ICT雑感:サブスクがいっぱい

前回のこのコラムで、我が家がNetflixに加入したことを書きました。私がこの夏休みの目標の一つにしていたドラマ『ストレンジャー・シングス』のシーズン4までの制覇は、実はあまり進んでいないのですが、妻のほうは韓国ドラマを中心にすっかりはまっていて、世帯全体としては十分元を取っている感じです。
世の中では、このNetflixを始めとして、Disney+、Amazon Prime Video(アマプラ)など、サブスクの動画配信サービスの競争が過熱しているようです。一方で「サブスク疲れ」、「サブスク貧乏」という言葉も最近耳にします。サブスクのサービスに次から次へ加入することで、その消費活用に追われてしまう、あるいは、塵も積もればなんとやらで、気がつかないうちに結構な出費になってしまうということのようです。
この「サブスク」という言葉、英語の「subscription」を縮めた言い方ですが、手元の英語の辞書で本来の意味を調べると、「(定期刊行物の)予約購読(権)、予約支払、購読料」(小学館プログレッシブ英和中辞典第4版、2003年)となっています。これが第5版(2012年)になると、インターネット用語として「(オンラインサービスの)購読」の意味が加わりました。またネット上の別の辞書(英辞郎 on the WEB)では「(ソフトウェアやサービスなどの)定額制」と書いてあり、時代が新しくなるにつれ、今私たちが通常使う意味へと広がってきたようです(ちなみにこのWEB辞書のプレミアム版のサービスもサブスクになっています)。
サブスクについて、定期的に一定の料金を支払って継続的にサービスを受け取る仕組み、というように理解すると、毎日の生活は、あるいは家計の支出において、実にいろいろなサブスクに囲まれていると感じます。もともと、新聞の月極購読による配達とか、瓶入り牛乳の配達など、昭和の時代から私たちの暮らしの中にはサブスクがありました。
手元のクレジットカードの支払明細を見てみると、毎月支払っている項目に、CATVの料金(TV、電話、インターネットの一体型サービス、および有料チャンネル視聴料)、セキュリティ会社の警備料金、新聞購読料、NPOや公益法人への定額寄付金、ハウスメーカーによる住宅設備修理サービス、そして携帯電話の料金があり、これに今月からNetflixが加わりました。
さらに年払いあるいは長期の契約をしているものとして、雑誌の定期購読が3件、生命保険の保険料などがあり、また、見えにくいものとしてクレジットカードや映画マイレージの年会費も出ていました。あと、これは法律に基づき義務的に支払っているので一般のサブスクとは性格が異なりますが、NHKの受信料も家計管理の面からは一種のサブスクでしょう。
ところで、世の中にあふれるサブスクのサービスには、購入のきっかけを作るための様々な工夫が凝らされていますね。
例えば、TVショッピングでおなじみのサプリメントや健康食品の定期購入ですが、「1か月分〇〇円のところ、初回購入に限り△△円でのご提供です!」……健康に関心の高い中高年層を中心に、あれこれと何種類も購入している人もいるでしょうか。
あるいは、模型のパーツが毎号付録でついていて、それを組み立てていくと完成するタイプの雑誌――「パートワーク」(分冊百科)というそうですが――では、「創刊号は特別価格××円」が決まり文句となっています。完走する人がどのくらいの割合なのか気になりますが、手を変え品を変え趣味ごころをくすぐるその手法には恐れ入ります。
一方、なるほどこれはみんな助かる!と感心したのが、保育園などで利用することを想定した紙おむつのサブスクです。これまでは親御さんが登園の際に子どもの名前を紙おむつに書いて必要数を毎日持参していたのを、月極定額で園に備え置きすることでその手間がなくなります。また保育士さんにとっても、必要と判断したらいつでもおむつを交換でき、園児ごとのストック管理からも解放されるということです。親にとっても保育士にとっても大きなメリットがあるということで、これは素晴らしいサービスだなと感じました。今急速に導入が広がっているようです。
この他、ネットや報道などをざっと当たってみただけでも、「年会費を払った会員が、オーガニックでSDGsな食品や化粧品を継続的に購入できるサービス」、「好きなお店で好きな時にシャンプーやヘアケアなどできる美容院のサブスク」、「学校と家庭の連絡や児童の安否確認、各種情報共有等のサービス」、「航空券と宿泊をセットにした旅のサブスク」、「初期費用と月会費で十三回忌までの法要と墓の管理を行う墓のサブスク(以後永代供養に移行可)」などのサービスの情報に行き当たりました。

(出典:筆者撮影・スマホのプレイリストから)
ところで、このような継続的な支出は、家計にとってはいわば固定費となりますが、収入に余裕のある現役時代にはさほど気にならなくても、リタイア後の年金生活においては家計を圧迫することでしょう。ともすれば、「さあこれから老後の生活をエンジョイしよう!」というときの制約要因にもなりかねないように思います。
魅力的に映るサービスが各種あり、上手に使えば便利なものですが、気がつかないうちに、大して利用していないものが積み重なっていないかどうか、定期的に、あるいは年金生活への移行時などに、しっかりチェックすることが必要と感じています。皆さんは、サブスク支出の管理、どうされていますか?
参照記事等
- 「『サブスク疲れ』を感じることはありますか?」(新R25ワイドショー 2022年5月4日~アプリ上でのアンケート回答)
- 「サブスク貧乏やサブスク疲れが続出! 元を取るかもしれない三つの条件」(週刊朝日 2022年6月10日増大号/AERAdot.2022年6月3日)
- 「『サブスク疲れ』進む選別 1000万人の定額課金データ分析 ユーザー数ピークの3割減」(日本経済新聞 2022年8月15日)
- 「創刊号だけ破格の安さ『デアゴスティーニ』 シリーズ最後まで買う人は何割?」(ORICON NEWS 2019年6月4日)
- 「サブスクおむつ、『両得』の利点とは 公立園に導入決めた市長の苦労」(朝日新聞 2022年6月9日)
- 「おむつサブスク 保育園導入広がる」(読売新聞 2022年7月1日)
- 「増えるサブスク、解約ボタンはどこにある? 透けて見える企業の姿勢」(朝日新聞 2022年5月25日)
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