情報通信総合研究所では、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために「ICT関連経済指標」を作成し、四半期ごとに公表しております。「InfoCom ICT経済アップデート」について2022年4-6月期がまとまりましたのでご報告いたします。
【2022年4-6月期のポイント(前年同期比)】
2022年4-6月期のICT経済は前年同期比1.1%増と7四半期連続でプラス成長となり、増加幅はわずかに拡大した(1-3月期:同0.6%増から0.5ポイント改善)。ICTサービスは前年同期比2.0%増と増加に転じたが(1-3月期:同0.3%減から2.3ポイント改善)、ICT財は同1.6%減と減少に転じた(1-3月期:同3.6%増から5.2ポイント悪化)。
今期のICT経済は増加を維持したものの、財生産は減少に転じ、加えて、ICT在庫循環を見ると、在庫が拡大しており、3期連続で在庫積み上がり局面にある点は注意を要する。一方、ICTサービスでは受注ソフトウェアの増加が寄与した。2022年7-9月期以降の経済の先行きについて、米国の金融引き締め等の影響による景気減速、欧州の高インフレやエネルギー不足を背景にした景気後退の可能性、中国のゼロコロナ政策の影響による経済活動の低迷により、海外経済が減速するリスクがある。その場合、国内ICT経済への影響がどの程度になるか、今後のICT経済の先行き不透明感は続くものと想定される。
需要サイドについては、ICT消費は4期連続で減少した。通信・通話使用料の減少が継続した。一方、ICT設備投資(民需)は電子計算機等の増加幅が拡大し、4期連続で増加した。ICT輸出は7期連続で増加した。背景には、新型コロナ禍で落ち込んだ海外景気の緩やかな回復に加え、5GやIoT等への半導体等電子部品の需要増加とそれに伴う半導体製造装置の底堅い需要がある。ただし数量ベースでは2期連続でマイナスとなった。特に、4月は中国向け輸出が新型コロナの感染拡大による経済活動の制限により、前年割れし、全体として弱含んだ。半導体不足等の影響で円安でも輸出が鈍い。ICT輸入も6期連続で増加したが、数量ベースで3期連続のマイナス成長となった。輸出入ともに増加を維持しているが、円安基調である点は考慮し、数量ベースの動きと合わせて判断する必要がある。
【2022年4-6月期の動向】
ICT経済総合
- 国内ICT経済は前年同期比プラス1.1%と7期連続で増加し増加幅は拡大した。前期(1-3月期)に比べて0.5ポイント改善した(図表2)。
ICTサービス
- ICTサービスは前年同期比プラス2.0%と前期に比べて2.3ポイント改善し、増加に転じた(図表3)。
- ゲームソフトは減少に転じたものの、受注ソフトウェアは増加に転じ、ソフトウェアプロダクトの増加幅が拡大した。
ICT財
- ICT財は前年同期比マイナス1.6%と減少に転じ、前期に比べて5.2ポイント悪化した(図表4)。
- 半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置、集積回路は増加幅が縮小し、電子部品は減少幅が拡大した。
ICT在庫
- ICT在庫は前年同期比プラス26.5%と大幅に増加した(図表5)。
- 集積回路の増加幅が拡大した。
ICT消費
- ICT消費は前年同期比マイナス8.1%と4期連続で減少した(図表6)。
- スマートフォン等の通信・通話使用料、スマートフォン等の本体価格は減少幅が縮小したものの、テレビ、パソコンの減少幅が拡大した。
ICT設備投資
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比プラス10.3%と4期連続で増加した(図表7)。
- 電気計算機等は増加幅が拡大したものの、通信機は減少幅が縮小した。
- 官公需は前年同期比プラス3.7%と増加に転じた。
ICT輸出入
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比プラス16.1%と7期連続で増加した(図表8)。半導体等電子部品は増加幅が拡大したものの、通信機は減少に転じた。数量ベースでは同マイナス1.2%と減少に転じた。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス25.8%と7期連続で増加した(図表9)。半導体等電子部品、半導体製造装置は増加幅が拡大したものの、通信機は増加幅が縮小した。数量ベースでは同マイナス4.4%と3期連続で減少した。
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【関連サイト】ICT経済分析
「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容
- 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。 - 情報通信の在庫循環分析
情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。
情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。
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