2022.7.28 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

着実に成長するシェアリングエコノミーは デジタル田園都市国家構想のキーファクター

David Schwarzenberg from Pixabay

日本におけるシェアリングエコノミーは、新型コロナをきっかけとしたユーザー増加を受けて着実に成長しており、今後の経済社会へ大きく貢献することが期待されている。本稿では、シェアリングエコノミーの市場規模と、既存産業に与える売上拡大効果を確認した上で、「デジタル田園都市国家構想[1]」におけるシェアリングエコノミーの位置づけと重要性について述べる。

なお、ここで扱うシェアリングエコノミーは表1に示したシェアサービスを対象としている[2]

シェアリングエコノミーの市場規模

情報通信総合研究所では2018年度よりシェアリングエコノミーの市場について調査を行っているが、シェアリングエコノミーの市場規模は2021年度で2.4兆円となり、前回調査[3]の基本予測(過去のトレンド通りに成長した場合の予測)を上回った(図1)。前回の高成長予測(シェアリングエコノミーの成長における課題がすべて解決すると想定した場合の予測)よりは低いが、順調な成長を遂げていると言える。

【図1】シェアリングエコノミー市場規模

【図1】シェアリングエコノミー市場規模
(出典:情報通信総合研究所「2022年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」https://www.icr.co.jp/publicity/4361.html)

(報告書の概要、データ集フォーマット等はこちらの詳細をご覧いただけます。)
リンクバナー「2022年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」

新型コロナの影響により、非対面の「スキルのシェア」等はオンラインでの取引に対する抵抗感が減ったことで、成長が加速している。海外からのインバウンド旅行者の利用が期待できない民泊等の一部のサービスでは成長鈍化がみられるが、好調な分野の方が多い。

今後の予測については前回調査から大きな変化はなく、2030年度の市場規模は最大で14.3兆円と、コンビニの売上の1.2倍程度まで拡大する見通しである。特に成長が見込まれる分野は「スペースのシェア」「スキルのシェア」である。両者は多様な働き方・住み方にフィットするものであり、新型コロナをきっかけとして場所と時間に縛られない働き方・住み方が可能なことが知れ渡ってきたことで、需要が拡大していく見通しである。

シェアサービス提供者の所得増加による既存産業の売上拡大効果

シェアリングエコノミーの特徴の一つは個人がサービスを提供することで所得を増やせることである。市場規模の拡大に伴って、そうしたシェアサービス提供者(自宅の部屋を民泊向けに提供する人や、スキルを提供する人等)の所得もさらに増加していく。所得が増加した人は、そのお金を使って商品やサービスを購入するので、既存産業の売上拡大が期待できる。

例えば、シェアサービス提供者がシェアサービスで稼いだお金を使って飲食店で食事をすると、まず飲食店の売上が拡大する。そして、飲食店側では飲食サービスを提供するために多くの原材料等が必要になるため、様々な企業の製品・サービスを仕入れることになり、仕入先企業の売上増加につながる。

こうした売上拡大の連鎖を一括して推計できる産業連関分析の手法を用いて推計したところ、既存産業の売上拡大効果は2021年度で前年度比0.2兆円増の1.6兆円と順調に拡大しており、2030年度には最大で9.4兆円まで拡大する見通しである(図2)。

【図2】シェアサービス提供者の所得増加による既存産業の売上拡大効果

【図2】シェアサービス提供者の所得増加による既存産業の売上拡大効果
(出典:情報通信総合研究所「2022年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」

売上拡大効果の内訳をみるとサービス業と製造業が大きい。サービス業では飲食業の売上拡大効果が最も大きいが、これはシェアサービス提供者がシェアサービスで稼いだお金を使って飲食する金額が多いためである。一方、製造業ではガソリン等の石油製品製造業の売上拡大効果が大きい。これは様々な産業で利用されるためであり、シェアサービス提供者と直接関係が薄い産業でも売上拡大効果が得られることが分かる。

