2016.8.2 地方創生 ICR View

Wi-Fi利用環境のさらなる向上に向けて〜OKINAWA FREE Wi-Fi(沖縄全島接続アプリ)による実証実験〜

観光都市とWi-Fiをめぐる状況

観光庁が平成23年に「訪日外国人は無料Wi-Fiがなくてとても困っている」(「外国人旅行者に対するアンケート調査結果」より)と問題を提起して以降、各地で公共的な無料Wi-Fiの整備が進められてきた。ホテルなどの宿泊施設や交通機関、商業施設はもとより、自治体や地域の公的団体が直接Wi-Fiを整備する事例も増加している。

ただ、市町村や交通機関などの企業・施設単位でのWi-Fi整備が進められたことは、「それぞれのWi-Fiによって利用方法などが異なる」という課題を生むこととなった。日本における無料Wi-Fiは、公的なものも含めて比較的大規模に提供されているものであれば、利用する際に何らかの利用者登録が必要になっていることが多い。例えば、名前やメールアドレス、SNSアカウントを入力したり、メールアドレスに登録用のURLリンクを送ってもらうような手続きが求められる。極端に言えば「市町村を跨ぐたびにWi-Fiの利用者登録を行う」ことになったり、「電車を乗り換えるたびに別のWi-Fiを登録しなおす」ことになる。海外来訪者の多くがスマホを持ち、SNSを利用したがっている現状においては、あまりにも不便である。この課題を解消するために、Wi-Fiの統合環境が期待されている。

沖縄県におけるWi-Fi統合の動き

我が国有数の観光地である沖縄県は、外国人来訪者に向けたサービスとしてWi-Fiの重要性が以前より強く認識されているためか、その整備も進んでいる地域といえる。我が国有数の観光地である沖縄県は、外国人来訪者に向けたサービスとしてWi-Fiの重要性が以前より強く認識されているためか、その整備も進んでいる地域といえる。自治体が運用するWi-Fiは、那覇市や沖縄市など13地域にもなる(NTT西日本調べ)。また、沖縄観光コンベンションビューローの支援事業もあり、県内宿泊施設のWi-Fi整備率は89.6%にも到達している(沖縄県庁調査による)。もちろん、バスや商業施設などでもWi-Fiを利用できるスポットがある。

このような状況の中、沖縄県庁も利便性の高いWi-Fiサービスの提供に取り組み始めた。具体的には「沖縄県が推奨する無料Wi-Fiサービス事業」として、「Be.Okinawa_Free_Wi-Fi」を冠したSSIDを送波する事業者を募集している。本サービスは「県の財政負担無しに整備・運用される」事業であるが、その第一号事業者として沖縄セルラー電話株式会社が本年5月27日に指定されている。

OKINAWA FREE Wi-Fi(沖縄全島接続アプリ)による実証実験

沖縄観光コンベンションビューロー、那覇市、沖縄市、沖縄大学(メディア研究会)、NTTBP、NTT西日本沖縄支店、そして情報通信総合研究所は、スマホアプリ「OKINAWA FREE Wi-Fi(沖縄全島接続アプリ)」によるWi-Fi統合環境の実証実験を開始している。Wi-Fi統合環境の実現には、「共通のSSIDを送波する」方式と、「認証サーバーやアプリを利用して統合環境を作る」方式が考えられる。我々は、アプリを利用する方式によりメリットがあると考えている。具体的には、「既存のWi-Fi設置者への負荷が少ないこと」と、「アプリを共通基盤としたサービス展開が容易」なことがあげられる。

今回の実験では、「Japan Connected free Wi-Fi」をカスタマイズしたスマホアプリを活用する。アプリ上で一度利用者登録処理をしておけば、県内2000か所のWi-Fiをワンタップで利用できるようになり、利便性向上に大きく寄与する。今後、実証実験参加者の拡大によって、さらに利用できるWi-Fiは増加することになる。

また、Wi-Fiは単にインターネットに接続するだけのツールではなく、観光来訪者に様々なサービスを提供する基盤となりうる。今後、このアプリによる高度な観光情報の提供や、周遊・誘客サービスへの活用なども試行する予定である。加えて、広告の導入による収益モデルの検討や、収集されたビッグデータの活用による観光振興政策の検討なども行なっていく。

実証実験への期待

この実証実験では、以下のようなサイクルが実現できることを期待している。

【実証実験で期待するサイクル】

アプリによる統合環境によりWi-Fiの使い勝手が向上すれば、Wi-Fiの利用者も増えて、その結果Wi-Fi設置もさらに促進される。本当に利便性が高くなるなら、アプリの利用者数も増加し、その結果としてアプリ自体の情報発信基盤・広告基盤としての価値が高まることになる。このような動きがさらにアプリとWi-Fiの利用を促進することは、ビッグデータのさらなる蓄積を生むことにつながる。

2016年7月27日に開始されたこの実証実験では、まずは来年3月に向けて以下のような実証に取り組む予定である。

実証項目(予定)

  • 利用者実態分析、アンケート
  • 利用客(観光客)の動態分析
  • スタンプラリー、クーポン配信、ダウンロード特典
  • 観光情報の発信(多言語観光音声ガイド、観光サイネージソリューション)
  • ビックデータ利活用に向けた情報提供、データ解析・検証
  • 収益モデル検討におけるシミュレーション・コンサルティング 等

この実証実験については、情報通信総合研究所ホームページ(https://www.icr.co.jp/okinawa-wifi/index.html)で情報発信を行うことになっている。ご興味のある方は、ぜひご覧いただきたい。

沖縄全島接続アプリ共同実証実験サイト

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