2022.12.27 5G/6G ICR研究員の眼

ネットワークのオープン化に向けた取り組み

はじめに

5G の展開を機に、世界的にネットワークのオープン化(Open RAN)・仮想化(virtual RAN)の取り組みが進展している。総務省は、オープン性を有する基地局導入への優遇税制、O-RAN ALLIANCEの仕様に準拠した研究開発などを通じて、オープンな基地局の普及を推進している。[1]  また、2030年頃に実用化が見込まれるBeyond 5Gにおいては、多様なユースケースに柔軟に対応するため、ネットワークのオープン化が一層求められる。産学官の連携によりBeyond 5Gを推進する「Beyond 5G 推進コンソーシアム」では、Open RAN推進分科会が開催され、日本のOpen RANの取り組みについて議論している。[2]  

日本のモバイル通信事業者(MNO)各社の取り組み

日本のMNO各社は5G展開を進めるとともに、標準化団体、ベンダーなどと協力して、ネットワークのオープン化に取り組み、海外通信事業者等に向けた海外展開も推進している。

NTTドコモ

NTTドコモは、2021年2月より、Open RAN の海外展開を目的とした「5GオープンRANエコシステム」をグローバルベンダー各社と協創し、柔軟で拡張性が高い仮想化基地局(vRAN)の海外通信事業者への提供などに向けた取り組みを推進する。また、NTTドコモは、海外の通信事業者向けに、仮想化基地局の検証環境である「シェアドオープンラボ」を2022年2月より提供している。[3]  

KDDI

KDDIは、Telecom Infra Projectにおける開発・検証施設であるTIP Community Labを2020年に日本に開設するなど、ネットワークのオープン化に取り組んでいる。KDDIは、2022年2月、Samsung、富士通と共同で、商用ネットワークに接続するオープン化した5G スタンドアローン (5G SA)の仮想化基地局によるデータ通信に成功した。[4]  

ソフトバンク

ソフトバンクは、完全仮想化されたプライベート5Gの商用化に向けて、研究施設「AI-on-5G Lab.」を半導体メーカーNVIDIAと合同で2022年に開設することを発表した。ソフトバンクは、同研究施設での実証を通して、エンド・ツー・エンドのプライベート5G向けソリューションの開発や、完全仮想化されたプライベート5Gの商用化を推進するとしている。[5]  

楽天モバイル

楽天モバイルは、楽天シンフォニーを子会社として設立し、5G 対応の完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークのプラットフォーム(Rakuten Communications Platform:RCP)の海外展開を進めている。楽天モバイルと楽天シンフォニーは、欧州・中東アフリカ地域の通信事業者等に向けて、Open RAN技術の展示を行う「Open RANカスタマーエクスペリエンスセンター」を、2023年3月までに英国に開設することを発表した。[6]  

通信事業者連携による取り組み

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクおよび楽天モバイルは、2022年12月に、O-RAN ALLIANCEが定める標準仕様に基づく試験・認証拠点「Japan OTIC(Open Testing & Integration Centres)」を、横須賀市に開設した。[7]  これまでに欧州などで開設されたOTICは、主要通信事業者1社が主導するが、複数の通信事業者が共同で設立・運営するのは世界初とされる。欧州においては、通信事業者5社(ドイツテレコム、Orange、Telefonica、Vodafone、Telecom Italia Mobile)によるOpen RANの共同推進、複数の通信事業者によるドイツでの共同Open RANラボ開設などが行われている。[8]  今後も、ネットワークのオープン化主導に向けた事業者間の連携が進むとみられる。

(出所)
[1] GO! 5G ウェブサイト
https://go5g.go.jp/sitemanager/wp-content/uploads/2021/02/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%81%AA%E5%9F%BA%E5%9C%B0%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2.pdf

[2] Beyond 5G 推進コンソーシアム ウェブサイト
https://b5g.jp/organization.html

[3] NTTドコモ ウェブサイト
https://ssw.web.docomo.ne.jp/orec/5g_open_ran_ecosystem/

[4] KDDIウェブサイト
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/02/26/4297.html
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2022/02/18/5895.html

[5] ソフトバンク ウェブサイト
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20211110_02/

[6] 楽天モバイル ウェブサイト
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2022/1121_01/

[7] 横須賀市 ウェブサイト
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4430/documents/20221220_japan-otic.pdf

[8] ドイツテレコム ウェブサイト
https://www.telekom.com/en/media/media-information/archive/recommendations-for-open-ran-640862
https://www.telekom.com/en/media/media-information/archive/consortium-establishes-open-lab-i14y-640186

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