2022.10.28 地方創生 InfoCom T&S World Trend Report

地域発コロナ後の観光を考える(2) ~新たな観光・まちづくりを考える神戸市および倉敷市での 大学生たちの取り組み

Jacqueline macou from Pixabay

本稿は、本誌2022年8月号(以下、「前号」)で紹介した「地域発コロナ後の観光を考える(1)~倉敷美観地区を舞台として大学生たちが考える新たな観光サービス」の完結編にあたる。前号では、NTTドコモ(以下、「ドコモ」)が地域課題解決に資する取り組みの一環として、学生発意の新たな観光サービス創出の促進を目指し、全国各地で大学生・大学院生を対象とした演習プログラム(一連の授業)を提供していることを紹介し、その具体例として岡山大学の大学生・大学院生たちの倉敷美観地区を舞台にした活動を取り上げた。演習プログラムを通じて学生たちが考案したビジネスアイデアに触れながら、「こうした取り組みが地域特性をふまえた新たな観光サービス・ビジネスを創出するのに有効なアプローチの一つとなる」と総括し、「最終的に(学生たちが導出したアイデアが)どのようなプランに結実するかについてはまた別途リポートする」と結んだ。

前号で紹介したとおり、この岡山大学の学生たちの倉敷市における取り組みに先行し、ドコモでは、神戸市の観光促進につながるアイデア創出に向けた地元の関西国際大学の学生たちの活動を支援してきている。倉敷市での取り組みは、ドコモの神戸市での地域課題解決の取り組みのうち、観光をテーマとした活動の水平展開先の一つという位置づけだ(なお、ドコモの神戸市における観光以外のテーマでの地域課題解決に向けた取り組みについては本誌2021年12月号2022年1月号を参照されたい)。

こうした背景をふまえ本稿では、前半で、前号で紹介した岡山大学の学生たちが考案したアイデアが最終的にどう洗練されてビジネスプランに昇華したのか、後半では、先行して取り組んでいた関西国際大学の学生たちが、演習プログラムを通じて地元神戸市の観光促進に向け、どのようなビジネスプランを創出したのかを報告する。そして、この種の演習プログラムを充実させ、一層広げていくことで、地域実情をふまえた観光サービス創出や観光課題の解決に寄与する可能性を提起して完結編の結びとしたい。

岡山大学の学生たちによるアイデアのブラッシュアップ

前号での報告のとおり、2022年6月18日、6~7名から成るA、B、Cの3班に分かれた学生たちは班ごとに倉敷美観地区でのフィールドワークを行い、各班でのディスカッション等を経てビジネスプランの基となるアイデアをまとめた。各班のアイデアは次の表1のとおりだった。

【表1】岡山大学の学生たちによる観光課題解決に向けたアイデア(前号の再掲)

【表1】岡山大学の学生たちによる観光課題解決に向けたアイデア(前号の再掲)
(出典:筆者作成)

各班には学生たちの求めに応じて助言を行うメンター役として、ドコモ社員が1人ずつ付く態勢がとられ、表1のアイデアが取りまとめられた6月18日以降、7月上・中旬はビジネスプラン化に向けたアイデアのブラッシュアップや提供するサービスの中で利用する技術の体験(ドコモ社員によるデモンストレーション)(図1参照)等に充てられた。当初まとめられたアイデアはビジネスプランとして検討する過程で取捨選択された結果、残らなかったアイデアもある。学生たちはそうしてブラッシュアップしたビジネスプランを資料化し、7月25日の最終発表会や後述する7月30日の関西国際大学の学生たちとの合同発表会を経て、一連の演習プログラムは完結を迎えた。

【図1】技術体験の様子(VRヘッドセット)

【図1】技術体験の様子(VRヘッドセット)
(出典:NTTドコモより提供)

