超高齢社会における介護DXの可能性と課題
超高齢社会とは、65歳以上の人口が総人口に占める割合が21%を超えた社会のことを指す。日本では2007年にこの割合が21.5%となり、超高齢社会に突入した。総務省統計局によると、65歳以上の人口は2025年9月15日現在、推計3,619万人に達し、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を更新している。今後も高齢化は進行し、この割合は2040年には34.8%、2050年には37.1%に達すると見込まれている(図1)。また、日本の65歳以上人口の割合は、人口4,000万以上の世界38カ国中で最も高い(表1)。

【図1】65歳以上人口および割合の推移(1950~2050年)
(出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2025年9月14日) https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics146.pdf)

【表1】65歳以上人口の割合(上位10カ国)(2025年)
(出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2025年9月14日) https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics146.pdf)
こうした人口構造の変化は、医療や年金と並び、介護分野にも大きな影響を及ぼしており、介護の担い手不足や現場負担の増大は、既に顕在化した社会課題となっている。
本稿では、超高齢社会における介護分野の課題を概観し、課題解決に向けて導入が進みつつある介護DXの可能性について考察する。
介護分野の現状と課題―需要拡大と供給制約の構造
厚生労働省が公表した2023年度の「介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護・要支援の認定者数は初めて700万人を超え、過去最多の708万人となった。介護需要は今後も増加が見込まれている。一方で、その担い手となる介護人材に目を向けると、2040年には約272万人が必要とされており、2022年時点から約57万人の増員が求められている。しかし、少子高齢化の進展により人材確保は容易ではない状況にある(図2)。
こうした人材制約は、サービス提供体制の維持を難しくし、介護事業者の経営にも影響を及ぼしている。介護事業者の倒産件数は2024年に172件と過去最多を記録し、なかでも小規模事業者が多い訪問介護や通所・短期入所が137件と最も多かった(図3)。さらに2025年上半期の倒産件数は、すでに前年同期を上回っており、介護事業者を取り巻く経営環境は依然として厳しい。
このように介護分野では、需要の拡大に対して、人材や事業者などの供給側が追いつかないという構造的な課題を抱えている。こうした状況を踏まえ、限られた資源のもとで介護サービスを持続的に提供するための方策の一つとして、介護DXへの期待が高まっている。
介護DXの現在地
本稿では、介護DXを単なるIT機器の導入にとどまらず、見守り機器や介護ロボットなどのテクノロジーを活用しながら、介護業務の効率化や質の向上を図る取り組み全体として捉える。以下では、介護DXが介護現場でどのように進められているのか、その現在地を整理する。
厚生労働省と経済産業省は、介護における革新的な機器の開発促進と普及を目的に、「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂し、2025年4月から新たに機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援の3分野を追加した。あわせて名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」とし、介護現場におけるテクノロジー活用を後押ししている。
介護現場では、電子介護記録の導入をはじめ、見守りセンサー、インカム、シフト管理システムなどの活用により、現場負担の大きい業務を中心にDXの取り組みが進められてきた。国や自治体による補助金事業も、こうした導入を支援している。一方で、施設介護におけるテクノロジーの普及状況を見ると、「見守り支援機器」の普及率は比較的高いものの、それ以外の分野では総じて低水準にとどまっている(図4)。また、訪問介護や通所介護といった在宅系サービスにおける普及率は、さらに低い状況にある。

【図4】介護テクノロジーの普及率 施設介護における介護ロボットの導入状況
(出典:厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会資料「介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2023年3月16日)に基づき筆者作成)
こうした供給側の動きと並行して、需要側にも一定の期待が見られる。背景には高齢期においても自立した生活を維持し、住み慣れた地域や自宅で暮らし続けたいという根強い意向がある。しかし、「老後の医療・介護テクノロジーへの期待に関する調査」では、介護テクノロジーについて「全く知らない」「あまり知らない」と回答した人が過半を占めており(図5)、具体的な活用イメージを持てないことから不安を感じている層が多いことも示されている。
このように、介護DXをめぐっては供給側・需要側の双方に期待が存在する一方で、その活用はなお途上にある状況といえる。
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