2023.1.30 イベントレポート InfoCom T&S World Trend Report

CES 2023レポート ~Eureka Park編~

1. はじめに

今年も世界最大のConsumer Techの展示会であるCES(Consumer Electronics Show)の時期を迎えた。今年はカレンダーの関係で年明け早々の開催となった。毎回CESおよびその年に注目すべき技術トレンドを紹介するCTA(Consumer Technology Association)のVP, ResearchのSteve Koening(以下、Steve)さんが自身のセッションで「まだ耳に年末のシャンペーンのコルクを抜く音が残っている」と話を切り出すほどだ。

CES 2023は、CES 2022同様にLVCC(Las Vegas Convention Center)とLas Vegas市内のホテルのイベント会場、およびオンラインのハイブリッドで開催された。CESの主催者のCTAは、展示スペースが2022年と比べて50%以上増え、参加者は10万人を超えると予想していた。CES 2020の参加者数が10万8千人(CTA発表)だったので、参加者はコロナ前に戻ったと見ていいだろう。しかし、出展社数は2,200社を超えたという発表があったが、CES 2022の4,419社(CTA発表)には遠く及ばない。

CES 2023では、1月5日から1月8日の4日間で基調講演、記者発表、セミナー、展示などが行われた。展示に目を向けると、Steveさんのセッションでも紹介があったEnterprise、Metaverse/Web 3.0、Transportation/Mobility、Healthcare、Sustainability、Gaming and ServiceやCTAのPresident & CEOのGary Shapiro(以下、Gary)さんが重要と紹介したEureka Parkを含む18のカテゴリーの展示が行われた(図1)。

本稿では、CES 2023のEureka Parkに焦点を当てて、スタートアップの動向や各国の支援の状況について報告する。

【図1】CES 2023における出展内容

【図1】CES 2023における出展内容
(出典:CTA)

2. Eureka Parkの会場

まずは、CES 2023が開催されるLas Vegas市内、およびCES 2023の会場について説明する。

2-1. 会場周辺の様子

各国のスタートアップの展示が集まるEureka ParkはTech Westと呼ばれるエリアにあるVenetian Expoの1階に位置し、他の展示会場と同じく1月5日に開場された。初日は開場を待つ大勢の参加者が入り口付近に集まり、開場とともにEureka Parkの中に吸い込まれていった。これだけを見てもEureka Parkの関心の高さが窺える。ある日本企業の参加者は「Eureka Parkを最優先に見る」と言っていた(図2、写真1)。

【図2】CES 2023の会場マップ

【図2】CES 2023の会場マップ
(出典:CTAの資料をもとに筆者が作成)

【写真1】上:入り口付近でEureka Parkの開場を待つ参加者、下:Eureka Parkに殺到する参加者

【写真1】上:入り口付近でEureka Parkの開場を待つ参加者、下:Eureka Parkに殺到する参加者
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)

 

Eureka Parkの入り口付近には会場マップと出展者リストが掲示されているが、1,000社以上[21]の出展者の中から目的のブースを探すだけでも一苦労だ。通路のあちこちに会場マップが設置されていたが、それでも自分の場所を見失うほどだ(写真2)。

【写真2】Eureka Parkの出展者リスト(左)と会場マップ(右)

【写真2】Eureka Parkの出展者リスト(左)と会場マップ(右)

2-2. 出展傾向

(1)Eureka Parkの背景

Engadget誌などの情報によると、Eureka Parkは2012年にNSF(National Science Foundation)、Startup America Partnership、CNET、UKTI(UK Trade & Investment)がスポンサーとなって始まり、CES 2012のEureka Parkには94社のスタートアップが参加していた。

その後も成長を続けたEureka Parkを一躍有名にしたのはフランス発スタートアップを政府主導でプロモーションするFrench Techに間違いない。Business Wire誌によると、CES 2016のEureka ParkにはEureka Park出展社の30%となる119社のフランスのスタートアップがBusiness France-La France Tech(フランスパビリオン)に出展していた。さらに、CES 2017のEureka Parkでは国別パビリオンとしての出展社数は米国を除くEureka Park出展社全体で約6割の188社となり、CES 2019ではついに米国を抜いて一番多い出展社数となった[2]。CTAは、CES 2023では約170社のフランス系スタートアップがBusiness France-La France Techに出展していると発表している。

CES 2023においても初日の開場直後に”Présidente de la Région Île-de-France | Ancienne Ministre”のValérie PécresseさんがBusiness France-La France Techを訪れ、スタートアップから熱心に話を聞いていた。

