2023.8.24 ICT経済 InfoCom T&S World Trend Report

ICT経済は3期ぶりのプラス成長:ICTサービスが牽引【InfoCom ICT経済アップデート】

【2023年4-6月期のポイント(前年同期比)】

2023年4-6月期のICT経済は、総合指標が前年同期比1.2%増と3期ぶりのプラス成長となった(1-3月期:同マイナス0.7%から1.9ポイント改善)。財・サービス別にみると、ICT財は、同マイナス5.6%と3期連続で減少したが(1-3月期:同マイナス6.9%から1.3ポイント改善)、ICTサービスは、同3.4%増と5期連続で増加し(1-3月期:同1.3%から2.1ポイント上昇)、財の減少をカバーした[1]

今期のICT経済は、財生産では集積回路、半導体・フラットパネル製造装置等の不調により減少幅が拡大したもののICT財の在庫の増加幅は縮小し、調整局面にある。一方、ICTサービスは、情報サービス業が牽引し、5期連続で増加した上、ゲームソフトも好調だ。

図表1 ICT関連経済指標の推移

図表1 ICT関連経済指標の推移

需要サイドをみると、ICT消費は8期連続で減少した。パソコンが減少に転じ、スマートフォン等通信・通話使用料とインターネット接続料の減少が継続した。一方、ICT設備投資(民需)は減少に転じた。要因は通信業の通信機への投資が減少に転じたことが挙げられる。金融・保険業等一部業種の投資が増加したものの、通信機の減少をカバーできなかった。

輸出入をみると、ICT輸出は、半導体市況の低迷による半導体等電子部品や半導体製造装置の減少により金額ベースでは2期連続で減少し、数量ベースでは5期連続のマイナス成長となった。ICT輸入は、通信機、半導体等電子部品等多くの品目の減少により金額ベースでは11期ぶりに減少に転じ、数量ベースでは7期連続のマイナス成長となった。

7-9月期以降、ICT財生産はコロナ特需の一巡や世界景気の減速等を背景に世界の半導体需要が落ち込み当面調整が続く見通しである。一方、ICTサービスは経済活動の正常化を背景に人手不足対応のための省力化投資が継続し、さらにインバウンドへの対応投資、CO2管理やエネルギーマネジメント等脱炭素関連のデジタル化投資もあり、ICTサービスが牽引する状況が続くものと考えられる。

【2023年4-6月期の動向】

(ICT経済総合)

  • 国内ICT経済は前年同期比1.2%と3期ぶりに増加に転じた。前期(1-3月期)に比べて1.9ポイント改善した(図表1)。

(ICTサービス)

  • ICTサービスは前年同期比プラス3.4%と5期連続で増加した。前期(1-3月期)に比べて2.1ポイント拡大した(図表1)。
  • 受注ソフトウェアの増加幅が縮小したものの、通信業、ゲームソフトは増加に転じた(図表3)。

(ICT財)

  • ICT財は前年同期比マイナス5.6%と3期連続で減少し、前期(1-3月期)に比べて1.3ポイント改善した(図表1)。
  • 電子部品、集積回路は減少幅が縮小したものの、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置は減少幅が拡大した(図表4)。

(ICT在庫)

  • ICT在庫は前年同期比プラス4.8%増加し、前期(1-3月期)に比べると増加幅が11.2ポイント縮小した(図表5)。
  • 電子デバイスと集積回路の増加幅が縮小した。

(ICT消費)

  • ICT消費は前年同期比マイナス2.7%と8期連続で減少し、前期(1-3月期)に比べると1.6ポイント悪化した(図表1)。
  • スマートフォン等の通信・通話使用料は減少幅が縮小したものの、スマートフォン等の本体価格は増加幅が縮小し、パソコンは減少に転じた(図表6)。

(ICT設備投資)

  • 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比マイナス1.9%と前期の増加から減少に転じた。前期(1-3月期)に比べて2.9ポイント悪化した(図表1)。
  • 電子計算機等は増加に転じたが、通信機は減少に転じた(図表7)。
  • 官公需は前年同期比プラス14.1%と2期連続で増加した

(ICT輸出入)

  • ICT輸出(金額ベース)は前年同期比マイナス10.0%と2期連続で減少した(図表1)。半導体等電子部品は減少に転じ、半導体製造装置は減少幅が拡大、電算機類(含周辺機器)は増加幅が縮小した(図表8)。数量ベースでは同マイナス18.1%と5期連続で減少した
  • ICT輸入(金額ベース)は前年同期比マイナス6.2%と11期ぶりに減少に転じた(図表1)。通信機、半導体等電子部品、半導体等製造装置は減少に転じた(図表9)。数量ベースでは同マイナス8.6%と7期連続で減少した(図表1)
図表2  ICT関連財・サービス総合指標の推移

図表2  ICT関連財・サービス総合指標の推移


図表3 第3次産業活動指数に占めるICT関連サービスの寄与度

図表3 第3次産業活動指数に占めるICT関連サービスの寄与度


図表4 鉱工業生産に占めるICT関連品目の寄与度

図表4 鉱工業生産に占めるICT関連品目の寄与度


図表5 ICT関連在庫循環図(四半期)

図表5 ICT関連在庫循環図(四半期)


図表6 家計消費支出(家計消費状況調査)に占めるICT関連消費の寄与度

図表6 家計消費支出(家計消費状況調査)に占めるICT関連消費の寄与度


図表7 設備投資※(民需、除く船舶・電力・携帯電話)に占めるICT関連機種の寄与度

図表7 設備投資※(民需、除く船舶・電力・携帯電話)に占めるICT関連機種の寄与度


図表8 輸出総額に占めるICT関連輸出(品目別)の寄与度

図表8 輸出総額に占めるICT関連輸出(品目別)の寄与度


図表9 輸入総額に占めるICT関連輸入(品目別)の寄与度

図表9 輸入総額に占めるICT関連輸入(品目別)の寄与度


参考 ICT関連経済指標に採用した項目

参考 ICT関連経済指標に採用した項目

 

PDFでもご覧いただけます。
PDF版のダウンロードはこちらから。

【関連サイト】ICT経済分析

[1] 鉱工業生産指数は、2023年4月分確報より基準年次を2015年から2020年へ基準改定されている。そのため、今回は暫定的な措置として、2015年基準データを2020年基準データの伸び率で延長した。

「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容

  • 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
    財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。
  • 情報通信の在庫循環分析
    情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。

    ※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。

株式会社情報通信総合研究所 ICT経済分析チーム
主席研究員 手嶋彩子
主任研究員 山本悠介、鷲尾哲
研究員 張怡

※本稿の内容に関するお問い合わせは、ICT経済分析チームまでお願いいたします。

情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。

調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。

ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら

関連キーワード

ICT経済分析チームの記事

関連記事

メンバーズレター

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

メンバーズ登録(無料)

各種サービスへの問い合わせ

ICTに関わる調査研究のご依頼 研究員への執筆・講演のご依頼 InfoCom T&S World Trend Report

情報通信サービスの専門誌の無料サンプル、お見積り

InfoCom T&S World Data Book

グローバルICT市場の総合データ集の紹介資料ダウンロード