デジタル田園都市国家構想におけるシェアリングエコノミーの位置づけと重要性

「デジタル田園都市国家構想基本方針[4]」における構想実現に向けた取組方針(1)「地方に仕事をつくる」では、地方が経済的に自立するためには活発な経済活動を確立することが不可欠であり、自らの力で稼ぐ地域を作り出すことが重要であると述べられている。そして、そのための主な施策の一つとして、シェアリングエコノミーの推進が挙げられている。

地方では都市部に比べて就業機会が減少しており、人口流出が生じているが、新しい産業を育成するのは簡単ではない。しかし、シェアリングエコノミーを活用すれば、オンラインでスキルを提供すること等によって住民が収入を得ることができる。

前節で述べたようにシェアサービス提供者の所得拡大は幅広い既存産業の売上拡大につながる。地方の住民がシェアサービス提供者となることで、地域の産業活性化にもつなげることが可能である。

また、「デジタル田園都市におけるWell-Being指標の活用について[5]」では、「進まぬ製造業の立地とサービス業の生産性低迷に悩む地域経済においても、デジタル技術を活用し、共助のビジネスモデルなどを積極的に活用した新たな生活経済モデルを、積極的に構築していくことが必要。」と述べられている。ここでいう共助のビジネスモデルとはシェアリングエコノミーを指しており、今後生じる3つの変化として (1)シェアリングエコノミーが発生する (2)リサイクル・省資源化が進む (3)産業構造が変わる、が挙げられている。シェアリングエコノミーは、人口減少期に入った日本の地方における新たな生活経済モデルでの活用が期待されていると言える。

さらに、「新たな生活サービスの創出と、積極的な市民参画による街の中での繋がりの強化による、Well-Beingの向上に向けたまちづくりの好循環を目指す」とも述べられているが、シェアリングエコノミーはWell-Beingの向上にも有効である。既存調査では、シェアリングエコノミー利用者の方が非利用者よりも主観的な幸福度が高いことが分かっている[6]。政府が活用する方針を示しているWell-Being指標にも主観的な幸福度が含まれており、シェアリングエコノミーを推進することで、Well-Being向上効果が定量的に確認できるようになると期待できる。

このように、シェアリングエコノミーはデジタル田園都市国家構想においてキーファクターとなっており、今後の推進が見込まれる。

まとめ

以上では、シェアリングエコノミーの市場規模と既存産業の売上拡大効果は順調に拡大していること、シェアリングエコノミーがデジタル田園都市国家構想においてキーファクターとなっていることを述べた。市場規模と既存産業の売上拡大効果のより細かいサービスレベルのデータは「2022年シェアリングエコノミー調査報告書」(https://www.icr.co.jp/publicity/4361.html)、Well-Beingの向上効果の詳細は「2021年シェアリングエコノミー調査報告書」(https://www.icr. co.jp/publicity/3703.html)で確認可能である。興味のある方はぜひ購入していただければ幸いです。

「2022年シェアリングエコノミー調査報告書」
https://www.icr.co.jp/publicity/4361.html

「2021年シェアリングエコノミー調査報告書」
https://www.icr. co.jp/publicity/3703.html

情報通信総合研究所の「シェアリングエコノミー・コンサルティングサービス」
https://www.icr.co.jp/service/sharing-economy/

 

[1] https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/ index.html

[2] 移動のシェアの中の相乗りは市場規模に含まれない。

[3] 詳細は以下参照。情報通信総合研究所「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」

[4] 2022年6月7日閣議決定。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/ pdf/20220607_gaiyou.pdf

[5] https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/ dai7/shiryou5-1.pdf

[6] 「シェアリングエコノミー経済規模は過去最高 1兆8,000億円超え、30年には11兆円と予測 生活の充実度や幸福度向上にも寄与」 https://www.icr.co.jp/main_cms/wp-content/ uploads/2019/04/press20190409.pdf

 

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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