2018年10月24日掲載 ITトレンド全般 ICR研究員の眼

キャリアショップの待ち時間から業界構造を見てみると



携帯電話ショップ、いわゆるキャリアショップの手続き時間の削減策などを検討する有識者会議が、今週10月22日に総務省で立ち上がりました(名称は「消費者保護ルールの検証に関するWG」)。※1

また、ドコモがドコモショップの事前予約制を全国に広げる、という報道もありました。なぜ顧客が長い待ち時間を覚悟してでも来店するのかといえば、ひとつには対面での手続きが必要なケースが多いことがあるでしょうし、また対面での顧客サービスへのニーズもあるということでしょう。 

「端末販売店」というより「サービス窓口」

総務省「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第2回(2018年10月18日開催)の中で、委員の方より通信事業者に対して『端末を必ずセットにして、一体となって提供される現状に「通信事業者なのか、端末販売事業者なのか」と疑問を呈した』という指摘があったそうです。※2

この点について、キャリアショップが事前予約制に向かう動きから考えると、「端末の販売店」というより「通信サービスの窓口」という方がより適切ではないか、という気がします。

消費者がキャリアショップに求める「安心感」

キャリアショップで待ち時間が長くなる原因は、来客1名当りの対応時間の長さです。この時間は、スマートフォンの普及とともに長くなってきました。背景には「オプションサービスの多様化」と「店頭での徹底的な説明の義務付け」があります。店頭での説明義務が強化されたのは、申込み後の消費者トラブルがなかなか減らないためなのですが、結果的には、消費者のための施策のおかげで長く待たされる、ショップにとっては顧客の回転率も悪くなる、という「だれ得?」な状況に陥っています。

一方で、こうした店舗窓口には緊急対応ニーズもあります。病院の待合室が混雑しているのと同じです。端末の故障、破損など突発的なトラブルが起きたときに機敏に対応してもらえること、相談窓口があることは、消費者の「安心感」につながります。

MVNOには高いハードル

国内でMVNOの契約数が伸び悩んでいると言われます。要因は様々あるのでしょうが、キャリアショップの側面から考えてみると、大手MNOからMVNOに乗り換えない一因がこの安心感にある、という仮説が立てられます。総務省は近年、MVNOの成長を支援し通信事業者間の競争を活性化させる姿勢で市場へアプローチしていますが、一方で自社店舗の設置は規模の小さいMVNOにとって負担が大きいのが実態です。

ICTリテラシーとキャリアショップへの依存度

こうした負担はMVNOに限らず、実は大手MNOにとっても軽くはありません。キャリアショップを支える原資は、契約者が毎月支払う通信料金ですが、ショップに安心感を求める契約者もいれば、何も求めない契約者もいるはずです。ICTリテラシーの高い契約者ほどキャリアショップにあまり多くを求めない、ということかもしれません。またMNO各社はオンラインストアを運営していますが、多くの顧客がオンラインストアを使うようになったとしたら、キャリアショップの位置づけは変容するのかもしれません。

このように、キャリアショップでの待ち時間から、通信業界の様々な事情を垣間見ることができるのです。

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