French Techに刺激を受けた各国は、それまでは別の会場にパビリオンを設置していたが、数年前からEureka Parkに集結し、Eureka Parkはさながらスタートアップの万国博覧会のようだ(写真3)。

【写真3】スタートアップから熱心に話を聞く ”Présidente de la Région Île-de-France | Ancienne Ministre”のValérie Pécresseさん

【写真3】スタートアップから熱心に話を聞く”Présidente de la Région Île-de-France | Ancienne Ministre”のValérie Pécresseさん

(2)最近の動向

国別出展社数の傾向が近年変化を見せている。CES 2020では米国に次ぐ3位の出展者数だった韓国が2022年、2023年と勢いを増している。韓国政府のパビリオンの担当者に聞いても、どの組織がどのくらいのスタートアップを送り出しているかわからないという。Eureka ParkだけでもKorea Pavilion(KOTRA)、Seoul Metropolitan Government、Seoul National University、Korea Institute of Startup & Entrepreneurship Devなどが出展していた。それに加え、LG社のInnovation組織であるLG NovaやHyundai Motorグループがパビリオンを設けていた。

この2、3年はイスラエル、オランダ、イタリア、スイスもEureka Parkでの存在感を増している。中でもオランダはCES 2023において、若いスタートアップをEureka Parkで支援し、Growth Stage(成長期)に入ったスタートアップをEureka Parkの上のフロアで支援するという2段構えでスタートアップを支援していた(写真4)。

【写真4】オランダパビリオン(左:Eureka Park内、右:Eureka Park外)

【写真4】オランダパビリオン(左:Eureka Park内、右:Eureka Park外)

(3)日本の存在感

日本はJETRO(日本貿易振興機構)を中心としたJ-Startupに加え、株式会社クリエイティヴ・ヴィジョンと大阪商工会議所の共催によって運営されるJAPAN TECHの2つのパビリオンがEureka Parkに出展されていた。

JETROの発表によると、J-Startupには36社のスタートアップが参加したようだ。JETROはEureka Parkでの出展機会の提供のほかに、CES 2023期間中にメディア向けに開催されるCES Unveiled Las Vegas、ShowStoppers、Launch.ITといったイベントへの参加機会を提供し、スタートアップ支援に取り組んでいた(写真5)。

【写真5】上:Eureka ParkにあるJ-Startup、下:ShowStoppers社と連携したピッチイベント(Launch.IT)

【写真5】上:Eureka ParkにあるJ-Startup、下:ShowStoppers社と連携したピッチイベント(Launch.IT)

 

2-3. Eureka Parkにおける注目Startup

ここでは、1月3日のMedia Dayに開催された”CES 2023 Tech Trends to Watch”の中で紹介されたEnterprise Tech、Metaverse/Web 3.0、Transportation/Mobility、Health Tech、
Sustainability、Gaming and Servicesの6つのカテゴリーにおいて、Eureka Parkらしい将来が楽しみなスタートアップを紹介する(写真6)。

【写真6】”CES 2023 Tech Trends to Watch”で紹介された6つの注目テーマ

【写真6】”CES 2023 Tech Trends to Watch”で紹介された6つの注目テーマ

(1)Enterprise Tech - ShareID社

Digital ID市場は、ReportLinker社が”2022年の279億ドルから2027年には707億ドルへと成長する”と予測するほど注目されている分野の一つだ。Digital IDは私たちの生活にも浸透しつつある。CES 2022では、Clear社のDigital IDを参加者のワクチン証明書としていた。また、開発が遅れているが、Apple社は運転免許証をiPhoneおよびApple WatchのWalletアプリに登録できるようにしている。本記事を執筆時にはArizona州、Colorado州、Maryland州の運転免許証とIDカードが登録できる。

ShareID社は、成長著しいDigital IDを簡単に登録、管理、利用ができるプラットフォームを提供しているフランスのスタートアップだ。

同社のプラットフォームはAPIの公開により、さまざまなアプリ、サービスと連携できるのが特徴だ。例えば、ShareID社のプラットフォームに免許証を登録しておけば、レンタカーを予約する時、その都度、免許証をスキャンしなくてもプラットフォームに登録済みの免許証を使って予約できる。

ShareID社はトークン技術とハッシュ技術を使って、Digital IDを管理している。「なぜBlockchainを使わないのか?」と質問したところ、ShareID社のCEO & Co-founderのSara Sebtiさんは「GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)などの個人データの国際標準では個人データの削除が求められる。しかし、Blockchainを使うと登録した個人データを削除できない」と明確に回答してくれた(写真7)。

