2023.2.10 イベントレポート InfoCom T&S World Trend Report

CES 2023レポート(Expo編)

本記事は、NTTコミュニケーションズ イノベーションセンターの小室智昭氏より寄稿いただいた原稿をそのまま掲出しています。

1. はじめに

 前回のレポートでは、CES 2023直前に開催されたMedia向けに発表されたCES 2023の見どころや、Consumer Techトレンドについて報告した。本稿は、展示会場の様子について報告する。
 Media DayにおけるCES(Consumer Electric Show)主催者のCTA(Consumer Technology Association)によると、CES 2023の出展社数は2,200社を超えた。自動車業界を中心にコンサルタント事業を展開しているSBD社によると、1月5日時点での出展社は3,200社以上、自動車関連の出展社数は300社以上で、LVCC Westの展示スペースは完売。参加者は予想を15%上回る11万5,000人だったそうだ。

【図1】出展社数推移(出典: SBD社)

【図1】出展社数推移(出典: SBD社)

 過去最高を記録したCES 2019とCES 2023では出展社数に差があるが、CES 2024はCES 2019の記録を超えそうだ。理由は二つある。一つ目は展示スペースだ。CES 2023はCES 2022に続いてLVCC South(Las Vegas Convention Center South Hall)は閉鎖されていたため、フロアスペースにはかなりの余裕がある。二つ目は中国のゼロコロナ対策の方針転換だ。CES 2023では参加者としての中国人は見かけたが、出展社としての中国企業はCES 2019と比べて少なかった。おそらく中国政府のゼロコロナ対策の方針転換がCES 2023出展に間に合わなかったためだと考える。

 多くのソリューションと出会う機会が増えるのは嬉しいが、今回もEntertainment、Sport、Mediaが集まるC-Spaceに行けなかったので、LVCC Southがオープンしたら、4日間の会期で一人で全ての会場を見るのは難しい。複数人で連携して視察することを考えた方が良さそうだ。

【図2】CES 2023会場マップ(出典: CTA社の資料をもとに筆者が編集)

【図2】CES 2023会場マップ(出典: CTA社の資料をもとに筆者が編集)

2. 主要メディアが伝えないCES2023

2-1. 各会場の概要

 CES 2023の展示会場では、“CES 2023 Tech Trends to Watch“で紹介があったCES 2023におけるキートレンドのEnterprise Tech、Metaverse/Web 3.0、Transportation/Mobility、Health Tech、Sustainability、Gaming and Servicesを含む18カテゴリーの展示が行われた。

 CESでは展示会場ごとにテーマがあり、出展者はそのテーマに合わせて出展ブースを決める。CES 2023がCES本格デビューとなるLVCC WestはEV、EV Charger、センサーなど自動車関連の展示が多く見られた。LVCC NorthはIoT、Vehicle Tech & Advanced Mobility、AI/Robotics、Smart City関連の企業が集まっていた。そして、昨年からDigital HealthcareがVenetian ExpoからLVCC Northに会場を移して規模を拡大させた。LVCC Centerは今年もテレビやカメラといった伝統的な家電が多く展示されている。ここ数年はSONY社がEVを発表して、注目を集めているため、LVCC Centerを訪れる参加者も増えているのではないだろうか。また、Metaverse/Web 3.0関連の展示もGamingに混ざってLVCC Centerで行われている。ただ、Metaverse/Web 3.0があるコーナーは、以前、Microsoft社、Intel社、Qualcomm社が競って場所を確保していたが長続きせず、「曰く付きの場所」と揶揄する人もいる。

 Venetian Expoの2階は、会場の約半分のスペースをSmart Homeが占め、Life Style、Sports Tech、FoodTechと続く。Life Styleのコーナーでは(株)コーセーが初出展していた。(株)コーセーの説明員は、「化粧品販売が第一の目的だが、お客様にお化粧をした時の顔をイメージしてもらうために、東工大と共同開発したプロジェクションマッピングを開発した。」と出展内容について説明してくれた。そして、参加者の注目が最も高いのはVenetian Expoの1階にあるEureka Parkであろう。CES 2023でもEureka Parkの注目度は高く、初日は開場前から入り口前に多くに人が集まり、通路は多くの参加者で朝晩の満員電車なみの混雑だった。他の会場では見かけなかったシリコンバレーの赴任者仲間をEureka Parkでは何人も見かけた。Eureka Parkについては、それだけでレポートができるくらいなので、別の機会に報告する。

【図3】CES 2023における出展内容(出典: CTA社)

【図3】CES 2023における出展内容(出典: CTA社)