以下では班ごとに最終的にまとめられたビジネスプランを紹介する。

岡山大学A班:体験型イベント開催でエリア内回遊性向上と滞在時間増を目指す

A班が倉敷美観地区の観光課題として注目したのは、観光客の滞在時間の短さ、市内宿泊客数の伸び悩み、遠距離・県外からの来訪者数の少なさだ。その理由として「倉敷の夜を楽しもう!」と思えるイベントの不足を当初仮説として設定した。6月18日の現地調査・ヒアリングでは、コロナ禍でイベント数が減少したこと、ツアーを利用する中高年層が減り、一般観光客としての若者が増える形で観光客層が変化したこと、層として特に多いのが30~50代の家族連れであることなどを明らかにした。そうした現状をふまえ、夜間の体験型イベントを増加させることにより観光課題を解決できると考えたのがA班のプランの特徴だ(図2参照)。

【図2】A班が導出した観光課題解決策のイメージ

【図2】A班が導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

倉敷美観地区には、倉敷ならではの町並み、徒歩圏内で観光スポットを歩き回れるアクセス性の良さがあり、こうした特長を生かした具体的なイベントとして、A班は肝試し、絵作り体験、複合観光施設である倉敷アイビースクエアでの音楽フェスを提案した。肝試しでは昼間とは異なる町の雰囲気を活用しARメガネも導入して新たな観光体験を提供し、主な客層である家族連れにおいても、子供から大人までが一緒になって楽しめる点を訴求した。また、絵作り体験では、観光客に昼間のうちにマスキングテープを活用して絵を制作してもらい、その作品が夜にはプロジェクションマッピング等でデジタルアートとして発表される仕組みにして、観光客が夜まで待つことによる滞在時間増の効果を意識した。その他、音楽フェスも含め、これらのイベントを単発で開催するのではなく半券配布・スタンプラリー等で連携させて同時開催することにより、倉敷美観地区内の回遊性向上や宿泊まで見据えた滞在時間延伸への期待が高まるとした。

岡山大学B班:ワンストップマップの提供で観光客・店舗双方にメリットをもたらす

B班が倉敷美観地区の観光課題として注目したのは、現在観光客向けに提供されているマップが十分に活用されていない点だ。フィールドワークでの聞き取り調査において、観光客からは「どこに何があるか分からない」「店の中が見えづらく、何の店か分からないので入りづらい」という声を、店舗からは「情報発信がうまくいかない」「お客様から『○○はどこにある?』とよく聞かれる」という声を拾い、観光客と店舗間の情報ギャップが倉敷美観地区にとって機会損失になっている点を問題視した。そうしたギャップを埋めるのに「どこに何があるか」をしっかり伝達できるマップを提供できれば観光課題解決につながり、機会損失を解消できると考えた(図3参照)。

【図3】B班が導出した観光課題解決策のイメージ

【図3】B班が導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

そこでB班が提案したのが、「まるっと一日美観地区 ワンストップマップ」と称するスマホアプリだ。アプリの主要顧客を、倉敷美観地区を初めて訪れる人や明確な目的を持たずに倉敷美観地区全体を観に来た人を対象に、「これさえあれば一日中倉敷美観地区を満喫できる」アプリとして提供する。既に様々なメディアを通じて提供されている情報を一つのスマホアプリに集約し、情報活用の利便性を高めるための複数の機能を実装して情報量の豊富さ、必要な情報へのアクセス性の高さ、分かりやすさを追求するとした。利便性を高めるための機能の一つが、ユーザーの興味に合わせて様々なパターンのマップを表示できる機能だ。加えて、観光の計画を立てる際にアプリ内の情報に付けたブックマークや、観光中の実際の来店履歴情報に基づき、ユーザーの嗜好や傾向に合わせたお勧め情報が提供されるといった機能も具備。口コミを投稿したり、キャンペーンに参加したりというアプリの活用度合いに応じてポイントを付与し、アプリを旅前、旅中、旅後の一連の時間軸上で継続的に使ってもらえるよう工夫を講じたのも特徴だ。

