CES 2022 Media Day(Day2)
本記事は、NTTコミュニケーションズ イノベーションセンターの小室智昭氏より寄稿いただいた原稿をそのまま掲出しています。
◇◆◇
皆さん、連投で恐縮ですが、続いて(Day1の模様はこちら)、CES 2022 Media Dayについてお伝えします。今回は、CES 2022 Media初日に開催されたUnveil Las Vegasと2日目に行われたPress Conferenceについてお伝えします。
2日目に発表があった大ニュースはすでに日本を駆け巡っていると思いますが、私の目線で内容をお伝えしたいと思います。
1.はじめに
今回報告するUnveil Las Vegasは例年と比べると出展社数が少ない。Press Conferenceも直前になってリアルからバーチャルに変更する企業もあった。人が少ない分、しっかりと出展社と話ができたり、Press Conferenceがバーチャルやハイブリッドになったことで、会場の移動や入場待ちがないのは良いことだったと思う。
2.Unveil Las Vegas
Unveil Las Vegasは毎年、Media Dayの初日の夜に開催されるMedia向けの展示会だ。Unveil Las Vegasはコンベンション本番前に、面白いソリューションを発掘できるため、毎年、世界中のMediaで賑わっている。
今年は130の企業が出展すると事前に発表があったが、空いている展示スペースが目立った。そのせいかもしれないが、日本、韓国などのアジアのStartupがいつも以上に目についた。空飛ぶタクシーを開発しているSkydrive社やアシストスーツを開発しているArchelis社など、ほとんどの日本企業は経済産業省が推進するStartup育成支援プログラムのJ-Startupのブースにも展示している。
個人的に気になったのは、昨年発表されたINDY Autonomous Challengeだ。実車を展示していたため、多くのMediaが写真を撮り、担当者を質問攻めにしていた。車体にはスポンサーになっているLuminar社、Cisco社、Bridgestone社などのロゴが配置されている。走行中はカバーがつけられているが、展示車はカバーが外されてLiDARが剥き出しになっているのも印象的だった。配布された資料を見るとHonda製のエンジンやZF社のトランスミッションなどスポンサー以外のパートナーとも連携しているようだ。また、CommunicationにはCisco社のURWB FM4500 MOBIが採用されている。
以前は、日本の大企業もUnveil Las Vegasに出展していたが、2022年は見当たらなかった。
3.Press Conference
CES 2022のPress Conferenceは新型コロナの感染リスクを考慮し、バーチャルオンリー、バーチャルとリアルのハイブリッドの両方で行われた。アジェンダをみるとどちらのスタイルで発表を行うのかは、CESを主催するCTA(Consumer Technology Association)ではなく発表企業が決めているようだ。
(1) Robert Bosch社
バーチャルオンリーで行われたRobert Bosch社(以下、Bosch社)のPress Conferenceは、45分の持ち時間のうち、10分以上をTechnical Difficulty(機材トラブル)で中断されたが、Sustainabilityに始まり、Climate Change、Electro Mobility、AIOT(AI x IOT)と内容の濃いPress Conferenceだった。Bosch社のChief Digital OfficerのTanja RuckertさんとBosch社の北米支社のPresidentのMike Mansuettiさんは、個別のサービスを説明したが、二人からのメッセージは「高い技術力が人々の日々の生活を安全に、便利に、持続可能にする。」だと思う。そのために、世界の主要都市に開発拠点を持ち、技術開発に毎年多額を投資している。その成果として、Bosch社は数年前に全てのプロダクトがSoftware-Definedに対応し、OTA(Over the air)でソフトウェアのUpdateを可能としたそうだ。また、Software-Defined Carを実現するために、組織の縛りを除いたComputing Solution Devisionを組織し、ハードウェア、ソフトウェアが一体となった新たなAutomotive Electric Architectureの開発に着手している。
"技術に関する信頼は当然のものではなく、与えられるものだ"というメッセージも印象に残った。
(2) Panasonic社