2-2. 筆者が注目した展示


(1) Mobility

(a) John Deere社(Mobility/AgriTech)

 Mercedes社、Stellantis社などが広いスペースで展示していたのに対し、Honda社や新興EVメーカーの姿は今年のLVCC Westにはなかった。その代わりに参加者の注目を集めていたのは世界最大の農業機械メーカーのJohn Deere社だ。準備に慌ただしいCES 2023前夜にLVCC Westを訪れた時は、「今年も大きな農業トラクターを持ち込んだな。」としか思わなかったが、1月5日のOpening Keynoteの内容を聞いて見方が変わった。

 展示されていた農業トラクター(2022 John Deere 412R Sprayer)の120feet(約36メートル)アームには36個のセンサー(NVIDIA社のGPUとカメラ)が設置されている。センサーが作物の間に生えている雑草を検知し、雑草だけに農薬を噴霧するようになっている。食の安全性だけでなく、必要な場所に必要なだけ農薬を噴霧できるので、農家にとっては農薬のコストを削減できる。

 John Deere社の展示ブースでは、Robot部門でCES 2023 Innovation Awardを受賞した自動走行農業トラクター(Deere's 8R tractor)の事例紹介もしていた。Deere's 8R tractorは常にインターネットに接続し、トラクター同士がコミュニケーションをとり、同じ敷地内を分担して作業できるようになっている。各トラクターの動きは遠隔で監視できるようになっているため、農家の人たちは実際の畑に行かなくても自宅のオフィスにいながら農業を営むことができる。トラクターに設置されたセンサーは作業の進捗だけでなく、作物の成長具合も検知できるようになっていて、農家は収穫の最大化も望めるそうだ。

 John Deere社は定期的にRFP(Request For Proposal)を公開し、新しい技術・戦略の実現に向けたパートナーを募集している。直近では、昨年末に5G/衛星通信に関するRFP(Request For Proposal)を出したと説明員が教えてくれた。連絡があるかどうかは別として将来のパートナーシップに向けてRFPの担当者に名刺を渡してきた。

 

【写真1】広大なスペース置かれた巨大なトラクターと先進技術を駆使したデモ

【写真1】広大なスペース置かれた巨大なトラクターと先進技術を駆使したデモ

(b) EV関連
(b-1) 新興EVメーカー

 CESではFaraday社、Fiskar社など新興EVメーカーが大規模な展示を行い、多くのメディアが取り上げていたが、今年はLightYear社がそれにあたる。LightYear社は、一回の充電で走行距離を伸ばすためにボンネット、ルーフ、トランクにソーラーパネルを配し、空気抵抗を最大限減らした超軽量なEVを開発している。最新モデルのLightYear2では、フル充電での走行距離が500miles、年間での充電回数を他のEVの1/3回を目指している。$40,000という価格設定もユーザーには嬉しい。

【写真2】LightYear社のソーラー発電とバッテリーのハイブリッドEV

【写真2】LightYear社のソーラー発電とバッテリーのハイブリッドEV

(b-2) Battery/EV Charger

 Panasonic社から姿を消したBatteryだが、CES 2023ではBatteryに関する展示が多く見られた。John Deere社はEVショベルカーなどに搭載するバッテリーを展示していた。このバッテリーは、同社が株式の過半数を取得しているAustriaに本社があるKreisel Electric社製のものだ。
 Stellantis社のCES 2023の展示は2024年に発売予定の2024 Ram 1500 EVなどのデモカーがメインだった。それらのデモカーに囲まれながら、Stellantisが発表している「車両に合わせた4つのBEV(Battery EV) Platform」を見つけた。展示されていたBEV Platformのバッテリー部分には、共同開発に合意し、資金面でもSeries Dに参加しているFactorial Energy社のロゴがあった。

【写真3】John Deere社のバッテリー(左)とStellantis社のEV Platformのバッテリー(右)

【写真3】John Deere社のバッテリー(左)とStellantis社のEV Platformのバッテリー(右)

 新型コロナの影響で、ほとんど展示がなかったEV ChargerもCES 2023では復活した。CES 2023の出展者リストを使って“Charging”で検索しただけでも46社にヒットする。自宅に設置する製品もあれば、充電インフラとして利用する製品もある。その中で気になったのは自社ではブースを構えず、Mercedes Benz社のブースでパートナーシップを発表したChargePoint社だ。Mercedes-Benz社は、ChargePoint社とMN8 Energy社と連携して、米国、カナダの主要都市、フリーウェイ沿線、商業施設などの400ヶ所にあるMercedes-Benz社のHubに太陽光発電ベースのFast Charging Stationを設置すると発表した。Mercedes-Benz社の展示ブースにはMercedes-Benz社のロゴとChargePoint社のロゴが描かれたEV Chargerが展示されていた。
 さらにChargePoint社はLexus社と自宅用EV Chargerの販売について 2023年1月24日に提携している。

