情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。本日、「InfoCom ICT経済アップデート」について2021年7-9月期がまとまりましたのでご報告いたします。
2021年7-9月期のポイント(前年同期比)
2021年7-9月期のICT経済は前年同期比4.9%増と4四半期連続でプラス成長になったが、増加幅は縮小した(前期比4.9ポイント減)。ICTサービスが同0.3%増とほぼ横ばいとなる一方、ICT財は同20.7%増と4期連続で増加した。
需要サイドについては、ICT消費は23期ぶりに減少に転じた。スマートフォン等の通信・通話使用料は減少に転じた。パソコンは減少幅が縮小した。一方、ICT設備投資(民需)は電子計算機等が増加に転じ、3期ぶりに増加に転じた。ICT輸出は4期連続で増加した。半導体不足による供給制約が懸念されるものの、新型コロナ禍からの海外景気の回復、企業や消費者のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、5Gの普及を背景にした世界的な半導体需要の増加をうけ、半導体等電子部品の増加幅は拡大した。ICT輸入も4期連続で増加した。国内企業や消費者のデジタル化を背景に半導体等電子部品の増加幅が拡大した。
今期のICT経済は、消費を除きプラス成長を維持した。ICT消費は主に、スマートフォン等の通信・通話使用料が減少したことが背景にある。これは、新たに登場した安価な料金プランの浸透により一人当たり売上高が減少したことによるもので、実質ベースではプラスを維持している点は注意を要する。4月から9月末までは新型コロナの感染拡大で大都市圏では緊急事態宣言が発出され、半導体不足による供給制約も加わったが、ICT関連分野においては、生産、サービスともに増加を維持した。プラス要因として、巣ごもり消費の継続、ニューノーマル定着に向けたDXの推進や、世界的な半導体需要の高まりによる輸出の増加が見られる。一方、世界的な半導体不足による供給制約、それによるサプライチェーンの混乱はリスク要因だ。緊急事態宣言があけて、経済活動は回復しつつあるが、半導体不足の供給制約が懸念要因となっており、10-12月期のICT経済の回復持続の見通しは不透明感が続くものと想定される。
2021年7-9月期の動向
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比プラス4.9%と4期連続で増加し増加幅は拡大した。前期に比べて4.9ポイント減少した(図表2)。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比プラス0.3%とほぼ横ばいとなり、前期に比べて4.9ポイント低下した(図表3)。
- 受注ソフトウェア、その他の情報処理・提供サービス業は増加幅が縮小し、通信業は減少に転じた。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比プラス20.7%と4期連続で増加した(図表4)。
- 半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置の増加幅が拡大した。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比プラス1.6%と増加に転じた(図表5)。
- 電池の増加幅が拡大し、電子デバイスは増加に転じた。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比マイナス5.0%と23期ぶりに減少に転じた(図表6)。
- スマートフォン等の通信・通話使用料は減少に転じ、パソコンは減少幅が縮小した。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比プラス2.2%と3期ぶりに増加に転じた(図表7)。
- 電気計算機等は増加に転じ、通信機は減少に転じた。
- 官公需は前年同期比プラス7.6%と5期ぶりで増加に転じた。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比プラス22.9%と4期連続で増加した(図表8)。半導体等電子部品は増加幅が拡大し、電算機類の部分品、半導体等製造装置は増加幅が縮小した。数量ベースでは同プラス12.0%と5期連続で増加した。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス18.9%と4期連続で増加した(図表9)。半導体等電子部品は増加幅が拡大したものの、半導体製造装置は増加に転じた。数量ベースでは同プラス3.1%と6期連続で増加した。

図表2 ICT関連財・サービス総合指標の推移

図表3 第3次産業活動指数に占めるICT関連サービスの寄与度

図表4 鉱工業生産に占めるICT関連品目の寄与度

図表5 ICT関連在庫循環図(四半期)

図表6 家計消費支出(家計消費状況調査)に占めるICT関連消費の寄与度

図表7 設備投資※(民需、除く船舶・電力・携帯電話)に占めるICT関連機種の寄与度

図表8 輸出総額に占めるICT関連輸出(品目別)の寄与度

図表9 輸入総額に占めるICT関連輸入(品目別)の寄与度
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【関連サイト】ICT経済分析
「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容
- 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。 - 情報通信の在庫循環分析
情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。
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