【2022年10-12月期のポイント(前年同期比)】
2022年10-12月期のICT経済は前年同期比マイナス0.1%と9期ぶりにマイナス成長となった(7-9月期:同2.8%増から2.9ポイント悪化)。ICTサービスは前年同期比1.3%増と3期連続で増加したものの(7-9月期:同2.3%増から1.0ポイント縮小)、ICT財は同マイナス4.6%と減少に転じた(7-9月期:同4.2%増から8.8ポイント悪化)。
今期のICT経済は、財生産は半導体・フラットパネル製造装置等が減少に転じ、ICT在庫の増加幅は縮小している。一方、ICTサービスは、情報サービス業が牽引し、3期連続で増加した。2023年1-3月期以降の経済の先行きについては、世界経済が物価高と金融当局の引き締め政策による各国の国内需要の下振れを背景に緩やかに減速していくことが下押し圧力となる。今後のICT経済の先行き不透明感は続くものと想定される。
需要サイドについては、ICT消費は6期連続で減少した。通信・通話使用料の減少幅は縮小しているものの、パソコン、インターネット接続料は減少に転じた。ICT設備投資(民需)は通信機が増加に転じたものの、電子計算機等は減少に転じ、6期ぶりに減少に転じた。一方、ICT輸出は9期連続で増加した。背景には、5Gや車載、産業用IoT向け半導体等電子部品の需要増を背景にした半導体製造装置の需要の増加が継続している。ICT輸入も9期連続で増加した。ただし、数量ベースでは輸出は3期連続、輸入は5期連続のマイナス成長となった。輸出入ともに金額ベースで増加を維持しているものの、円安基調である点を考慮する必要がある。数量ベースの動きから捉えると、輸出は海外経済の減速を背景に弱めの動きが続くことが予想される。加えて米国の対中輸出規制による半導体サプライチェーンへの影響が国内の半導体製造装置の生産にもたらすマイナスの影響も懸念される。
【2022年10-12月期の動向】
(ICT経済総合)
- 国内ICT経済は前年同期比マイナス0.1%と9期ぶりに減少に転じた。前期(7-9月期)に比べて2.9ポイント悪化した(図表2)。
(ICTサービス)
- ICTサービスは前年同期比プラス1.3%と3期連続で増加した。前期(7-9月期)に比べて1.0ポイント縮小した(図表3)。
- 受注ソフトウェア、ソフトウェアプロダクトの増加幅が拡大したものの、ゲームソフトは減少に転じた。
(ICT財)
- ICT財は前年同期比マイナス4.6%と減少に転じ、前期(7-9月期)に比べて8.8ポイント悪化した(図表4)。
- 電子部品は減少幅がわずかに縮小したものの、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置は減少に転じ、集積回路は減少幅が拡大した。
(ICT在庫)
- ICT在庫は前年同期比プラス12.6%と増加したが、前期(7-9月期)に比べると増加幅が9.5ポイント縮小した(図表5)。
- 電子デバイスは減少に転じ、電池の増加幅が縮小した。
(ICT消費)
- ICT消費は前年同期比マイナス2.6%と6期連続で減少したが、前期(7-9月期)に比べると1.6ポイント改善した(図表6)。
- パソコン、インターネット接続料は減少に転じた。
(ICT設備投資)
- 民需(除く船舶・電力・携帯電話)は前年同期比マイナス0.7%と6期ぶりに減少に転じた。前期(7-9月期)に比べて7.4ポイント悪化した(図表7)。
- 通信機は増加に転じたものの、電子計算機等は減少に転じた。
- 官公需は前年同期比マイナス7.3%と2期連続で減少した。
(ICT輸出入)
- ICT輸出(金額ベース)は前年同期比プラス10.8%と9期連続で増加した(図表8)。半導体等電子部品、半導体製造装置は増加幅が縮小したものの、電算機類(含周辺機器)は増加幅が拡大した。数量ベースでは同マイナス9.9%と3期連続で減少した。
- ICT輸入(金額ベース)は前年同期比プラス22.7%と9期連続で増加した(図表9)。通信機、半導体等電子部品、半導体製造装置は増加幅が縮小した。数量ベースでは同マイナス8.1%と5期連続で減少した。
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「InfoCom ICT経済アップデート」の主な内容
- 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。 - 情報通信の在庫循環分析
情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
※ICT関連経済指標は、九州大学篠﨑彰彦研究室で開発された指標を、情報通信総合研究所で維持・更新し、必要に応じて改善しているものです。
株式会社情報通信総合研究所 ICT経済分析チーム
主席研究員 野口正人
上席主任研究員 手嶋彩子
主任研究員 山本悠介、鷲尾哲
研究員 張怡
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