【写真4】Mercedes-Banz社のEV Charging Partner

【写真4】Mercedes-Banz社のEV Charging Partner

(2) Smart City

 以前は、Media Dayなどで米国の都市の市長がSmart Cityに関する取り組みについて発表するシーンをよく見かけたが、今ではほとんど見かけない。個人的には展示会場でもこれまでのCESで印象に残った展示はなかった。しかし、CES 2023では少ない出展数に反して、気になるStartupがいた。
 1社目は以前から継続的に議論をしているIsrael発のStartupのNoTraffic社だ。NoTraffic社は米国でもArizona州Phoenix市などでの導入実績がある。NoTraffic社は専用のデバイスを交差点に設置し、交差点近くの様子を同社のクラウドで監視・分析する。そしてパトカーや消防車などの緊急車両を検知した場合、緊急車両を優先的に通過させるように信号機を制御する。また、歩行者を検知した場合は、歩行者用信号を青信号にすることもできる。NoTraffic社はCES 2023ではInnovation Awardを受賞していて、CTAメンバーからの評価も高い。

【写真5】CES 2023 Innovation Awardを受賞したNoTraffic社のソリューション

【写真5】CES 2023 Innovation Awardを受賞したNoTraffic社のソリューション

 2社目もIsrael発のStartupで、V2X(Vehicle to Everything)を提供しているEye-Net Mobility社だ。Eye-Net Mobility社のV2Xはクラウドを通じてSmartphoneなどの歩行者が持つデバイスと自動車が位置情報や移動速度などを交換し、危険を互いに事前に通知する。例えば、路上駐車している車両に隠れて見えない歩行者の存在を自動車の運転手に通知したり、交差点近くにいる歩行者に自動車が近づいていることを通知できる。
 Israelは都市部での慢性的な交通渋滞、路上駐車による交通事故も多いため、このようなソリューションが生まれたと容易に想像できる。

【写真6】開発とビジネスの両面で成長を続けているEye-Net Mobility社

【写真6】開発とビジネスの両面で成長を続けているEye-Net Mobility社

 3社目はOOH(Out-of-home)広告を提供しながら都市データを収集・分析している韓国のMotov社だ。Motov社は車両の屋根の上に液晶モニターと各種センサーおよびEdge AIを内蔵したVRD(Vehicle Rooftop Device)を設置し、VRDの液晶モニターに広告を表示する。また、Motov社はVRDに内蔵した各種センサーとEdge AIを駆使して気温、湿度、騒音、交通量、歩行者、道路の破損状況、交通事故など150以上のデータをプライバシーに配慮しつつリアルタイムに収集・分析・提供している。広告主は同社のDashboardを通じて、人が多く集まる場所に効果的にOOH車両を派遣できる。Motov社のVRDは韓国のソウル市、仁川市、大田市の2,000台以上のタクシーに搭載され、日々都市データを収集している。

 韓国ソウル市は2022年11月にBarcelona市で開催されたSCEWC(Smart City Expo World Congress) 2022でSmart City of 2022を受賞するなど、Smart City先進国だ。Smart City市場において、今後の同社およびその他の韓国Startupの動向に注目が必要だろう。

【写真7】Motov社のOOHと連携した都市データPlatform

【写真7】Motov社のOOHと連携した都市データPlatform

(3) IoT

(a) メディロム社(Wearable/Healthcare)

 日本の(株)メディロム(以降、メディロム社)は充電が不要な24/7で利用できる活動量計”MOTHER Bracelet”を展示していた。MOTHER Bracletは外気と体表面の温度差により発電・充電するBracelet型の活動量計だ。MOTHER Braceletが計測できる項目は歩数、心拍、活動量、体表温、睡眠量の5つで、同社のMobile Appの”MOTHER App”で確認できる。さらに、メディロム社は企業、医療機関、自治体などにSDKを提供している。SDKは企業、医療機関、自治体などが独自のDashboardの開発としている。

 消費電力が少ないウェアラブルデバイスも登場しているが、どこかのタイミングで充電は必要で、充電後のうっかりしたつけ忘れによる計測ロスも少なくない。しかし、MOTHER Braceletは充電が要らないため、体から外す必要がなく計測ロスは起きない。