岡山大学C班:リストバンド型キャッシュレス決済でエリア内の周遊性を高める

C班が倉敷美観地区の観光課題として注目したのは、体験型サービスの少なさと着物レンタルの知名度の低さ、事業者間の相互送客の少なさだ。フィールドワークでの聞き取り調査において、観光客からは「着物レンタルがあることを倉敷に来て初めて知った」「街歩きだけで満足、ブラブラするだけ」といった声があり、体験型サービスが少なく、着物レンタルの知名度が低いこと、そもそも店舗利用が少ないことを課題として設定した。また、事業者への聞き込みからは「他店舗や異業種との連携はない」という声を拾い、事業者間の相互送客は少ないと認識した(図4参照)。

【図4】C班が導出した観光課題解決策のイメージ

【図4】C班が導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

そこでC班が提案したのが、「美-Can Payment」と呼ぶ倉敷美観地区内で利用可能なリストバンド型のキャッシュレス決済の仕組みだ。滞在時間が長くなればなるほど、決済時に適用される割引率が上がっていくのが特徴で、着物レンタルの割引にも使える。気軽に着物レンタルを活用してもらい、倉敷美観地区内で映える着物を着て手ぶらでお得に街歩きをしてもらえる環境を整えることで、観光客の倉敷美観地区内での滞在時間の延長と観光消費額の増大を目指す。

関西国際大学の学生たちによる神戸の観光活性化に向けた検討

続いて以下では、岡山大学の学生たちの倉敷市における取り組みに先行して行われた神戸市における関西国際大学の学生たちの取り組みを紹介する。

関西国際大学は1998年に設置された比較的新しい兵庫県の私立大学の一つで、国際コミュニケーション学部を含む6つの学部を有する。神戸市、尼崎市、三木市にそれぞれキャンパスがあり、神戸は地元の一つにあたる。今回、演習プログラムに参加した学生たちは国際コミュニケーション学部の観光学科に所属しており、観光学や観光ビジネスについて学ぶ専門性を有する学生たちだ。普段から地元観光企業との交流や連携もあって、神戸という都市についての理解も深い。

ただ、神戸は様々な顔を持つ日本有数の都市の一つであり、観光スポットや観光資源が豊富なだけに、課題を見つけ出し、新たな観光促進策を導き出すのは容易ではなかったはずだ。演習プログラムは、4月下旬から7月末までの3カ月強の期間をかけて、対象エリアの調査や課題の分析・共有、アイデア原案の作成と順を追って展開された。演習プログラムでは神戸の特定のエリアに限定するという制約は設けず、結果として各チームが重複しない形でエリアを選定してアイデアの検討が進められ、最終的には以下表に示すアイデアの創出に至った(表2参照)。

【表2】関西国際大学の学生たちによる観光課題解決に向けたアイデア

【表2】関西国際大学の学生たちによる観光課題解決に向けたアイデア
(出典:筆者作成)

関西国際大学Aチーム:ARアートツアーで魅力ある観光スポット化を図る

Aチームは、神戸市内のうち課題の所在として北野町・旧居留地エリアに注目した。特に北野ではリピーターとなる観光客の割合が市内の他の観光スポットと比べて低い点を問題視し、その原因をヒアリング調査によって探った。その結果、坂道の多さや周遊のしづらさが観光客のリピート訪問を妨げている可能性が浮上したが、全国には二寧坂(京都市東山区)やオランダ坂(長崎市)のような坂道のある観光スポットも存在することから、その違いを比較分析。更なる調査を重ね、北野におけるイベントや観光ツアーの少なさが観光客の期待に応えていない点を課題と捉えた。そこで、これを解消するアイデアとしてARデジタルアートを活用したARツアーを考案した(図5参照)。

【図5】Aチームが導出した観光課題解決策のイメージ

【図5】Aチームが導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

街全体をデジタルアートの活用によって彩り、それらをコンテンツとして楽しめるARツアーの参加料金を調査に基づき2,000円に設定。このARツアーの提供により周遊性を創造し、異日常性や非現実性を求める20~50代の幅広い年齢層を取り込み、リピーター化を図る考えだ。

