2022.12.8 ICT経済 ICTエコノミーの今

ICT経済は8期連続で増加。ICT財生産は増加に転じる【InfoCom ICT経済アップデート】

情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について2022年7-9月期がまとまりましたのでご報告いたします。

【2022年7-9月期のポイント(前年同期比)】

2022年7-9月期のICT経済は前年同期比2.8%増と8四半期連続でプラス成長となった(4-6月期:同1.0%増から1.8ポイント増加)。ICTサービスは前年同期比2.3%増と2期連続で増加し(4-6月期:同1.8%増から0.5ポイント改善)、ICT財は同4.2%増と増加に転じた(4-6月期:同マイナス1.6%から5.8ポイント改善)。

今期のICT経済は、財生産は半導体・フラットパネル製造装置等が好調で、増加幅が拡大した上、ICT在庫の増加幅は縮小している。加えて、ICTサービスは、情報サービス業が牽引し、増加幅が拡大した。2022年10-12月期以降の経済の先行きについて、米国の金融引き締め、欧州の物価高騰やエネルギー不足を背景にした景気後退の可能性、中国のゼロコロナ政策の影響による経済活動の低迷により、海外経済減速の下押し圧力がある。今後のICT経済の先行き不透明感は続くものと想定される。

図表1 ICT関連経済指標の推移

図表1 ICT関連経済指標の推移

需要サイドについては、ICT消費は5期連続で減少した。パソコン以外の項目が横ばいないし減少となった。特に通信・通話使用料の減少が大きい。一方、ICT設備投資(民需)は電子計算機等の増加幅が縮小したものの、5期連続で増加した。ICT輸出は8期連続で増加した。背景には、5GやIoT等向け半導体等電子部品の需要増を背景にした半導体製造装置の需要の増加がある。ICT輸入も8期連続で増加した。ただし、数量ベースでは輸出は2期連続、輸入は4期連続のマイナス成長となった。輸出入ともに金額ベースで増加を維持しているものの、円安基調である点を考慮する必要がある。数量ベースの動きから捉えると、輸出は海外経済の減速を背景に弱めの動きが続くことが予想される。

【2022年7-9月期の動向】

(ICT経済総合)

  • 国内ICT経済は前年同期比プラス2.8%と8期連続で増加し増加幅は拡大した。前期(4-6月期)に比べて1.8ポイント改善した(図表2)。

(ICTサービス)

  •  ICTサービスは前年同期比プラス2.3%と2期連続で増加した。前期(4-6月期)に比べて0.5ポイント改善した(図表3)。

  • 受注ソフトウェアは増加幅が縮小したものの、ゲームソフトは増加に転じ、そのほかの情報処理・提供サービス業は増加幅が拡大した。

(ICT財)

  • ICT財は前年同期比プラス4.2%と増加に転じ、前期(4-6月期)に比べて5.8ポイント改善した(図表4)。

  •  集積回路は減少に転じ、電子部品は減少幅が拡大したものの、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置は増加幅が拡大した。

(ICT在庫)

  •   ICT在庫は前年同期比プラス22.1%と増加したが、前期(4-6月期)に比べると増加幅が4.4ポイント縮小した(図表5)。

  • 集積回路、電子デバイスの増加幅が縮小した。

(ICT消費)

  •  ICT消費は前年同期比マイナス4.2%と5期連続で減少したが、前期(4-6月期)に比べると3.9ポイント改善した(図表6)。

  • スマートフォン等の通信・通話使用料は減少幅が縮小し、パソコンは増加に転じた。

(ICT設備投資)

  • 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比プラス6.7%と5期連続で増加した。前期(4-6月期)に比べて3.6ポイント縮小した(図表7)。

  • 電気計算機等は増加幅が縮小したものの、通信機は減少幅が縮小した。

  • 官公需は前年同期比マイナス6.5%と減少に転じた

(ICT輸出入)

  •  ICT輸出(金額ベース)は前年同期比プラス18.8%と8期連続で増加した(図表8)。半導体等電子部品は増加幅が縮小したものの、半導体製造装置は増加幅が拡大し、通信機は増加に転じた。数量ベースでは同マイナス0.8%と2期連続で減少した。

  •  ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス33.5%と8期連続で増加した(図表9)。半導体等電子部品は増加幅が縮小したものの、通信機は増加幅が拡大した。数量ベースでは同マイナス0.3%と4期連続で減少した

図表2  ICT関連財・サービス総合指標の推移

図表2  ICT関連財・サービス総合指標の推移


図表3 第3次産業活動指数に占めるICT関連サービスの寄与度

図表3 第3次産業活動指数に占めるICT関連サービスの寄与度


図表4 鉱工業生産に占めるICT関連品目の寄与度

図表4 鉱工業生産に占めるICT関連品目の寄与度


図表5 ICT関連在庫循環図(四半期)

図表5 ICT関連在庫循環図(四半期)


図表6 家計消費支出(家計消費状況調査)に占めるICT関連消費の寄与度

図表6 家計消費支出(家計消費状況調査)に占めるICT関連消費の寄与度


図表7 設備投資※(民需、除く船舶・電力・携帯電話)に占めるICT関連機種の寄与度

図表7 設備投資※(民需、除く船舶・電力・携帯電話)に占めるICT関連機種の寄与度
※ここでいう設備投資は機械受注統計で代用している。


図表8 輸出総額に占めるICT関連輸出(品目別)の寄与度

図表8 輸出総額に占めるICT関連輸出(品目別)の寄与度


図表9 輸入総額に占めるICT関連輸入(品目別)の寄与度

図表9 輸入総額に占めるICT関連輸入(品目別)の寄与度


参考 ICT関連経済指標に採用した項目

参考 ICT関連経済指標に採用した項目

 

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【関連サイト】ICT経済分析

「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容

  • 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
    財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。
  • 情報通信の在庫循環分析
    情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。

    ※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。

株式会社情報通信総合研究所 ICT経済分析チーム
主席研究員 野口正人
上席主任研究員 手嶋彩子
主任研究員 山本悠介、鷲尾哲
研究員 張怡

※本稿の内容に関するお問い合わせは、ICT経済分析チームまでお願いいたします。

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