2023.12.27 法制度 InfoCom T&S World Trend Report

著作権「サイバネティック・アバターの法律問題」 連載9回

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1.はじめに

著作権はサイバネティック・アバター(CA)と知財の中で最も重要なテーマである1。ここで、メタバースと著作権という大きなテーマであれば、例えばデジタルツインと著作権等、様々な論点があり得るだろう。しかし、本連載はCAにフォーカスしている。そこで、アバターと著作権の問題(2)、CAの活動と著作権の問題(3)、CAの活動と著作隣接権(4)、及びアバターの活動を(アバターそのもの以外に関する)著作権を侵害しないで行う方法(5)に限定して検討したい。

2.アバター(そのもの)と著作権

(1)アバターに著作権が成立するか

ア はじめに

いかなる場合にアバターそのものに著作権が成立するか。例えば単なる「棒人形」のアバターであれば、少なくともアバターそのものには著作権は成立しないと思われる2。しかし、具体的な状況において、アバターそのものについて著作権が成立する場合も存在するように思われる。以下では場合分けをして考えていこう。

イ 精緻なアバターを作成する場合

例えば、3Dモデルを作成して精緻なアバターを作成する場合、その具体的な内容にもよるが、美術の著作物として著作物性が肯定され、その作成者(ユーザー、プラットフォーム、第三者等が考えられる。下記(2)参照)が著作権を取得する可能性が高いだろう。

ここで、デジタルツインの文脈において関3は、事実をそのままメタバース上に再現しただけであれば、著作物性が否定される可能性があるとする。

この議論をCAに敷衍すると、あるモデルとなる人物の写真を撮影した上で、当該(二次元の)写真をそのまま3Dモデルにしただけ、という場合には3Dモデルにするに際しての表現の幅が狭い場合には、(当該写真を撮影した写真家は写真に対する著作権を有するものの、)3Dモデル作成者は、その3Dモデルに対し、写真と別個の独自の著作権が成立しない可能性があるということになる。

さらに、今後いわゆる3Dスキャナー等の技術発展が進み、もしその人の顔を完全に再現する「瓜二つ」のアバターを作成することができるようになれば、当該アバターについて著作物性が否定される可能性も全くない訳ではない。

とはいえ、少なくとも現時点ではポリゴン数の制約その他の制約に応じた何らかの省略や簡略化等がされており、どこを省略・簡略化するかという意味での「表現の幅」は存在するように思われる4。そこで、将来的に、「全く同じで瓜二つ」のアバターを作ることができる技術が確立した場合はともかく、少なくとも当面は「そのまま再現しただけだからアバターに著作物性はない」、という議論はあてはまらないだろう。

ウ プラットフォームの提供する選択肢の中から選択する場合

プラットフォームの提供する選択肢の中から選択する場合として、例えばプラットフォームが男性アバターと女性アバターの2つを準備し、ユーザーがこの2つから選ぶという場合を検討してみよう。確かに、そのアバターを作成したプラットフォーム(又はプラットフォームの依頼を受けてアバターを作成した第三者)がそれぞれのアバターに対して著作権を取得することはあり得る。しかし、流石にこのシチュエーションにおいてユーザーが著作権を得ることはあり得ない。

ただ、プラットフォームによっては、いわゆるアバターの顔のパーツ(例:目、鼻、髪型、肌色)や身体の形状、あるいは服装のデザインなどについて広い選択の余地を与えることがある。その場合にはそのような幅広い可能性から選び出して作成したアバターについて著作物性が肯定される可能性がある。

もちろん、選択の幅やそれによってどの程度のバラエティある表現が可能になるか等にもよるところであろう5。そこで、その点を検討した結果として創作性が否定されることもあるだろう。もっとも、詳細に選択をし、組み合わせ等を行う場合には、ユーザーによる創作的な表現として著作物(法2条1項1号)に該当する可能性がある6

エ 生成AIを利用する場合

生成AIを使ってアバターを作成することもますます容易になっている。例えば、2D写真から3Dアバターを作成する、プロンプトを文章で打ち込んでアバターを作成する等である。

このような場合に誰が著作権を取得できるのか/できないのかという問題については、既に拙著7で論じた他、2023年11月現在、政府が複数の会議で検討中である8

(2)アバターの著作権者は誰か

ア 著作者

CAのアバターのうちの上記(1)の検討の結果として著作物性が肯定されるものの著作者を考える上では、ユーザーが作成する場合、プラットフォームが作成する場合、第三者(プラットフォームから依頼された第三者、ユーザーから依頼された第三者、依頼なく独立に作成した第三者等)が作成する場合等といったパターンごとの検討が必要である。基本的には、当該アバターを作成した自然人が著作者である。もっとも、具体的状況次第で職務著作(著作権法15条)が成立する場合もある9