関西国際大学Bチーム:ユーザー参加型でお洒落な街としてのプレゼンスを向上させる

Bチームは、三宮や元町に代表されるお洒落な街としての神戸を前面に押し出し、ファッションを軸にしたまちづくりを進めていくアイデアを提示した。お洒落な街のイメージがあるにもかかわらず、「神戸ファッション」の具体的なイメージが共有されていない点、「ファッショナブルな街」としての発信力が弱い点、神戸オリジナルブランドの知名度が低い点を問題視し、これを解消しようとするアプローチでアイデアを磨いていった(図6参照)。

【図6】Bチームが導出した観光課題解決策のイメージ

【図6】Bチームが導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

具体的な解決策として、神戸の街なかを舞台にARグラスで見られる仮想ランウェイを設置、有料会員であれば、そのランウェイ上で自分のファッション・コーディネートの動画を撮影して発信し、それらの動画を誰もが視聴できるプラットフォームを構築する。プラットフォームを通じ様々なファッション・コーディネートの動画に投げ銭投票で応援することもでき、ランキング上位の投稿者には賞金を授与するといったイベント仕立ての運用によって盛り上げていく。これにより、地域のお店・市・観光客を巻き込んだムーヴメントを展開し、一人ひとりがお洒落を楽しむ主役となれるまちづくりを実現するとした。

関西国際大学Cチーム:「食」を生かした雰囲気あるフェスティバルを新たな名物に

Cチームは、日本人学生を含めインドネシア、韓国、ベトナム、中国からの留学生から成るチームで、「食」に注目した。神戸は昔から多くの外国人が暮らしてきた街で、様々な外国食文化が伝わってきた歴史を有する。「食」を生かしたフェスティバルを開催し、同会場をプロジェクションマッピングのイルミネーションで彩ることで、本格的な外国食に舌鼓を打ちながら、プロジェクションマッピングも楽しめる機会を提供する。イルミネーションは冬の風物詩だが、プロジェクションマッピングならば冬も夏も季節を問わず楽しめるという通年性も考慮した(図7参照)。

【図7】Cチームが導出した観光課題解決策のイメージ

【図7】Cチームが導出した観光課題解決策のイメージ
(出典:NTTドコモより提供)

調査に基づき、ほぼすべての留学生が、多少値段が高くても美味しい母国料理が食べたい意向であることを確認。こうした本格的な食体験の提供は、現地の本格的な外国の食を楽しみたい日本人にも受け入れられることから、神戸により一層の観光客の呼び込みも可能になると考えた。

両大学合同の最終発表会で活動に区切り、関係者から好評

ここまで紹介してきた各チームのプランは、関西国際大学のオープンキャンパスの日であった7月30日(土)に、各校で取り組んできた一連の演習プログラムを締めくくる両大学合同の最終発表会の場で発表された(図8参照)。この発表会に岡山大学の学生はリモート参加した。

【図8】合同最終発表会の模様

【図8】合同最終発表会の模様
(出典:NTTドコモより提供)

最終発表会では、まず岡山大学の3班が予め録画しておいた発表を会場で流し、現地の関西国際大学の学生たちと質疑応答を実施。次いで、関西国際大学の3チームがその場で発表を行い、リモートでつながっている岡山大学の学生たちも含めてディスカッションを行った。キャンパスを訪れていた高校生やその保護者からも学生たちのアイデアに対してフィードバック等があったのもビジネスプランのお披露目の場としては有意義だったといえる。

ここで、今回紹介した倉敷市における岡山大学の学生たちの取り組みと神戸市における関西国際大学の学生たちの取り組みを以下のとおり概括する(表3参照)。

【表3】倉敷市および神戸市における取り組みの総括

【表3】倉敷市および神戸市における取り組みの総括
(出典:筆者作成)

岡山大学と関西国際大学の取り組みでは、現状調査、課題仮説検証、最新技術紹介、事業アイデア立案といった骨格の要素は共通しているものの、プログラムの実施期間では岡山大学が1カ月強、関西国際大学が3カ月強と違いがあった。普段から観光学や経営学を専門としていない岡山大学の学生たちは短期間ながら演習プログラムをこなし、粗くともビジネスプランの導出に到達している。また、関西国際大学の学生たちは自分たちの専門性を発揮できる課題にじっくりと取り組み、神戸の観光の更なる活性化やまちづくりにつながるビジネスプランを創出することができた。