 同社は、MOTHER Braceletのデータを一元的に集約するGatewayも開発し介護施設などへ提案している。同社のシステムを使うことで、24/7で計測ロスなく入居者を見守ることができるため、介護施設からの問い合わせが増えているそうだ。

 MOTHER Braceletの製造はキヤノンの工場で行っているため、設計のみならず製造も日本で行われている。市場の評価も上々でMakuakeでは目標金額の56倍以上の金額を集めた。さらにメディロム社は2023年1月10日に、ユナイテッドアローズ社とのコラボモデルの発表も行なっている。

【写真8】充電要らずで24/7で利用できるMOTHER Bracelet

【写真8】充電要らずで24/7で利用できるMOTHER Bracelet

(b) biped.ai社(Wearable/Healthcare/AI)

 biped.ai社は視覚障害者が人や物にぶつかることなく安全に移動できるようにするウェアラブルデバイスを開発しているSwitzelandのStartupだ。biped.ai社のCEOのMael Fabienさんは、「bipedは、電柱などの固定された障害物だけでなく、自動車、eScooter、歩行者など近づいてくる障害物も検知・通知できる。bipedは歩行者向けのSelf-driving Car機能を提供している。」と説明した。そして、Maelさんは「最近の自動車は障害物に近づくと”ピピピ”と鳴るよね。bipedも同じように障害物に近づくと”ピピピ”と警告音を発し、振動でも通知する。」とbipedの機能についても教えてくれた。

 bipedはハーネスのような形をしていて、肩にかけて利用する。左右の胸の辺りにあるモジュールにはそれぞれ2個のRGBカメラと深度センサーが内蔵され、これらが障害物を検知する。
 biped.ai社は次のステップとしてTurn-by-Turn Navigationも可能な地図アプリとの連携機能を開発していて、そのための資金調達も行なっている。

 現在はヨーロッパで250人以上のテストを行い、米国進出に向けたFDA認証の取得に向けて活動している。biped.ai社はHRI(Honda Research Institution) EUのPartnerを組み、未来のMobilityの形を共同で探っている。

 最後に、「なぜ、bipe.ai社を立ち上げようと思ったの?」と聞いたところ、Maelさんは「大学に入学した時、大学のキャンパスに目に障害を持つ人が沢山いて、なんとかしたいと思ったのが起業の理由だよ」と裏話を教えてくれた。

【写真9】視覚障害者向けのSelf-Driving機能を提供するbiped.ai社

【写真9】視覚障害者向けのSelf-Driving機能を提供するbiped.ai社

(c) HP powered by Nuheara(Healthcare)

 超党派の議員たちが法制化を進めていたHearing Aids(補聴器)のOTC(Over-the-counter) Salesは、FDA(Food and Drug Administration)の承認のもと2022年10月17日から可能となった。米国では12歳以上の8人に1人(約3,000万人)*1が聴覚に障害があるという調査結果がある。補聴器の購入はこれまでは、医師の診断、聴覚試験、処方箋が必要で、患者にとって時間と医療費の両面で大きな負担になっていた。それを受けて、早速HP社がNuheara社と提携し、HP Hearing Proの発売を発表し、CES 2023ではInnovation Awardを獲得している。

 HP社が提携したNuheara社は2016年に補聴機能を備えたWireless Earbudsを発売したStartupだ。その当時、CESでも話題になったことをよく覚えている。”補聴”というキーワードから同社は”NuheARa”というロゴを掲げてAR関連のカンファレンスにも参加していた。

 Nuheara社は、約1,500ヶ所のWalmart Vision Centerや約1,700ヶ所のRite Aidでの店舗販売に関してInnorScope社とのMoU(Memorandum of Understanding)にサインしている。

*1出典:NIH, https://www.nidcd.nih.gov/health/statistics/quick-statistics-hearing

【写真10】CES 2023 Innovation Awardを受賞したHP社のHP Hearing Pro

【写真10】CES 2023 Innovation Awardを受賞したHP社のHP Hearing Pro

(4) Enterprise

(a) ENEOS社

 CES初出展となるENEOS(株)(以降、ENEOS社)はLVCC Northの同社の大きなブースで3つのプロダクトを展示していた。
1つ目は、Preferred Networks社と共同で開発した材料開発を加速するクラウドベースの汎用原子レベルシミュレーターのMatlantis。開発当初は自社での利用を目的に開発されたが、市場が抱える共通の課題を解決できるとして、Preferred Computational Chemistry社が販売を行なっている。2つ目はEVをターゲットにしたギア保護性能と優れた断熱・冷却性能を兼ね備えた専用フルード。