Panasonic社のPress Conferenceは将来に向けた取り組みと新製品紹介といつものパターンで行われた。
Panasonic社の将来に向けた取り組みは二つの"S"だ。1つ目の"S"はSustainability、そして2つ目の"S"はSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育だ。
まずは1つ目の"S"のSustainabilityを紹介する。"Panasonic Green IMPACT"と名づけられたPanasonic社のSustainabilityに向けた取り組みは、クリーンに関する技術開発、同社やグループ会社だけでなくValue Chain全体で二酸化炭素削減を目指すなど、持続可能な社会の実現に向けたコミットメントだ。
次に2つ目の"S"のSTEMを紹介する。Panasonic社は東京オリンピックでも大活躍だったゴールドメダリストのKatie Ledeckyさんを迎え、"STEM Forward"という新たなSTEM教育プログラムを発表した。KatieさんはTeam Panasonicのメンバーで、Panasonic社は彼女のSTEM教育の考え、ビジョンに共感し、共同でSTEM教育プログラムを提供することとした。Katieさんは、STEM Forwardを通じて子供たちに技術と教育の重要性と素晴らしさを伝えていくという。
また、Panasonic社は、"Discovery Education"という教育プログラムを米国時間の1月4日から提供する。Discovery Educationは教育に関するLearning Platformで、教育のプロやイノベーションリーダーが監修したデジタル教科書、マルチメディアコンテンツ、教育プログラムを140ヶ国の4,500万人以上の生徒、450万人以上の教師、親、教育関係者に提供する。生徒はこのプログラムを通じて最先端の技術に触れることもできる。Discovery EducationはSTEM Forwardにも教育コンテンツを提供する。
他にもImmersive、Mobilityに関する取り組みの発表もあった。Immersive、Mobilityついては、一般公開されるExpoの報告の中で情報共有する。
それにしても、オミクロン株による新型コロナの感染拡大がなければ、会場でKatieさんに会えていたと思うと残念で仕方がない。
(3) SONY社
SONY社は例年通り、LVCC(Las Vegas Convention Center)のCentral Hallの同社のブースでPress Conferenceを行なった。カメラ、ビデオ、イメージセンサー、ゲーム、映画コンテンツの説明が続き、「このまま終わるのかな」と思った矢先サプライズが始まった。Press Conferenceが始まる前から「あのカーテンの奥から何か出てきそう」という想像があたった。話題がMobilityの話になるとカーテンが開き、奥からCES 2020に発表されたVision-Sが姿を現した。SONY社の吉田社長がCES 2020での反響の大きさを語り始めた時から「もしかしたら」と思っていると、新型VisionSのPrototypeの説明が始まった。
新型Vision-SはSUVタイプ。新型Vision-Sでは、Safety、Adaptability、Entertainmentを追求し、中でもSafetyは最優先事項だという。
ここでも、5Gはコア技術として紹介され、高速、大容量、低遅延で車載システムとクラウドとの連携を実現すると説明があった。
さらにSONY社はVision-Sに関する活動を加速するためにSONY Mobility, Inc.という新会社の設立を発表した。
Press Conference終了後にSONY社の人と話をしたが、Vision-Sの価格、新会社の開発体制、Supplierとのフォーメーションなどは公開できないのかまだ本当に決まっていないのかは不明だが、「これから決める」という回答ばかりだった。
Press Conferenceの中で吉田社長が言っていた、「2年前のVision-S発表時は技術検証目的で開発したとというのは、本当か?」と担当者に質問してみると、吉田社長と同じ回答が返ってきた。これをどう捉えるかは、皆さんの判断に委ねたい。
後で気がついたことだが、Toyota社やGM社などのOEMの新車発表の時は、Mediaは車体の近くに寄って写真を撮るが、なぜか誰も車体に近づいて写真を撮っていなかった。
本記事は、NTTコミュニケーションズ イノベーションセンターの小室智昭氏より寄稿いただいた原稿をそのまま掲出しています。
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