このプログラムに関わった大学指導者からは、「グループワークなどを通して考えるためのフレームを与え、学生たち自らが見つけ出した課題に焦点を当ててアイデアを出すプロセスは良い一方で、コストの面の検討の精緻化が不十分だ。時間を上期で区切らず、年間あるいは場合によっては複数年といった中長期的な取り組みにしていく必要がある」(岡山大学教授)といった評価や「観光を学ぶ学生が地元の産業に目を向ける良い機会になった。外から見ると魅力的だが地元にいると当たり前のものになってしまう地元の観光資源をこれからも膨らませていきたい。下期のプログラム実施についても是非お願いしたい」(関西国際大学学長)との要望もあり、課題が指摘される一方で、演習プログラムを通じた取り組み内容について好評を得ている。

また、自治体関係者からのコメントも同様に高評価だ。「倉敷市が考える重要な課題について直接的な解決になりうるアイデアを考えてくださり、とてもありがたかった」(倉敷市観光課)、「良い取り組みだった。下期以降、神戸全体で本格的に実施していく仕組みや他校への展開についても考えていきたい」(神戸市)、「私たちが実施している施策にすぐ活用できるようなアイデアや事業案が今回の取り組みを通じて出てきていた。良い取り組みだ」(神戸市観光局)等と、更なる磨き上げを伴えば学生たちが創出したアイデアが各地域の課題解決につながる可能性が十分にあることを示唆いただいており、こうした評価は取り組んだ学生たち本人にとっても自信となっただろう。

今後の演習プログラムの広がりやビジネスプランの実行に期待

今回の演習プログラムを通じて提案されたビジネスプランを改めて振り返ると、各者各様のアイデアが創出されたのが印象的だ。これは、日本全国多くの観光地で課題として設定されがちな知名度の向上やエリア内の回遊性向上、滞在時間延伸、消費額増大という事項を、フィールドワークや調査を通じて観光客視点や事業者視点での問題点として具体的に把握し、自分たちなりに観光課題を再設定したことで、課題解決に向けたアプローチとしてのビジネスプランが各者各様に導出されたためと考える。今回提案されたプランのいずれも机上検討だけでは導きえず、フィールドワークを通じて足で稼いだ情報が生かされているからこそ具体的な内容になったといえよう。

また、各班・チームのビジネスプランの中で、デジタル技術やICTが効果的に用いられている点も注目に値する。演習プログラムの内容が、仮に特定のデジタル技術やICTを活用することを条件として課すものであったら、手段が目的化した形のビジネスプランに陥ってしまったかもしれない。今回はそのエリアでの観光をめぐる課題に焦点を当て、デジタル技術やICTがその課題解決にうまく活用できるのであれば活用するという、課題解決重視で取り組むという共通の認識に基づきアイデアのブラッシュアップが進められたのが奏功したといえる。

どちらにしても限られた時間でのビジネスプランの検討であったことは共通しており、既に指摘があったとおり、実際にビジネスプランを実行しようと思うと、コスト面を中心に更なる検討は必要であろう。とはいえ、学生たちが自ら調査をし、観光課題に関する仮説を、フィールドワーク等を通じて自ら検証しながらアイデアとして洗練させていく営みは、教科書のみからでは学べない、主体的に課題解決をしていく学びそのものだ。関係者からのコメントにあったとおり、学生に生きた学びの機会を提供できるという点で、こうした演習プログラムの存在は貴重である。加えて、継続的に取り組みを重ねることで、単なる履修・修了対象としての演習プログラムの意味を超え、将来的には実際にビジネスに挑戦してみようと考える起業家の登場を促すかもしれず、地域課題を解決するビジネス起業を誘発するアプローチとしては非常に意義深い取り組みと考える。今後さらに、演習プログラムの活用が課題解決を目指す全国各地に広がっていくことを期待したい。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。



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