【写真7】左:ShareID社のブース、中:アプリへのID登録画面、 右:ShareID社の利用事例(レンタカーアプリとの連携)

【写真7】左:ShareID社のブース、中:アプリへのID登録画面、
右:ShareID社の利用事例(レンタカーアプリとの連携)

(2)Metaverse/Web 3.0 - SORGA社

“CES 2023 Tech Trends to Watch”においてSteveさんがMetaverseで注目すべきは"Virtualization"と"Immersion"であると説明していたが、コロナ禍で開催されたCES 2022の方が、Steveさんの説明にあったRetail、Communication、Immersive Marketingに関するソリューションが多く出展されていた印象だ。それでもEureka Parkには没入感がある3D Display、VR HMD、ARアプリなどが多数出展されていた。一方のWeb 3.0はCESがConsumer Techであるという特性から出展数は多くなかった。そんな中、Eureka ParkのBusiness France-La France Techにユニークなソリューションを提供しているスタートアップがいた。SORGA Technology(以下、SORGA)社だ。同社は、BlockchainとQRコードを使って、製品や資産を保護、調査できるソリューションを開発している。

まず、ブランドやメーカーはSORGA社が提供しているQRコードを製品や資産に貼る。その後、QRコードがスキャンされるたびに、位置情報や時間がSORGA社のBlockchainベースのプラットフォームに登録される。

SORGA社のソリューションを使えば、どの製品がいつ、どこで販売されたかだけでなく、二次利用、三次利用についても把握できるため、マーケティングツールとしても活用できそうだ。さらに、ブランドやメーカーにとっては、自社製品をSORGA社のプラットフォームに登録することで、模倣品を容易に識別できるようになり、自社製品を守ることができる。

また、中古品を扱う業者にとっては、同社のソリューションを使うことで、持ち込まれた製品が正規品なのか、盗難品なのかが確認できる。コロナ禍の影響もあってリユース市場が急拡大し、それに伴いリユース品をめぐるトラブルも増えているという調査結果があるが、SORGA社のソリューションはリユース品をめぐる課題を解決してくれるだろう(写真8)。

【写真8】一般商品のマーケティング、不正使用防止のためのSORGA社のソリューション

【写真8】一般商品のマーケティング、不正使用防止のためのSORGA社のソリューション

Web 3.0においてはDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織)、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)など、"分散化"に注目が集まっているが、Blockchainが持つTraceabilityを活かしたSORGA社のようなソリューションはシリコンバレーでも増えている。今後の市場の動向と成長が楽しみだ。

(3)Transportation/Mobility – UP&Charge社

EV市場は世界的に成長を続けている。例えば、S&P Global社は「EV市場はQ2 2022は前期と比べて20.8%、前年同期と比べて50.6%成長している」と報告している。それに伴いEV Charging Station市場も成長している。Business Wire誌は、「2021年の市場規模が144.9億ドルだった当該市場は28.2%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2030年には1281.3億ドルに達する」と報告している。EV Charging市場は成長著しい市場であるが、今後の需要に対応するにはまだまだ足りない。Avere France社などの調査によると、米国では2030年までに1,080万カ所のEV Charging Stationが必要だが、2021年11月時点では9万カ所しかないそうだ。また、充電時のUI(User Interface)も改善の余地があるだろう。Tesla車をTesla Superchargerで充電する場合、Charge Portを開けて、充電ケーブルをCharge Portに差し込む。充電が終わった時は、充電ケーブルを抜いて、Charge Portを閉じる。料金はTesla社のアプリに登録されているクレジットカードに自動的に課金される。充電にかかる作業はたったこれだけだが、その都度自動車から降りて充電ケーブルを差す作業が意外と面倒に感じることもある。コロナ禍では、誰が触ったのかわからない充電ケーブルを触るのを躊躇する人もいるだろう。

そこでUP&Charge社は、コンタクトレスな充電ステーションの提供を目指している。同社のEV Charging Stationは、充電スペースにEVを停めて、ドライバーがアプリで充電開始ボタンをタップすると充電用コイルが地面から迫り上がってきて、EV Batteryに接触すると自動的に充電を始める。充電が終わると充電用コイルは地面に収納されるため、見た目は普通の駐車場と変わらない(写真9)。

