2015年1月5日掲載 ITトレンド全般 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

年賀挨拶と情報通信

新年、明けましておめでとうございます。年末には各地で大雪となり、ホワイトクリスマスや雪正月のところが多くみられましたが、いかがお過しでしたでしょうか。2015年こそ、再生と飛躍の年でありたいと願っています。今年は昭和60年(1985年)のNTT発足から30年、企業組織にとっても、通信事業としても節目の年にあたります。俗に会社は30年と言われ、原点回帰や生まれ変わりが求められる時節となっています。再生と飛躍を期待しています。


新しい年になりましたので恒例ではありますが、年始の話題として年賀の挨拶にまつわる情報通信サービスを取り上げてみます。正月に行われる年始の挨拶の歴史は古く奈良時代からそうした行事がみられ、今日まで日本社会に根付いた習慣となっています。日本では、もともと季節の節目に先祖を祭り、家内安全と五穀豊穣を神に祈願する祖霊祭の風習があり、正月は神の祭りごととの行事として定着しています。多くの会社で新年に安全祈願のため神社にお参りすることが年中行事なっているのもこうしたことに由来しています。


正月の恒例としては年賀状がありますが、この習慣も古く、江戸時代の武家社会で文書による年始挨拶が一般化したものとされています。明治になっても、1871年の郵便制度発足当初は年賀状は文字どおり書状がほとんどでしたが、1873年に郵便はがきが発行されると年賀はがきが急速に広まっていきました。特に「1月1日」の消印を押してもらうために年賀状が集中するようになって、年賀状の取り扱いではこうした集中問題への対応が常に課題になってきたことは今日まで続いていて興味深いところです。


最近の年賀はがきの発行枚数は、2004年用の44億6千万枚をピークに減少傾向が続いており、昨年の2014年用は34億1千万枚とピーク時から約25%も減っています。その理由は、年賀状を沢山書いてきた中高年の人達が交流関係が狭ったからと数を減らしているほか、10~30代の年令層ではメールで済ますからという回答が多くみられます。私事になりますが、私も最近は枚数が減り、250枚を相変らず手書きの宛名で出しています。年賀状減少の流れは、年賀はがきを最大の収益源とする「日本郵便」にとっては経営上の問題であり、何とか減少の流れを止めようとさまざまな施策が進められていることが知られています。そのポイントはやはりスマホとの連携です。以前から、日本郵便が毎年提供してきた無料サービス「はがきデザインキット」は好評で、数百万ダウンロードを越える人気を集めています。PC版とスマホ版とがあり、毎年バージョンアップされる充実ぶりです。特に「はがきデザインキット2015」ではLINEと連携して、住所が分からなくてもLINEでつながっている友人に年賀はがきを郵送できるサービスが開始されました。


どうするのかというと、送りたい年賀はがきのデザインが完成したら、LINEの友人のトーク画面に受取手続用のURLを送信し、住所などを入力してもらうことで手続き完了となります。あとは日本郵便が年賀はがきをプリントして元旦に配達してくれるというサービスです。見事にオンライン処理のバーチャルとはがき配達のリアルが合体したサービスモデル、ITと通信と郵便とが一体化したサービスとなっていて、LINEというスマホ上のアプリを活かしたサービスとなっていることに注目しています。これも年賀はがきという稼ぎ頭がなくなっていくという日本郵便の危機感が生み出した新しい再生と飛躍の事例と感じています。


ところで、情報通信の世界で年始めの話題というと相変らず「おめでとうコール・メール」の自粛のお願いが続いています。昨年末も12月25日に電気通信事業者協会以下、携帯通信事業各社連名で“大晦日から元日の約1時間は、「おめでとうコール・メール」はなるべくお控えください”との自粛要請を発表しています。大晦日から元日の午前0時前後から30分間はつながりにくくなり、またメールについては約2時間、配信遅延が発生する可能性があるということです。今年の正月が実際どうだったのかその結果は知りませんが、この取り組みは毎年恒例のもので、通信トラフィックをコントロールする通信各社の担当者にとっては、いかに上手に通信規制を短時間にし、配信遅延を防止するのかが技量の見せ所となっています。こうしたことが何年も続けられています。固定電話では、おめでとうコールの集中現象は相当低下していますので実際の通信規制はないようですが、モバイル通信では特定の基地局への集中対策を含めて、毎年何らかの対策がとられています。私は通信事業者である以上、トラフィック集中時にネットワーク機能のシステムダウンを回避し、通信規制を含めてトラフィックを上手に捌くノウハウは何より大切な能力だと思っていますので、トラフィック制御にあたる担当者の努力には頭が下がります。しかし、長い間毎年この現象が続いている割には、対策やこれをビジネス化する方策に新鮮さが欠けている気がしてなりません。本来、通信事業者にとっては通信トラフィックは収益の源泉のはずです。従量制料金であれば収入に直結しますし、定額制料金の場合でも何らかの付加サービスで売上げにつなげる工夫はあるはずです。ところが自粛要請と通信規制だけが継続していることが不満なのです。地震など突発的な災害や事故では発生時期を予見できませんが、正月のおめでとうコール・メールは恒例のものだけに、何らかのサービスとつなげることで集中を分散することができるのではないかと思います。


年賀はがきの集中に悩まされ続けた郵便当局は、年賀はがき発足から26年たった1899年に年賀郵便の特別取扱いを始めています。それは原則現在でも続いていますが、年末の一定時期に指定された郵便局に持ち込めば「1月1日」の消印で元日以降に配達する仕組みとなったことです(その後、はがきの表に“年賀”と表記すれば郵便ポストへの投函も可能となりました。)。このように年賀はがきの取り扱いにおいても、いろいろな工夫をして集中を何とか回避してきたことが分かります。私達の情報通信の世界こそ新しいサービスイノベーションによって、このおめでとうコール・メールを乗り越え、自粛と規制だけでなく新しいサービスとして収益を生み出す努力が必要な時ではないかと思っています。2015年正月に向けて日本郵便が始めたLINEと連携した年賀はがき作成・配達サービスは参考になります。このサービスでは特別に新しい技術や巨大な設備は必要なく、既存のサービスと施設などの有機的な結びつきで若年層の年賀状離れに挑戦しています。LINEという若い人達中心に広がっているSNSを取り込んだところがポイントです。


情報通信の世界でも、毎年正月に現われるトラフィックをサービスに結びつけビジネス化するアイディアが求められています。トラフィックの集中には、何らかのインセンティブをつけて時間を分散するとか、クラウドによって付加価値を高めて蓄積した上で順次分散配信するなど、サービスイノベーションの道はまだまだ多いと思います。モバイルトラフィックの世界ではスマホやタブレットの普及拡大に伴って、今後ますます動画トラフィックが増加していくと予想されます。これが大晦日から正月のおめでとうメールに取り込まれたらと思うと、本当に背筋が寒くなる担当者も数多いことでしょう。でも、これこそビジネスチャンスではないでしょうか。正月の楽しい動画をおめでとうメールとする配信サービス、もちろんトラフィック制御可能な配信方法にインセンティブをつけた取り組みが期待されます。自粛要請・通信規制というこれまでの姿勢を乗り越える柔軟な取り組みこそ、再生と飛躍につながると考えます。

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