なお、アバターの元となる二次元の画像・写真が存在する場合((1)イ参照)等、二次的著作物となることで、元の画像・写真の著作権者が当該アバターについて著作権法28条の権利(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)を持つ場合もあるだろう10

イ 著作権者

そして、契約等11によって著作権が移転すれば著作権者は著作者ではなくなることもある。例えば、プラットフォームが第三者に依頼してアバターを作成させた上で、その著作権をプラットフォームに移転する合意をすることはあり得る。

(3)アバターを適法に作成するにはどうすればよいか

アバターを作成する際、第三者の著作権を侵害しないためにはどうすればよいだろうか。

例えば、第三者の撮影した写真や作成したイラストが存在する場合において、安易にそれをもとにアバターを作成する(3D化する)ことは、当該第三者の著作権(翻案権等)を侵害するリスクがある。但し、その写真・イラストの著作権者の許諾を得ていればその限りではない。

また、既存のアバター(そのうちの上記(1)の検討の結果として著作物性があるもの)について、その本質的特徴を直接感得できるような別のアバターを作成すると当該既存アバターの著作権者(上記(2)参照)の著作権(複製権や翻案権等)を侵害するおそれがある。但し、当該アバターの著作権者の許諾を得ていればその限りではない。

さらに、実在する人物を自ら写真撮影したり、スケッチしたりしてこれをもとにアバター化するという場合、モデルとなる人物の人格権(肖像権(第6回参照)等)の問題は生じるが、著作権の問題は基本的に生じないように思われる。

なお、実在する服や小物等のアイテムをアバターに持たせる場合、それが実用品であることから、著作物性が否定されやすくなる可能性があるものの、この点はCAの著作権そのものの論点ではないので詳論しない。

3.アバターの活動と著作権による保護

(1)アバターの活動と映画の著作物該当性(特にVTuber等)

CAの動画、例えばVTuberの動画は映画の著作物(法2条3項)となり得る。ゲームを映画の著作物だとする最高裁判例からすれば、メタバース上のアバターの活動に紐づく表現についてこの射程内として映画の著作物となるかにつき検討の余地があるとされる18

ここで、例えばメタバース上でアバターが交流する様子を特定の位置から、リアルワールドでいうところの「定点カメラ」で撮影するような方法で撮影するというだけであれば(下記(2)以下の別の著作物に該当する可能性はあるが)、少なくとも映画の著作物としては創作性が否定される可能性が高いだろう19。しかし、記録的なものであっても、被写体の選択、撮影角度、構図等の選択によって映画の著作物になり得る20

なお、物21への固定要件については、生放送でも同時に録画されていればよいとするのが多数説22であり、生配信について事後的に視聴できるようサーバーに保存されたことをもって固定要件を満たすとするものがある23

(2)アバターの活動と言語の著作物該当性

アバター、例えばVTuberによる「配信中の発言は『言語の著作物』としての保護を受け得る」とされる24。但し、単なる日常的な「だべり」のようなものに著作物性があるかは問題であり、例えば国交省とのやり取りの結果を動画にまとめた際のキャプションの著作物性が問題となり、「いずれもごく短いもので、ありふれた表現であるといわざるを得ないから、創作性を有するとはいい難く、著作物性は認められない。」とした裁判例25等も踏まえて検討すべきである。

(3)アバターの活動とその他の著作物

その他、アバターのダンス等については、その内容により舞踏の著作物(法10条1項3号)に該当する可能性がある。アバターが描く絵については、美術の著作物(法10条1項4号)に該当する可能性がある。もっとも、これらについてはアバターであることやメタバース上のものであることによる相違点が少なく、基本的には通常の舞踏の著作物や美術の著作物の問題と同様であるように思われる(なお、上演権侵害等については、5(1)を参照のこと)。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
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4.アバターの活動と著作隣接権による保護

5.(アバターそのもの以外に関する)著作権を侵害せずにアバターの活動を行うために

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

本研究は、JSTムーンショット型研究開発事業、JPMJMS2215の支援を受けたものである。本稿を作成する過程では慶應義塾大学新保史生教授及び情報通信総合研究所栗原佑介主任研究員に貴重な助言を頂戴し、また、早稲田大学博士課程杜雪雯様及び同修士課程宋一涵様に脚注整理等をして頂いた。加えてWorld Trend Report編集部の丁寧なご校閲を頂いた。ここに感謝の意を表する。