【写真9】UP&Charge社の充電用コイルのモックアップ

【写真9】UP&Charge社の充電用コイルのモックアップ

EV Charging市場は、後述するZOOZ社などの蓄電施設やNio社やAmple社のようなEV Battery Swappingなど、多くのプレイヤーによる競争が激化している。競争が激しくなれば、切磋琢磨して技術・市場が洗練されるのでユーザーとしては嬉しい限りだ。

今年はLVCCには多くのEV Chargerが出展されていた。このことを見てもEV Charging市場は注目度が高く、今後も目が離せない市場であることは間違いない。

(4)Health Tech - Scewo AG社

CESでは以前から電動車椅子が多く出展されている。日本のWhill社もCESに出展して大きく飛躍した。昨年は、足だけで操作できる電動車椅子を開発しているPickWheel社に出会って驚いたが、今年もこれまで見たことがない電動車椅子に出会った。スイスのチューリッヒ市に本社を構えるScewo AG社は2輪で自律走行し、階段の上り下りもできる電動車椅子のBROを開発している。展示ブースで表示していたビデオを見る限りでは、2輪でも舗装された道路も未舗装の道路も安定して走行できるようだ。さらにBRO利用者が買い物の時に商品棚の高い場所にある商品にも手が届くように座面が昇降するようになっている。

BROの操作は手元にあるジョイスティックを使って行う。今はマニュアル操作しかできないが、「将来はWhill社の電動車椅子のようにナビゲーションアプリによる自動運転ができるようにしたい」とScewo AG社のCEO & Co-founderのBernhard Winter(以下、Bernhard)さんは語ってくれた。

Bernhardさんが「乗ってみる?」と言ってくれたので、実際に試乗してみた。「2輪なので乗り降りは不安定かな?」と思ったが、車椅子に乗り降りする時はキャタピラーが降りてきてBROを地面に固定してくれるので不安なく乗り降りできた。初めての試乗でもジョイスティックの操作は簡単で、フラットな会場を安定して走行できた(写真10)。

【写真10】左:BROが階段を登る様子、右上:BROに乗るBernhardさん、右下:BROのジョイスティック

【写真10】左:BROが階段を登る様子、右上:BROに乗るBernhardさん、右下:BROのジョイスティック

Scewo AG社は既に1,500万CHF(スイスフラン)を調達している。Bernhardさんによると製品開発、市場拡大にために2,000万CHFの資金を調達中のようだ。階段を登るためのキャタピラーや2輪でMaaS(Mobility_as_a_Service)の提供を目指す事業者の中には、「車椅子のまま乗れる」ことを自社の車両の特徴として説明することが多い。CES 2023でLVCC WestにMaaS車両のコンセプトモデルを展示していた豊田紡織(株)も”車椅子のまま乗れる”を特徴の一つにしている。

(5)Sustainability - ZOOZ社

Fast Charging(急速充電)で注目を集めているTesla社のSuperchargerだが、ホリデーシーズンなどの混雑時や電力事情が悪い地域ではとても時間がかかったり、容量の80%しか充電できなかったりすることがある。ヘブライ語で”移動”という意味のZOOZ社は電力事情が悪い場所でもFast Chargingを可能とする技術を開発している。

ZOOZ社が開発している充電プラットフォームは化学物質を使った蓄電池ではなく、電力エネルギーを回転エネルギーに変換して蓄電・給電するFlywheel蓄電技術を採用している。

ZOOZ社は、Flywheel発電機を設置したコンテナーを充電施設に設置し、電力線から給電してFlywheel発電機のシリンダーを回す。そして充電スポットの利用状況に応じて発電モーターの回転数を制御して給電する。Flywheel技術は以前からある技術で導入事例も多い(写真11)。

【写真11】ZOOZ社のサービスコンセプト(上)とFlywheel技術(下)

【写真11】ZOOZ社のサービスコンセプト(上)とFlywheel技術(下)

化学バッテリー蓄電池よりも利点が多いと言われているFlywheel蓄電装置だが、摩耗によるエネルギー損失や運用コストといった課題があるようだ。ただ、Flywheel蓄電装置はEV充電のような小規模給電には適していると思うので、課題を克服して成長してほしい。

