2021年1月28日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:青歯王



あの忌まわしいウイルスのせいで、この1年で大きく変わったものが沢山あるのだが、その一つが働く環境だ。人と感染が集中する首都圏では、これまで何年かかってもあまり広がらなかったリモートワークが瞬く間に広がった。

リモートワークに欠かせないのが、オンライン会議だろう。ノートパソコン1台(とインターネット接続)さえあれば簡単に始められるWeb会議は、この1年で多くのユーザーが使い始めた。まあ、確かに移動の手間も省けて効率的だし、簡単に記録が取れるのも楽なのだが、昭和世代からすると、やはり顔を合わせて話をしないとなんとなく落ち着かないなぁ、などと古臭いことを感じてしまったりもする。Web会議システムを使ったオンライン飲み会というのも、最初の頃は物珍しさもあって何度かやったのだが、やはり楽しくなくて、だんだんやらなくなってしまった。

オンライン会議で大切なのが、マイクとスピーカー(イヤホン)だ。ノートパソコン内蔵のものを使うと、状況によってはエコーがかかって使いづらかったりするので、外付けでマイク付きのイヤホンをつなげる人も結構いる。そして、この外付けのイヤホンをつなげるのに、ケーブルではなくBluetoothを使うことも多い。特に、スマートフォンを使って通話や会議をする場合は、最近はBluetooth以外の選択肢がないことが多い。すっかり世の中に定着したBluetoothだが、その名前の由来をご存知だろうか。

958年にデンマークとノルウェーを統一したHarald王に青灰色の死歯があったため(歯ではなく、着ていた服の色など諸説ある)、彼はBluetoothという愛称で呼ばれていたそうだ。1996年、短距離無線技術の標準化の議論がスタートした際に、Intel社の技術者が、パソコン業界とモバイル業界を短距離無線接続(技術)で結束させられれば、という思いからコードネームとして提案したものが、そのまま正式名称になったらしい(当初は、RadioWireとかPAN(Personal Area Networking)といったありふれた名前になりそうだった)。

技術発展の歴史は、規格標準化における覇権争いの歴史の面も大いにあるわけで、Bluetoothは標準化がうまくいって市場にスムーズに広まった成功例の一つと言えるのではなかろうか。

そのBluetoothも改良が続けられ、現在の最新バージョンは5.2、サポートする接続機器に応じたプロトコルの定義(プロファイルと呼ばれる)も数多く存在しており、消費電力を低く抑えた仕様など、IoTの今後の発展を支える技術の一つとなっている。接続する側と接続される側の機器が同じプロファイルをサポートしていないとつながらなかったり、同じプロファイルでも通信する信号の符号化方式が違うと品質が下がったり(これは厳密にはBluetoothの問題ではないが)するなどのトラブルもあるのだが、大半の人はあまり気にせず使っている。

残念ながら今ひとつ普及していない、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)もBluetoothを使って陽性者との接触確認を行っている。3密を回避するために注意を促したりするようなことも、Bluetoothを使えば簡単にできる。

Bluetoothのロゴは、Harald王(Harald “Bluetooth” Gormsson)のイニシャルHとBのルーン文字であるᚼとᛒを重ね合わせたものだそうだ。彼が成し遂げた無血統一のように、ウイルスを無害なものと統一させるなんてことも、できたらいいのになぁ。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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