2017.9.1 ICT利活用 風見鶏 “オールド”リサーチャーの耳目

NTT東日本硬式野球部の都市対抗野球大会優勝と大宮アルディージャの苦闘-企業とスポーツの関係-

7月25日、NTT東日本は第88回都市対抗野球大会で優勝し、会社あげて盛り上がりました。NTT発足後初めての優勝で電電東京時代の第52回大会以来36年ぶりの優勝でした。日本通運との決勝戦には2万人を超える社員が応援に駆けつけてスタンドをチームカラーのオレンジに染めていたのが印象的でした。応援団コンクールでも最優秀賞に輝くなど、NTTグループ社員の一体感が示された大会でした。本当におめでとうございます。

都市対抗野球における電電チームの歴史を振り返ってみると、1965年第36回大会で電電近畿(大阪市)が優勝したのを皮切りに、1969年第40回大会と1975年第46回大会に電電関東(千葉市)が、1981年第52回大会で電電東京(東京都)と過去4回優勝を遂げています。ところが1985年のNTT発足後は優勝からは足が遠のき、それまで約5年毎に優勝して来た流れが途絶えてしまいました。さらにNTTの再編成に伴い、1999年には東日本地域にあったNTT5チーム(北海道・東北・関東・東京・信越)が統合されてNTT東日本として再スタートしましたが、ベスト4、準優勝までは勝ち進むものの優勝までの道のりは本当に遠いものがありました。それだけに今年の優勝は喜びがひとしおでしょう。1999年にNTT東日本チームが発足した時は「東日本社会人野球のドリームチーム」として話題を集めただけに、この間の選手、監督、関係者の努力と苦労には頭が下がります。飯塚監督は「祝福というより感謝を感じる。----応援団や見に来てくれた人への感謝があり、みんなで勝ち取ったんだという気持ちもあった。」(2017.8.3毎日新聞:社会人野球監督考)と答えて優勝までの努力と苦労を表していました。企業のスポーツチームのあり方を端的に示した言葉です。

ここで企業とスポーツとの関係を考えてみたいと思います。企業が支援するスポーツには社会人(アマチュア)とプロスポーツがありますが、その狙いには次のことがあげられます。

  1. 社員や家族・関係者の一体感を高め、企業組織の帰属意識に貢献する。
  2. 企業イメージや知名度を高め、ブランド向上を図る。
  3. スポーツ選手層の基盤を厚くし、スポーツを通じて社会貢献や地域貢献を果たす。
  4. プロスポーツをビジネスとしてとらえて幅広い事業活動を展開する。

もちろん、これ以外にもあると思いますが、社会人(アマチュア)スポーツではまずは 1.が大切であり、特に野球を始めとするチームスポーツでは試合での対抗意識が強く働くだけに応援団や応援観戦者の存在が欠かせません。また近年、スポーツゲームのTVや各種メディアへの露出が多くなるに従い、スポーツ(選手)のプロ化が進んでいますので、新しい事業分野にスポーツをビジネスとしてとらえる流れも大きくなってきています。そこにはスポーツコンテンツの隆盛(高価額化)とICTとの関連が窺われます。さらにスポーツ先進国に見られるようなスポーツクラブの仕組みが根づいていない日本では、学校スポーツとプロスポーツの間を繋ぐ企業スポーツは選手層、指導者の確保という面では極めて大切な役割を果たしています。この点では重厚長大と揶揄されることが多い従来型の大企業が貢献していて、IT系の新興企業の努力はまだまだといったところです。

NTTグループ関係のプロスポーツにはサッカーの大宮アルディージャがありますが、野球の大活躍とは違って今年は低迷していて苦闘が続いています。8月下旬のJ1リーグ第24節まで18チーム中の16位で、下から三番目でJ2への自動降格枠内に陥ったままなかなか上昇する気配がありません。J1リーグ戦も第34節まで残り10試合中に上位7チームとの対戦が控えているだけに大変苦しい状況となっています。これまで大宮アルディージャは、2005年以降今年まで、2015年にJ2に1回降格しただけでずっとJ1を続けてきましたが、残念ながら2016年の5位を除いて年間成績は12位~16位と決して上位にあるとはいえません。それが今年は16位と再びJ2降格の危機にあります。何とかJ1残留を目指して頑張ってもらいたいと応援しています。
私は先日8月9日(水)に、大宮にあるNACK5スタジアムにFC東京とのゲームを応援観戦に行ってきました。残念ながら試合は1-2で敗けてしまいましたが、久し振りにサーカースタジアムの雰囲気を味わってきました。都市対抗野球の後楽園ドーム球場の応援団とは違うサッカーチームのサポーターの応援に改めて感動しましたし、ピッチと観客席の近いサッカースタジアム独自の音や声などを堪能しました。頑張れ、大宮アルディージャ!

大宮アルディージャ 対 FC東京(NACK5スタジアム)

大宮アルディージャ 対 FC東京(NACK5スタジアム)

プロスポーツとして大宮アルディージャが幅広い事業活動を展開するためにもJ1に留まることが大切です。観客動員数(入場料収入)にしても、各種の広告宣伝収入にしても話題性とメディアへの露出度による影響が大きいし、さらにサッカースクールなどの独自事業も弱体チームでは生徒が集まりにくくなります。事業活動の幅が狭くなってしまいかねません。皆さん、応援しましょう。

最後に、大宮アルディージャのホームであるNACK5スタジアムについて気がついたことを述べてみます。私が観戦した8月9日のゲームの入場者は1万1,115人と発表されていましたが、観客席15,600のNACK5スタジアムでは実際上ほぼ一杯の感じでした。サッカースタジアムとしては少し手狭な印象ですが、他方、スタジアムの特長としてはWi-Fiのアクセスポイントが75ヵ所設置されていて「ARDIJA FREE Wi-Fi」が昨年7月から使えて情報通信サービス面では大変利便性が高いことがあげられます。ARDIJA FREE Wi-Fiの接続環境も極めて良好です。NTTグループの事業活動の成果が現れていました。スタジアム独自のコンテンツも大宮アルディージャ公式サイトや試合映像配信などが可能なほか、マルチアングルビューや「Kirari For Mobile」(立体視聴体験)などが今後予定されています。

スタジアム観客席上

スタジアム観客席上をWi-FIアクセスポイントが囲んでいる

こうしたICT設備がスタジアム観戦・応援の楽しみを倍加し入場者を増やすことを期待するとともに、スポーツコンテンツの新しい活用方法を生み出して新たな価値創造に繋がるビジネスチャンスがあると感じます。NACK5スタジアムでのさまざまな知見が他スタジアムや他スポーツにも広がっていくことが楽しみです。プロスポーツがICTにとって新しいビジネスモデルになると考えています。

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