(6)Gaming and Services - BLAZEPOD社

Steveさんが“CES 2023 Tech Trends to Watch”で紹介したゲームは、伝統的なゲーム専用機、PCゲーム、スマートフォンゲーム、VRゲームなどだ。Eureka ParkでもVR HMDをつけて、VRゲームを体験する参加者をあちこちで見かけた。ゲーム専用機、PCゲーム、スマートフォンゲーム、VRゲームは皆さんの周りにもあると思うので、ここではEureka ParkらしいGamificationの要素を持つトレーニングソリューションを開発しているBlazepod社を紹介する。Blazepod社は反射神経や動体視力のトレーニングを目的としたIoTデバイスを開発している。Blazepod社のPodと呼ばれるIoTデバイスにはLEDライトが組み込まれていて、スマートフォンアプリのトレーニングプログラムに従って点灯する。ユーザーはモグラ叩きの要領で点灯したPodをタッチする。スマートフォンアプリは、トレーニングプログラムの提供に加え、Podが点灯してからタッチするまでのリアクションタイム、間違い、見逃しを分析し、ユーザーの反射神経、動体視力のパフォーマンスを可視化する。スマートフォンアプリのトレーニングプログラムは、目的に合わせてカスタマイズできるようだ。ディスプレイに表示される点をタッチして反射神経、動体視力をトレーニングするソリューションはよく見かけると思うが、それらは2次元のトレーニングしかできない。しかし、Blazepod社のPodは、立体的に配置することができるため、反射神経、動体視力のトレーニングに加えて、実際にスポーツをする時に必要な筋力のトレーニングもできる。

Blazepod社は1人用のトレーニングプログラムに加えて、グループでトレーニングできるプログラムも提供していて、チームやトレーニングジムの会員が一緒にトレーニングできるようになっている。

Blazepod社は、サッカー、フィットネス、バスケットボール、格闘技、テニスに対応したトレーニングプログラムを提供している。その他にも、身体的なリハビリが必要な人や認知症を患っている人向けのプログラムも提供している(写真12)。

【写真12】Blazepod社のSimon Jacobsさんのデモの様子(左)とスコア(右)

【写真12】Blazepod社のSimon Jacobsさんのデモの様子(左)とスコア(右)

2-4. 過去からの教訓

Eureka Parkでは斬新なアイデアや製品が多く集まる。しかし、生き残れる製品はとても少ない。それはEureka Parkに出展しているスタートアップの製品に限らず、大企業の製品であっても同じことだ。当時は発売前に話題となり、TVCMや広告を見ない日がなかったほどの製品であっても、実際に発売されると鳴かず飛ばずで、いつの間にか話題にもならなくなった製品は星の数ほどある。

Eureka Parkの入り口付近にブースを構えていたPrelaunch.com社は、昨今は「オワコン」と呼ばれる成功しなかった製品を展示してマーケティングの重要性を訴えていた。文化の違いはあれど、「これは売れないよね」と思う製品もあれば、「こんな製品もあったな。これも売れなかったのか」と懐かしくなる製品も並んでいた(写真13)。

【写真13】Prelaunch.com社のブース

【写真13】Prelaunch.com社のブース

最近は、スタートアップだけでなく大企業でもKickstarterやIndigogoなどのクラウドファンディングのキャンペーンを活用してKPIを設定し、市場から支持されたものをMass Productionするといった手法をとる会社は少なくない。ハードウェアは実際に製品を作るので頻繁に設計変更するのは難しいかもしれないが、作り手の信念とユーザーの共感とのバランスが、これからのモノづくりには重要だと思う。

3. おわりに

本稿では注目度が年々高まっているEureka Parkの様子をお伝えした。オランダ、イタリア、韓国のように拡張を続ける国もあれば、毎年のように出展していたがパビリオンが今年は見当たらなかった国もある。それらのパビリオンには毎年斬新なサービスを出展するスタートアップが集まっていただけに、CES 2024での再会を期待したい。

[1] CTA発表 https://www.ces.tech/topics/topics/startups.aspx

[2] Forbes誌 https://www.forbes.com/sites/ jeanbaptiste/2019/01/11/ces-2019-france-has-the-largest-contingent-of-tech-startups-at-eureka-park-overtaking-the-u-s/?sh=4239124c67d4

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。InfoComニューズレターを他サイト等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。また、引用される場合は必ず出所の明示をお願いいたします。

情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。

調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。

ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら

関連キーワード

小室智昭 (Tom Komuro)の記事

関連記事

InfoCom T&S World Trend Report 年月別レポート一覧

メンバーズレター

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

メンバーズ登録(無料)

各種サービスへの問い合わせ

ICTに関わる調査研究のご依頼 研究員への執筆・講演のご依頼 InfoCom T&S World Trend Report

情報通信サービスの専門誌の無料サンプル、お見積り

InfoCom T&S World Data Book

グローバルICT市場の総合データ集の紹介資料ダウンロード