 3つ目は、ENEOS社がENEOSイノベーションパートナーズ合同会社を通して出資し、ENEOS社のビジネスパートナーでもあるGRC社の液浸冷却型サーバーラック。ENEOS社はGRC社のElectroSafe Fluidパートナープログラムに参加し、ENEOS社の液浸冷却液の有効性の確認を行い、GRC社に液浸冷却用オイルを提供するに至った。BusinessWire誌によるとGRC社のソリューションは世界の21ヶ国で導入されているようだが、「米国ではGRC社の本社があるTexas州Austin市のUniversity of TexasやOregon州のIntel社などで導入されている。」とENEOS社のブースでGRC社の説明員が教えてくれた。

 サーバーなどのICT機器を特殊な液体の中で直接冷却する液浸冷却方式は、消費電力、冷却効率の点で従来の空冷式、水冷式と比べてメリットがあり次世代の方式として注目され始め、Microsoft社やNTTデータ社などが採用を発表している。データセンター事業者がカーボンニュートラルの実現を宣言する中、液浸冷却方式が成長する可能性は高い。事実、台湾のGigaByte社などがサーバーを液体に浸すためのタンクと液浸冷却対応サーバーを発表している。

【写真11】ENEOS社の担当者の平野さん(左)とGRC社の液浸冷却型サーバーラック(右)

【写真11】ENEOS社の担当者の平野さん(左)とGRC社の液浸冷却型サーバーラック(右)

(5) Experience

 CTA(Consumer Technology Association)社のVP, ResearchのSteve Koenigさんは”CES 2023 Tech Trends Watch”の中で”Gaming and Service”をKey Technologyの一つに挙げたが、新たな体験だと思うが、未来を予感させる展示はなかった印象だ。Amazon社の設立者で会長のJeff Bezosさんが体験したことで話題になったMetavu社のソリューションはMetaverseコーナーの展示の中ではビジネスに利用できそうだ。

【写真12】Metavu社のVirtual Glov(左: 外観、右:Jeff Bezosさんが操作している様子)

【写真12】Metavu社のVirtual Glov(左: 外観、右:Jeff Bezosさんが操作している様子)

 SONY社も参入している3D Displayは次のステップに進みそうだ。これまでのようにピラミッド型のディスプレイの中にホログラムを表示するようなNice to Haveな物ではなく、医療機関、産業、教育、建築などで利用できる3D Displayがいくつもあった。

 Leia社の3D Displayは個人をターゲットにした薄型3D Displayで、一般的なStreaming映像もボタンひとつでリアルタイムに2D/3Dの切り替えが可能だ。価格が$1,000以下というのも一般消費者にとっては魅力的だと思う。

 一方、CA州San Mateoに本社があるBREYLON社はB向けをターゲットにした3D Displayを開発している。価格は約$6,000と高めだが、奥行きあるDisplayに鮮明な3Dコンテンツを表示できる。同社のブースではStreaming映像のほか、手術前に医師が患者の臓器を3Dで確認できるデモを見せていた。

【写真13】ブームの兆しを見せる3D Display左: BREYLON社、中: Leia社、右: SONY社)

【写真13】ブームの兆しを見せる3D Display左: BREYLON社、中: Leia社、右: SONY社)

 前出のSteveさんは、「2023年はMetaverse元年ではない。」とコメントしていたことを最後に加えておく。

4. おわりに

 CES 2023も見どころ満載のコンベンションで、新たな気付きやこれまでコンタクトできていなかった企業の事業戦略担当者、メディアとの出会いがあった。

 少し減速しているAutomotiveと多様なソリューションが乱立して次のトレンドが見えないHealthcareがCES 2024ではどうなっているかが気になる。また、コロナ後出展数が激減したDroneの巻き返しも気になる。一足飛びに”空飛ぶタクシー”に向かうとも考えにくいが、Drone Deliveryでは実績が多数生まれているので、新たな展開に期待したい。

◇◆◇

本稿では「CES 2023レポート(Expo編)」として展示会場の様子について報告しましたが、「CES 2023レポート ~Eureka Park編~」は、「InfoCom T&S World Trend Report」2月号でも紹介しています。当サイトでは記事の一部のみ公開中につき(2023年2月10現在)、興味がある方は、以下より「InfoCom T&S World Trend Report」(会員サービス)のサイトをご覧ください。

CES 2023レポート ~Eureka Park編~(2023年1月30日掲載)

 

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