情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について2022年1-3月期がまとまりましたのでご報告いたします。
2022年1-3月期のポイント(前年同期比)
2022年1-3月期のICT経済は前年同期比0.2%増とほぼ横ばいとなった。四半期連続でプラス成長になったものの、増加幅は縮小した(10-12月期:同4.9%増から4.7ポイント減)。ICTサービスは前年同期比0.8%減(10-12月期:同3.2%増から4.0ポイント減)となり、ICT財は同3.6%増と6期連続で増加した(10-12月期:同10.1%増から6.5ポイント減)。
需要サイドについては、ICT消費は3期連続で減少した。通信・通話使用料と、スマートフォン等の端末の減少が響いた。一方、ICT設備投資(民需)は電子計算機等の増加幅が縮小したものの、3期連続で増加した。ICT輸出はオミクロン株の感染拡大、世界的な半導体の供給不足はあるものの、6期連続で増加した。背景には、新型コロナ禍で落ち込んだ海外景気の緩やかな回復に加え、5GやIoT等への半導体等電子部品の需要増加とそれに伴う半導体製造装置の底堅い需要がある。ICT輸入も6期連続で増加したが、数量ベースで2期連続のマイナス成長となった。
今期のICT経済の成長率がほぼ横ばいとなった。財生産は7期連続で増加している半導体・フラットパネル製造装置の勢いが緩やかになり、ICTサービスでは受注ソフトウェア業が減少に転じた。加えて、ICT在庫循環図を見るとICT生産の増加幅の縮小を伴いながら、在庫幅が拡大しており、2期連続で在庫積み上がり局面にある点は注意を要する。2022年4-6月期以降の経済の先行きについて、ウクライナ情勢の影響、資源価格高騰や円安進行による物価上昇、加えて中国のゼロコロナ政策の影響による経済活動の低迷により海外経済が従来の想定より減速する見通しである点は懸念事項である。今後のICT経済は先行き不透明感が続くものと想定される。
2022年1-3月期の動向
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比プラス0.2%と6期連続で増加し増加幅は縮小した。前期(10-12月期)に比べて4.7ポイント低下した(図表2)。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比マイナス0.8%と前期に比べて4.0ポイント低下し、減少に転じた(図表3)。
- 通信業は減少幅が縮小したものの、その他の情報処理・提供サービス業は増加幅が縮小し、受注ソフトウェアは減少に転じた。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比プラス3.6%と6期連続で増加し、前期に比べて6.5ポイント低下した(図表4)。
- 半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置の増加幅が縮小し、電子計算機、電子部品は減少幅が拡大した。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比プラス23.1%と大幅に増加した(図表5)。
- 集積回路の増加幅が拡大し、電子デバイス、電池の増加幅は縮小した。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比マイナス6.3%と3期連続で減少した(図表6)。
- スマートフォン等の通信・通話使用料、スマートフォン等の本体価格は減少幅が拡大した。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比プラス1.8%と3期連続で増加した(図表7)。
- 電気計算機等は増加幅が縮小したものの、通信機は減少幅が縮小した。
- 官公需は前年同期比マイナス10.5%と減少に転じた。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比プラス18.4%と6期連続で増加した(図表8)。半導体等電子部品、半導体製造装置は増加幅が縮小したものの、電算機類(含周辺機器)の増加幅は拡大した。数量ベースでは同プラス1.8%と7期連続で増加した。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス16.5%と6期連続で増加した(図表9)。半導体等電子部品は増加幅が縮小したものの、半導体製造装置、通信機は増加に転じた。数量ベースでは同マイナス2.0%と2期連続で減少した。
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【関連サイト】ICT経済分析
「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容
- 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。 - 情報通信の在庫循環分析
情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。
情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。
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