  1. なお、9-11回については、第1回・第2回引用文献に加え、福井健策「AI、メタバースと知的財産権(主に著作権)」(2023年9月26日)<https://www.chuo-u.ac.jp/uploads/2023/09/9875_3 福井先生資料『生成AI,メタバースと知財』-.pdf?1695594473241>(2023年11月23日最終閲覧、以下同じ)を参照している。
  2. なお、そのような場合でもそのようなアバターに関するプログラムに係る著作権は別途問題となるが、CAそのものに密接に関係するものではないので、以下ではこの点を措く。
  3. 関真也『XR・メタバースの知財法務』(中央経済グループパブリッシング、2022)24頁。
  4. この点は、地図の著作物について、その省略・簡略化等における表現の幅を根拠に著作物性を認める議論と類似しているように思われる。
  5. プラットフォームの提供する素材を利用してアバターを作成する場合、組み合わせ自体に創作性がないことが通常とする、東崎賢治=近藤正篤「知的財産紛争実務の課題と展望(6)自らの存在を秘したままキャラクターを使用してインターネット上の活動を行う者の知的財産権等の権利保護に関する検討」JCAジャーナル68巻12号(2021)48頁。
  6. 上野達弘「メタバースをめぐる知的財産法上の課題」Nextcom52号(2022)11頁及びメタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理」(以下「論点整理」という)<https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ titeki2/metaverse/pdf/ronten_seiri.pdf >38頁参照。東崎=近藤・前掲注5)も「組み合わせの数や種類次第では、デッドコピーを禁ずる程度の創作性が認められる余地があるかもしれない」とする。
  7. 松尾剛行『ChatGPTと法律実務』(弘文堂、2023)103頁以下。
  8. 文化審議会著作権分科会法制度小委員会HP <https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/>や、AI時代の知的財産権検討会HP<https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/kaisai/index.html>を参照。
  9. 中崎尚『Q&Aで学ぶメタバース・XRビジネスのリスクと対応策』(商事法務、2023)109頁。
  10. 中崎・前掲注9)109頁。
  11. なお、実務上は著作権法61条2項の特掲等にも留意が必要である。
  12. 関・前掲注3)242-243頁。
  13. あしやまひろこ「メタバース用途のアバター取引に伴う利益衝突に関する法的考察」情報通信政策研究6巻1号(2022)124頁。
  14. この辺りは、メタバース団体における自主規制や、共同規制等が考えられる。
  15. なお、独占ライセンスと第三者による侵害差止等の論点(論点整理39頁は独占的ライセンスを受けたライセンシーとしての損害賠償請求及び差止請求等についても議論する)もあるが、ここでは論じない。なお、著者が関与したものとして一般財団法人ソフトウェア情報センター「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究報告書」(2018年3月)<https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shupp an/tokeichosa/chosakuken/pdf/r1393032_04.pdf>97頁以下を参照。
  16. これは、「現実空間の屋外にある美術の著作物をデジタル空間で再現する場合」の「屋外」の解釈(例えば関・前掲注3)79頁以下)の話ではない。そうではなく「デジタル空間上の『屋外』に相当する場所」において美術の著作物たるオブジェクトが展示されている場合である。なお、津田敦司「公共空間設置著作物の利用に関する法的規律」神戸法學雜誌73巻1号(2023)<https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/0100 482607/>105頁もこの文脈での屋外性は論じていないが、「公共空間は屋外の場所に限られるものではない。しかし、46条は、その空間的適用範囲を、文言上「屋外の場所」に限定しており、この点は問題であるといわざるを得ない」としており立法論の参考になるかもしれない。
  17. 但し、引用については要約引用が認められている(中山信宏『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)427頁)ところ、著作物を引用してメタバース上で論評する際に、メタバースであることを踏まえた3D化等の改変が許されるか等を論じる余地も全くない訳ではないと考える(とはいえ、同426頁が「翻案一般を認めることはできず」とするように決して広範な翻案が認められるものではないことには留意が必要である)。
  18. 令和3年度著作権委員会「NFTおよびメタバースについての調査・研究」パテント75巻13号(2022)13頁、関真也「AR領域における商標の使用――拡張現実技術を用いた新たな使用態様を巡る現行法上の課題」日本知財学会誌14巻3号(2018)<https://www.ipaj.org/bulletin/pdfs/JIPAJ14-3PDF/ 14-3_p028-035.pdf>、関・前掲注3)222-228頁参照。
  19. 中山・前掲注17)119頁参照。
  20. 中山・前掲注17)118頁及び東京地判平成25年5月17日判タ1395号319頁。
  21. 電磁的媒体を含む、中山・前掲注17)119頁。
  22. 小倉秀夫=金井重彦(編著)『著作権法コンメンタール〔改訂版〕Ⅰ』(第一法規、2020)223頁。
  23. 大阪地判平成25年6月20日判時2218号112頁。但し、ログは残しても、メタバース空間でのすべての映像は録画されているとは思えないことをどう考えるべきかが問題となる。栗原佑介「メタバースを中心とするバーチャルリアリティにおける著作権法の『実演』に関する一考察―『その実演』の意義を中心に」情報通信政策研究6巻2号(2023)7頁参照。
  24. 東崎=近藤・前掲注5)50-51頁。
  25. 東京地判令和4年12月14日裁判所HP参照(令和4年(ワ)第8410号。

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