腹いっぱいでも別腹で入ってしまうくらいに美味しかった。
さらに、お土産物としても有名な鳳梨酥(パイナップルケーキ)は、良心的な価格でばらまき用の土産品として売られているものから、有名店やホテルのちょっと高級なものまで幅広いラインナップがあった。パイナップルペーストの甘さや酸味、クッキー生地の食感が各々のお店で異なるので、小売りされているものを食べ比べるのも楽しく、気がつくと帰りのスーツケースの中には複数種類のパイナップルケーキが入っていた。
他にも、本場で食べてみたいあれこれは沢山あったが、すべてを食べることは難しかったので、残りは次回の訪問のお楽しみとなっている。改めて写真を見て振り返りながら、「そう遠くないうちにまた台湾に行きたいな」と思い馳せる今日この頃である。
※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。
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