2022年3月30日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:「メタバース」と私



昨年あたりから、にわかに「メタバース」という言葉が世の中を賑わせています。

メタバースとは何かについて、現時点では必ずしも定まった定義があるわけではないようですが、一例として、「多人数が参加可能で、参加者がその中で自由に行動できるインターネット上に構築される仮想の三次元空間」で、「ユーザーはアバターと呼ばれる分身を操作して空間内を移動し、他の参加者と交流する」などと説明されています。それを実現するための技術としては、VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augumented Reality:拡張現実)などが関係してくるようですね。

メタバースについて書かれた本を読んでみると、仮想世界を描いた物語の代表作として、『ソードアートオンライン(SAO)』や映画『レディ・プレイヤー1』などが挙げられています。前者のほうは、ゲームにしてもアニメにしても一通り把握するまでにはかなりの時間がかかりそうなので、後者の円盤を購入して観てみることにしました……。

(2045年、世界の人間の殆んどがスラム街に住むというディストピアの中で、人々は厳しい現実から逃れようと、仮想空間「オアシス」に没頭していた。その中では自分の好きなキャラクターとなり、衣装や装備を備えて、戦ったり報酬を得たり友人を作ったりできるのだ。オアシスを開発したのはジェームズ・ハリデーというポップカルチャー好きのいわゆるオタクである。そのハリデーは5年前に亡くなったが、オアシス内のゲームに隠された3つの秘密を解き明かした勝者に、オアシスの運営権と自身の遺産を渡すとの遺言を残した。多くの者がその謎解きに熱中するが、未だに第1の鍵を手に入れた者さえいない。コロンバスのスラム街に住む若者ウェイド・ワッツ(アバター名「パーシヴァル」)もそのゲームの勝者となるべく奮闘しているが、世界第2位の大企業「IOI」のチームもオアシスの権利を独占するべくゲームに参加していた。パーシヴァルと彼が仮想空間内で出会った仲間は、IOIチームの妨害をかいくぐり、勝利を目指していく……)

この映画の原作小説が発表されたのは2011年で、映画の制作が始まったのも2016年ともう何年も前のことですが、映画の中でオアシスに興ずる人々が頭に装着するヘッドセットはMeta(旧Facebook)が出しているMeta Quest 2と似たような感じだし、近未来を先取りしている感はすごいですね。あるいは、映画で描かれた光景が技術開発の一つの指標になっているのかもしれません。ただし、最近のテクノロジーのスピードからして、こうした未来は2045年より相当早く来るのではないかという気がします。いずれにせよ、メタバース、仮想空間の一つのイメージは持つことができました。

このように、自分なりにメタバースのイメージを思い描いてみましたが、自分の周りにこのようなVRやARの世界がないかな……と考えを巡らせたところ、毎日のように触れているものがありました。

『ポケモンGO』は、リリースされて既に5年以上が経ちますが、未だに根強い人気を維持しているようです。コロナが流行してからはあまり見かけなくなりましたが、それ以前はビジネス街の一角で、お昼時にスマホ片手のビジネスマン、ビジネスウーマンが集まってバトルで画面を指で連打したり、ポケモンを捕まえようとボールを投げたりしている光景がありました。ポケGOは現実の世界に重ねてポケモンの住む世界が表されていて、まさにARといえるものですね。そして、先に挙げたメタバースの定義に照らしても、十分にその要素を持つものといえそうです。

ポケGO人気を支えているのは中高年層であるという指摘もありますが、人気の秘密はどういうところでしょうか。バトルの要素はあるものの基本的には自分のペース、リズムでまったりとプレイできますし、何百種類ものポケモンをコレクションしていくという収集欲も満たしてくれます。コロナ禍の日常で、在宅勤務による運動不足を解消するための散歩にも彩りを与えてくれます。世界中のフレンドとギフトを交換したりしてつながることも。あまり没入し過ぎない範囲で楽しむ分には、毎日のアクセントになるかと思います。

ポケモンGOのプレイ画面

ポケモンGOのプレイ画面。
(左)ポケモンにモンスターボールを投げて、捕まえようとするところ。
(中)ジムにおけるレイドバトルの様子。
(右)現在の私のアバター。時々着替えているので、近いうちにこの身なりではなくなる予定。
(出典:『ポケモンGO』プレイ画面より筆者撮影)

映画『レディ・プレイヤー1』でも、仮想空間を支配しようとする巨大企業が悪役として描かれていましたが、VRやARの中で参加者が自分の居場所を見つける、自分の夢を追い求めるためには、メタバースの空間が自由で開かれたものであることが求められるのかなと思います。

あと、映画の中でも、食べることと恋愛はリアルでしかできないというメッセージがありましたが、現実世界との折合い――仮想世界に没入し過ぎて現実世界が顧みられなくなったり、仮想が現実を引きずったりしないようにということは考えないといけないでしょうか。そういう意味で、ポケGOプレイヤーのマナーの悪さが一時期顰蹙を買いましたが、プレイ時は十分周りに注意して、歩きながらのプレイは控えるなど、私も気をつけたいと思います。

ところで、現在ロシアの侵略により大きな困難にあるウクライナでも、多くの『ポケモンGO』プレイヤーがいるようですが、今はプレイどころではない毎日であろうと想像します。この理不尽な状況が一日も早く収束し、彼の地のプレイヤーたちも平和な中でのプレイができるようになることを願います。

なお、ポケモンでのバトルは、ポケモンどうしの力比べといったもので、本当の戦いではありません。『ポケモンGO』は平和を愛する人たちのゲームであることを付け加えたいと思います。

主要参考文献等:

  1. 「メタバースの概要と普及に向けた要因」(三本松憲生 Infocom T&S World Trend Report 2021年11月号)
  2. 「令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業)報告書」(経済産業省・KPMGコンサルティング2021年7月)
  3. 『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』(岡嶋裕史 2022年1月 光文社新書)
  4. 映画『レディ・プレイヤー1』(監督:スティーヴン・スピルバーグ、原作:アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』2018年)
  5. 『ポケモンGO』公式サイト(https://www.pokemongo.jp)
  6. 「『メタバースは悪夢』ポケモンGOは現実世界に全集中、移動促す」(日経クロストレンド2021年10月6日)

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